研究経過
イネの開花を操る遺伝子の"遠隔操作スイッチ"を発見――ゲノム編集技術で28 kb離れた制御領域を特定――(井澤班)
August 19, 2025 11:11 AM
Category:論文発表
main:井澤班
当領域代表・東京大学大学院農学生命科学研究科の井澤毅教授らの研究グループは、農研機構の小郷裕子博士らとの共同研究により、イネの開花時期を制御する重要な遺伝子Ghd7(注1)の転写に必要となる「遠隔操作スイッチ」のDNA領域(シス制御領域;注2)を特定しました。これは、遺伝子本体から約28 kb(キロベース)も離れた位置にある、わずか228塩基対の領域です。
本研究では、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術(注3)を用いて、Ghd7の上流の65 kbにわたる広いDNA領域をスキャンするように欠失させ、どの部分がGhd7の働きを制御しているかを調べました。その結果、この228塩基対の領域が朝の光に反応してGhd7のスイッチを入れ、イネの開花を遅らせる働きを持つことが明らかになりました。
今回の発見は、植物の遺伝子発現が遠く離れた領域によってコントロールされることを遺伝学的に証明した、世界的にも稀有な成果です。この仕組みを応用して、イネの開花期のより精密な調整が可能になることが期待されるほか、植物の光応答の仕組みをより詳細に解明する手掛かりになると予想されます。
図1:本研究で作出した上流欠失系統とその開花期の変化
◆詳細はこちらをご覧ください>東京大学のHPへ
<論文情報>
雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
題 名:A 65-kb Deletion Survey Identifies a Distal Cis-Regulatory Region for Red-Light Induction of Ghd7, a Key Rice Floral Repressor
著者名:Yuko Ogo, Takumi Kawauchi, Manaki Mimura, Ken Naito, Hironori Itoh, and Takeshi Izawa* (*Corresponding author)
DOI:10.1073/pnas.2423119122