東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業)

平成28年度 活動ブログ

平成28年度 活動ブログ養成講座の活動を記録しています

2017.04.23

海外研修に参加して学んだこと

 栃木県立栃木高等学校1年の新井駿斗です。
 海外研修に選抜していただき、今でも感謝の気持ちで一杯です。
 長いと思っていた10日はあっという間で、とても内容の濃い10日間でした。
 海外研修の体験および感じた内容を率直にまとめました。

 

 現地到着初日、顔合わせの後、ホストファミリーにショッピングモールを案内してもらいました。そこではアメリカの日常の買い出しの様子を見ることが出来ました。最近は日本にも大型のショッピングモールが出店しています。日本に出店している店、また日本から出店している店も多く、ショッピングモールについては、日本とアメリカが似通ってきているように感じました。

 

 滞在二日目、Bourns Inc.を見学しました。本社はリバーサイドにあり、電子部品を製造しています。日本法人が埼玉県富士見市にもあることを知りました。普段使用している電気製品にもこの会社の部品が使われていることに驚きました。日本人向けに説明してもらえず(かなり早口の英語)、また知らない単語が連続で使われました。私だけでなくほとんどの参加者は理解できなかったと思います。

 

 その後UCR(カリフォルニア大学リバーサイド校)に行きました。日本の大学と比較し、生徒数に対して広大な敷地です。自動車の研究室では、巨大な溶接機やドリルから、ペンチ、ナットなど大きな設備から小さな部品まで揃っていました。やはり印象に残ったのはその敷地の規模です。さすがアメリカだと実感しました。
 帰宅後は、ホストファザーと一緒に自転車で周辺を散策しました。オレンジ畑や公園、自然保護区、それに丘陵など日本では見られないような独特な風景を楽しむことが出来ました。夕食時にはふりかけの話題になりました。ホストファミリーは皆、玄米茶の茶葉をふりかけだと思っていたそうです。日本茶の入れ方を簡単に説明し、実際に飲んでもらいました。苦みのあるお茶でしたが、美味しいと飲んでいたことに驚きました。

 

 滞在三日目、アクティビティとしてグループで街の中心地の散策をしました。グループ構成はSTEM生と卵とメンターでした。イラストや写真から場所を推測して写真を撮るというもので、料理専門学校、ハラダハウス、ホワイトパーク、市役所、レモンストリート、博物館、美術館、そして有名なホテルを見学しました。古い建物や歴史あるホテルが残されて、とても美しい街並みでした。ハラダハウスでは戦前にアメリカに移住した日本人の原田さん一家についての説明を聞きました。日本人だからというだけの理由でアメリカ人に敵だと思われていたのにもかかわらず、アメリカのために尽くす日本人の姿に共感と感動を覚えました。その後、同じグループでデザインチャレンジを行いました。この活動はリバーサイドと仙台を表すオブジェの製作です。STEMの生徒は鯉のぼりや折り鶴を知っていました。他のグループでは漢字を用いたり、箸を飾ったりしていました。日本文化が浸透していることに驚きました。

 

 滞在四日目、STEMワークスでは、書道を担当しました。高校生に加えて中学生も参加していました。中学生には英語の説明がうまく伝わらずかなり苦労しました。高校生は予め希望したところでの授業だったそうで、予備知識もあり理解度が高かったと思います。書道の説明を通じて、日本文化が浸透していることに感動しました。
 地学研修では、RSA高校生による生物観察とUCR生による地球の歴史の話がありました。生物観察では見たこともないトカゲや植物、日本では鑑賞用でしか見たことのないサボテンなどステップ気候ならではの動植物が自然に生息している様子を見ることができました。地球の歴史の話では、歩く道のりを地球の誕生から現在までの時間に例えて説明してくれました。説明は聞いたことのない英単語ばかりでなかなか聞き取ることができませんでした。しかし、説明のまとめの段階で詳しい説明があり、繰り返し使われた単語から大まかな意味を理解することが出来ました。
 この日は、ホストファミリーがロサンゼルス近郊の日本食レストランに連れて行ってくれました。寿司には日本米が使われていて、醤油はキッコーマンのものでした。食材は異なるものの調味料が同じせいか味は日本と同じでした。

 

 滞在五日目、シニアレセプションでは、4本指ゲームを行いました。日常5本指で行っている動作を4本指でやってみるというチャレンジです。糸で輪を作る、名前を書く、ペットボトルのキャップを開ける、靴を脱いで履く、上着を脱いで着るなどの時間を4本指と5本指の両方で計りました。当然ですが、5本指の方が、すべて早いという結果になりました。もともと生物は5本より多く指を持つものがいたそうですが、生物の環境への適合による進化の過程で5本指だけがはっきりと残ったそうです。ヒレをもつ動物は骨格で見ると指が5本の種が多く、4本や3本に見える動物も退化した指を合わせるとほとんどの種が5本指になるそうです。人間の先祖は、木登りをしていたわけで当然、握りやすくするために指の数は3本や4本よりも5本のほうが良いはずです。

 

 滞在六日目、二度目のUCRでは、重点コースの発表、半導体の研究の説明と見学、それにサイエンス教室を行いました。半導体の研究では、二硫化モリブデンという耐熱、耐荷重性に優れ、非常に薄い膜を持った材料について学びました。固形潤滑剤としてすでに製造業では使われていて、資源が豊富にあるため将来的に注目されている物質です。研究室見学では、シリコンの表面を加工して性質を調べる研究室や、危険な光を出さないようにオレンジ色のガラスで覆われた研究室、大きな電子顕微鏡のある研究室を見ました。オレンジ色のガラスがある実験室の中には入れませんでしたが、入り口には白衣があり、ポンプのある機械が見えました。日本でも同様の研究室はあるかもしれませんが、ドアを1つ通り越しただけで違う学部の研究室があることに驚きました。

 

 生物学では、いわゆるゴキブリやダンゴムシに似た虫、そしてたくさんの蛾を触りました。日本ではなかなか見られないものも多く、一生に一度しか触れないと思い、先入観を全て消し去り、触りました。タランチュラはテレビでしか見たことがありませんでした。本物を見たのはこれが初めてです。タランチュラはオオツチグモ科に属し、鳥の巣を襲うほど凶暴だそうです。世界最大のクモであるタランチュラは映画のシーンで演出されるほどの毒はないそうで、人を毒で殺す事例も少ないそうです。実際に見たタランチュラはほとんど動くことなく死んでしまっているようでした。
 実験教室では、マイクロピペットを用いて希釈をしました。マイクロピペットは高校の生物の時間に使ったことがありましたが、水だけでしか扱ったことがなく、詳しい希釈の仕方や、チップの付け方はわかりませんでした。マイクロピペット自体の使い方は英語でなんとなく理解できましたが、英語での希釈の説明はほとんど分からず同じ班の方に聞きながら進めました。

 

 滞在最終日、カリフォルニア宇宙博物館では、実物のエンデバーをはじめとするスペースシャトルの見学や、植物や動物の展示、小規模な水族園、そしてシアターを見ることが出来ました。エンデバーの展示室の壁にスペースシャトルの歴史が書かれていました。年表中には二つだけ色の異なったところがありました。それは、チャレンジャー号とコロンビア号の事故です。これらの事故は、ともに機体の不備で起こりました。英語だけの説明では理解が不十分だったので、ホームステイ先の家に戻ってから詳しく調べました。スペースシャトル計画は135回中133回成功しています。これだけ成功しているとはいえ、2回の失敗は大きな犠牲であり、事故後は長い計画中止期間がありました。しかし、これらの失敗は、事故後二度と同じ過ちを起こさないように、多くの再設計があったそうです。事故は起こさないようにすることが第一ですが、事故が起きて初めて気づくことがあるのだと改めて実感しました。

 

 グリフィス天文台では、班別自由行動でした。計画を立てていなかったので、館内をできる限り回りました。月の石の展示やフーコーの振り子のモデル、ガリレオの肖像画が印象的でした。なかでも惑星のコーナーには自分の体重をその惑星に置き換えて計測したり、地形を3Dで見たりと、想像を超える規模の天体ですが、そのスケール感を感じ取ることが出来ました。

 

 海外研修に参加が決定したときは思わず『僕が』と思いました。おそらく科学者の卵の同じ参加者のほとんどの人と話したことがなく、目立たず、会話が積極的でなく、大勢の前で質問をしたことがありませんでした。それに英語は苦手で英語サロンでの留学生のメッセージは「もっと積極的に」としか書かれたことがなく、TOEIC、TOEIC Bridgeでは点数は全体の平均を下回っていました。しかし、これほど英語ができない僕でも海外研修に選抜され参加することが出来ました。

 

 これは科学者の卵に参加すれば、努力次第で誰にでも海外研修に選抜されるチャンスがあることを意味すると思います。海外研修が終わった後『この海外研修で成長したことは何ですか』と聞かれたとき、僕は、「状況把握力が向上した」、「英語を聞き取る能力が向上した」と答えました。しかし、4週間ほどたった今思い返せば、この二つの能力が向上するのは意識的なものではなく、無意識的なものであって、言い換えれば必然的なものです。本当に向上したと言えることは、「考えたことを言葉にする力」、「それと相手に伝える力」、この二つです。

 

 考えても言葉にできなかった英語サロンでは、あらかじめ準備したことしか話せず、「なぜこう考えたの」と聞かれても、「英語では説明できません」と言うことが多く、元の考えを英語に言い換えることができませんでした。完全に相手側の理解力に頼っていたのです。現地のアメリカでは当然日本語が全く分からない人がいるなかで、自分が頭の中で考えていることを英語に直すと同時に話す能力を鍛えられると思います。

 

 会話の中で伝わりやすくするには、中学校で習った文法や単語でも、組み合わせたり、何回にも分けて話したりするとよいことを実感しました。しかし、区切りすぎると、相手と同時にしゃべったり、「もう一回話してください」と言われたり、とうまくいかないこともありました。話者の話が多少分からないとき、単に「分かりません」と言うよりも、「こういう理由で分かりません」と言った方が、会話がスムーズに進みました。いろんな表現方法を試して時に成功したり、時に失敗したりしたことで沢山のことを学ぶことが出来ました。

 

 ほとんどの挑戦は、最初に失敗します。しかも、時にその失敗は恥ずかしいと思うかもしれません。ですが、その失敗が成功につながった時、その失敗は無駄ではなくなるのです。これから、数々の挑戦をし、失敗すると思います。しかし、その失敗はいつか成功につながるかもしれません。その成功につながる可能性を信じて進むこと、つまり失敗を恐れないことが必要です。このことは海外研修に参加するまで私が今まで分かっていても実践することのなかったことです。

 

 海外研修では、一人では訪れることが出来ないところや科学者の卵らしい話し合いがあり、貴重な体験となりました。ホームステイということもあってアメリカの日常生活や地域の情報を聞くことができとても面白かったです。科学者の卵でこのようなかけがえのない海外研修を催してくださり、選抜していただきありがとうございました。

 

 同じ卵のメンバー、先生方、メンターの方々、RSA高校の生徒、ホームステイを受け入れてくださったホストファミリー、現地ガイドの方々、そして運転手の方々、沢山の方々と楽しく接することができ、良かったです。いつか、海外研修でともに学んだ方々と、またともに学び、楽しく笑いあえることを楽しみにしています。この海外研修を糧に、これからも科学者になれるように日々精進して参ります。

投稿者:栃木県立栃木高等学校

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