研究経過
ホメオログ発現比の変化を検出するためのツールHOBITを開発(清水班)
November 19, 2025 10:07 AM
Category:論文発表
main:清水班
農研機構農業情報研究センターの孫 建強 主任研究員、株式会社ヒューマノーム研究所の瀬々 潤 代表取締役社長、横浜市立大学木原生物学研究所の清水 健太郎 客員教授(チューリッヒ大学 進化生物・環境学研究所長・教授兼任)の研究グループは、ホメオログ発現比の変化を検出する新しい検定手法「HOBIT(HOmeolog Bias Identification Test)」を開発しました。 異質倍数体では、異なる祖先種に由来するサブゲノム間に遺伝子の重複(ホメオログ)が存在します。これらのホメオログは、環境の変化に応じて発現比を調整することで、環境への適応力(環境頑健性)を高めていると考えられています。しかし、こうしたホメオログ発現比の変化を検出できる既存手法の適用範囲が限られており、例えば2014年に公開された HomeoRoq は主に異質四倍体を対象としていました。今回開発した HOBIT は、サブゲノム構成に制約されず、異質三倍体やパンコムギのような異質六倍体にも適用可能でき、より広範な種での解析を可能にします。また、検出精度も向上しています。本研究では、パンコムギに適用し、生殖成長段階で発現比を変化させたホメオログを明らかにしました。 HOBIT の開発により、異質倍数体系植物がどのように環境に適応しているのか、その分子メカニズムの解明が一層進むことが期待されます。 本研究成果は、2025年10月25日付で学術誌『New Phytologist』に掲載されました。

<論文情報>タイトル:A likelihood ratio test for detecting shifts in homeolog expression ratios in allopolyploids著者:Jianqiang Sun*, Jun Sese, Kentaro K. Shimizu掲載雑誌:New PhytologistDOI:10.1111/nph.70648