東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

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平成30年度 活動ブログ

平成30年度 活動ブログ養成講座の活動を記録しています

2018.08.04

卵な私の成長簿 その2 前篇 ―人間と機械、時々責任―

 福島県立福島高等学校第2学年、安斎公記(あんざい・まさき)です。季節は夏真っ盛り、暑い日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 さて、一昨日(2018/08/02)、第2回「探求型『科学者の卵養成講座』」として、日本学術会議第三部、日本学術会議東北地区会議、そして東北大学が主催したシンポジウム「AIとIoTが拓く未来の暮らし―情報化社会の光と影」を聴講させて頂きました。この記事では、僭越ながら私の視点から、今回のシンポジウムについて報告させて頂きます。(最先端を行く方々のお話はそれぞれの講義や討論は大変内容が濃く、私の拙い文章では冗長になり、読みづらく、更新もかなり遅くなってしまうため、今回は前後篇構成とさせて頂きます。)

1.主催者挨拶

 講演に先立って、日本学術会議第三部部長の大野英男東北大学総長、東北地区会議代表幹事の厨川常元東北大学大学院医工学研究科科長からご挨拶を頂きました。

 すべての技術には光と影、利点と欠点があり、その両面を見て、現代の科学技術が何をすべきか考えねばならない、という旨のお言葉を頂き、シンポジウムは幕を開けました。

2.講演①「深層機械学習とその意味するもの」(Preferred Networks社PFNフェロー 丸山 宏 先生)

 普段何となく「AI」「IoT」と耳にしていて、AIやIoTについて考えるとはいっても、それに対して私が持っていたイメージを言葉にすると、「人の仕事を奪う」「将来人知を越えて人間を破滅させる」「人工知能」くらいで、はっきりと、正しい情報を持っているとはいえない状況でした。「人工知能」に至ってはただのAI(artificial intelligence)の和訳です。本講義はまずそのようなAIとはどのようなものなのかを説明するところから始まりました。

 研究者の方々は、知性を模倣し、知性の理解を目指すものを「AI」と呼ぶそうです。例えば1956年から1974年にかけて起こった第1次人工知能ブームでは記号処理や自然言語、1980年から1987年にかけて起こった第2次人工知能ブームではオブジェクト指向のように、成熟した今となっては当たり前の技術になっているものであっても、当時は「AI」と言われていたのです。2008年から始まり現在もなお続く第3次人工知能ブームで取り扱われている機械学習工学も、今でこそ「AI」と言われていますが、そのうち成熟して当たり前の技術となれば「AI」とは呼ばれなくなるのです。

 しかし、メーカーは自らの商品価値を訴求するための箔付けとして「AI」を使い、一般人は擬人的な機械を想像してしまい、マスコミは人間にとって脅威になる「怖い」印象を煽ります。先生は、栄藤稔氏が特に後半二つを「ポエムなAI」と称していたことを引用し、これらはSFの中での話題なので現実の技術とは分ける必要があると仰っていました。私の持っていたイメージはほとんどが「ポエムなAI」であったこともあり、いかに表面的な情報で判断してしまっていたのかが伺えます。

 AIについての正しい理解をした上で、深層機械学習(ディープラーニング)についての話へと移ります。これまでの技術は、人の先験的知識に基づいたモデルがあり、アルゴリズムが構成可能であることが必須だったのですが、深層機械学習であれば、人手で正解を学習させる人手による正解アノテーションにより、モデルがなくとも学習したことを統計して処理することで答えを導き出すことができるのです。

 しかし、そのような思考的機能を持つ深層機械学習には、本質的な限界があります。これまでのデータを基にしているため新たなひらめきは不可能であること、そして確率的に答えを出すという特性上その答えは必ずしも100%信頼できるものではないことです。

 そこで、先生は考えるべきこととして「安全か」「説明可能か」「統御可能か」「最適か」を示し、「我々の欲しいものを分かっている振りはやめるべきだ」と提言しました。深層機械学習は決して説明や統御が不可能なわけではなく、そこにある「複雑さ」の低減が大きな破壊を作る、と仰いました。複雑さを低減すれば、目的(受けた指令)の達成のためには例え殺人だろうと犯してしまうような、人間にとって脅威である、「怖い」存在となりかねないのです。

 自己紹介欄の「苦手なこと」欄に「複雑な思考」と書いてしまうくらい、複雑さをなるべく回避したいと考えていた私ですが、確かに、一見優雅で魅力的に思える単純な思考も、一歩間違えれば短絡的、破壊的な思考そして言動に繋がりかねないな、と思い直しました。あらゆるパターンを考えて、それぞれに適した方法を吟味して対処しなければならないことは、人間の処理能力においても機械学習の機能においても同じことなのだなと感じました。

 先生は講演の最後に、統計的機械学習を理解したうえで、そのインパクトを考えることが大事だと仰いました。上の文の私のように理解せずにその効果を決めつけてしまうのは、統計的機械学習、AIやIoTについての認識の差、先入観に基づく誤解を生みだしかねません。今や様々な媒体が思い思いに喧伝する「AI」ですが、その各々が示している「AI」が何を指しているのかを、単に「AI」という言葉の響きだけで判断せず、自らで理解しようとする必要があり、それが我々の責任だと感じました。

3.講演②「AIから量子コンピュータまで 先進技術による社会の変革」(日本アイ・ビー・エム株式会社執行役員最高技術責任者 久世 和資 先生)

 世界の情報技術開発を牽引する企業の一つ、IBM社。本講義ではそのIBM社の日本法人、日本アイ・ビー・エム株式会社の執行役員最高技術責任者である久世先生にも講師として来て頂きました。

 人類の持つデータは年々増加している。2020年にはデータの量が44ZB(「ゼタバイト」と読む。「Z」は1021=1000000000000000000000、十垓を表す。)になっている。

 初めて聞く接頭辞とともに提示された人類の将来像に、私は衝撃を受けました。しかし、驚くべきなのはその破格の量だけではありませんでした。44ZBのデータのうち、多くを自然言語のような非構造化データが占めているのです。そして、それらを処理し、活用するのが、コグニティブ・システム(学習するシステム)です。先生は、第一次人工知能ブームの代表として集計機を、第二次人工知能ブームの代表としてプログラムを挙げ、第三次人工知能ブームの代表としてこのコグニティブ・システムを挙げました。集計機やプログラム同様、時代を作る重要な役割を担う存在です。

 先述のようにAIやIoTについては知識に乏しい私ですが、以前学校でビッグデータについて学んだ際、IBM社製のAI「IBM Watson」(以下「『ワトソン』」)がアメリカで50年以上の歴史を誇るクイズ番組「ジョパディ!」で74連勝の記録保持者、3億円もの賞金獲得者を相手に優勝した、ということを知り、驚嘆したことを思い出しました。将棋や囲碁、チェスなどルールの決まった対戦、対局のなかで時の王者を下したAIの話は一般のニュースでも耳にしていました(先生も「ルールが定められるとAIの勝ちは自明なところがある」と仰っていました。)が、同じ問題が出題されない、予備知識と迅速につながる思考回路を必要とするクイズ番組(しかも早押し形式)で、屈指の実力者を相手に勝ち上がる機械の姿は、そう簡単に受け入れられるものではありませんでしたが、それこそが今の情報科学の現実であることは、紛れもなく事実でした。

 今回はその裏側についてもお話を頂きました。私自身、興味を持っている内容でした。「ワトソン」は問題文を解析し、候補を計算、百科事典から歌詞まであらゆる事柄を網羅しているデータから根拠を探します。学習データからスコアリングし、解答を決定するのです。解答時に不利にならぬよう、決定後は音声を合成し、アクチュエータから空気を送り早押しボタンを押すそうです。

 さらに驚くべきは、ここまでの技術であってもまだテスト段階であるということです。今の「ワトソン」は非構造化データも扱い、企業で利用されています。例えば東京大学医学部附属病院では、「ワトソン」がDNAや論文、過去の治療例のデータから、患者の病気を判定、治療法の変更を提案し、採用したところ患者の命が救われた、という実績があり、他にも創薬支援、石油採掘現場、サイバーセキュリティ、ワイナリー、中国の大気汚染抑制、映画予告編制作など、多様な現場で、人間には処理しきれない膨大なデータに基づいた提案をしているそうです。

 IBM社では、AIを"artificial intelligence"(人工知能)ではなく、"augmented intelligence"(拡張知能)として捉え、「人間を超えるもの」「人間の仕事を奪うもの」ではなく、「人間の補助的な役割をするもの」と位置づけており、いかに人の役に立つかどうかを重要視しているそうです。私がAIに対して抱いていたイメージは、少なくとも最先端を行くIBM社では全く違うものであることがわかりました。(まさか「人工知能」さえも違うとは...。)

 だからこそ「決定権は人間にある」という認識を持って、例え根拠がAIの提案したものであったとしても判断に責任を持たなければならないな、と感じます。

 IBM社では、量子コンピュータなるものも開発しているそうで、ス―パーコンピュータでテニスコート1面分かかる容量を、量子コンピュータなら量子ビットを1つ増やすだけで良いという、かなりの革新になります。しかし先生が話したとおり、技術があるか否かではなく、どう使うかが重要なのだなと感じました。

 単に営利や知的好奇心を満たすといった自己満足的な開発ではなく、以下に人類に貢献できるかを考え続ける姿勢は、科学者を志す身として学ばなければならないなと思いました。

 明日(2018/08/05)は第3回「科学者の卵」が実施され、同じ東北大学内で開催されていた日英サイエンスワークショップの発表会を聴講させて頂く予定です。また、明後日から3日間(2018/08/06-08)は別の予定が入っているため、後篇の更新がかなり遅くなってしまいます。申し訳ありません。気長にお待ち頂けたら幸甚に存じます。

 それでは、後篇でお会いしましょう!

安斎 公記 

投稿者:福島県立福島高等学校

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