東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【出前講義】栃木県立宇都宮女子高等学校・SSH特別講義「大学教授からの進路選択アドバイス」(10/14)

2016年10月15日 (土)

 ようやく秋らしい天気が続くようになり、湿度も低く、それなりの天候で。朝の気温が下がってきた分だけ、農作物の生長には、ちょっとですが、食味という点では、うまみ成分が増えるのでは。。。ふと、そんなことを。そんな週末の金曜日。先週末は、宮城県総合教育センターで実験助手をされている先生方への講義。今週末は、9年連続となる「栃木県立宇都宮女子高等学校」への出前講義。

20161015164511-407c37adcccd1b08176b2cee18b0d2e4ca7686f1.JPG 最初に伺っていた頃は、アブラナ科作物の自家不和合性というサイエンスの話。いつの頃からか、それに、キャリア教育を加えて。ちょうど、先月の母校である愛媛県立今治西高等学校での講義パターン。少し慌ただしくて、いつもバランスに困るわけですが。また、数年前から、保護者の方も参加というパターン。石川県立金沢泉丘高等学校でも同じような企画だったような。。。いずれ、バランスが難しくて、前半しゃべりすぎると、後半のキャリア教育が駆け足で。。。今回も時間配分は失敗でした。。。ただ、9年前に来たときには、女子校と言うことで、ずいぶん緊張して話をしていましたが、数をこなすことで、そんなこともなくなり。。。気になるのは、先生方、保護者の方がいる前で、こんな話をしてよいのか、。。これは、いつも気になる点ですが。。。

20161015183958-19064dad1786fbb79d386588bd20f4be5eaeaedf.JPG 前半のサイエンスの話。渡辺が研究対象としているのは「花」。普段食べている野菜、果物の花の写真と名前。意外と、よく知っていたなという感じ。クダモノトケイソウというのが、パッションフルーツという連関まではいかなかったですが、トケイソウというものに目が行っていることは、大事なことで。ただ、一方で、ウリ科のキュウリ、メロンなどの雄花を見て、こたえてくれた方がいて。しばらく、別の花の答えをしてくれていたのに、また、違う生徒さんが「キュウリ」だったか、そんなウリ科の名前を。。。さっき、こたえてくれたのを聞いてない。。。これは、さすがによくないと。。。五感という感性があり、人の話をきちんと聞いていること。大事なわけで。注意力は、生きていくため、観察力という点でも大事なことになるわけです。しっかりしましょう。あと、こうした答えをしてくれた方に渡辺の論文の別刷をプレゼント。2部ほど、2年前のNatureに掲載された別刷りを用意。それ以外の論文の別刷も、もちろん。Natureの別刷は2部しかないと言うことを最初に説明したにもかかわらず、3人目の方が、なぜないのかというコメント。これも少し頂けないなと。。。これも注意力ですね。それから、別の生徒さん。10種類近い別刷を用意しましたが、その中から、どれを選ぶのか、5min以上かけている方が。。。考えているのかと思ったら、最後は「どれにしようかな、神様の。。。。」というような乱数のような形で。。。。これは、これまでの出前講義でも初めての体験。びっくりの◎△乗。注意力という感性と同じように、決断力も大事なのではないかと。

20161015184056-ca14982b242dd85d7cb9f939a91a8c5b2b86e687.JPG それから、花のもう1つの問題。ヒマワリの上のハチ。どこから来てどこへ行くか。。。本来は、種の障壁を説明するためなのですが、ヒマワリと同じ季節に咲く花に対する注意力。ヒマワリの上から、チューリップの上にという回答が。。。おかしいと気がつかない方が。。。ちょっとまずいですね。注意力、観察力という点で。もちろん、物理学理論を用いて、時空を越えることができるのであれば。。。渡辺が子供時代にわくわくしてみていた「宇宙戦艦ヤマト」のように。。。そうはいかないわけです。ここまででずいぶん時間を消費して、自家不和合性、受精の仕掛けであったり、ダーウィンがなぜ、植物の自殖、他殖に興味を持ったのかなど、このあたりから駆け足でしたが、いずれ、植物もいろいろなことに注意を払って、考えていることは理解してもらえたのでは。。。

20161015184128-266491b9f392d3e5bd9245ac4909179da9c1a819.JPG キャリア教育の最初の問題は、どれくらいの加減でやるか、先日のノーベル生理学・医学賞の大隅先生ではないですが。これが結構、難しい問題だったような。やる、やらないと言うことではなくて、その時の状況に合わせて、バランスをとって、「いい・加減」を読み取って、行動する。大事なことで、もちろん、失敗もあるかも知れないですが、失敗をして、覚えることもたくさんあるわけです。そんな失敗という貴重な経験を、子供時代にできるかによって、大人になってからの伸びが違うと。今からでも遅くないので。しっかりチャレンジして下さい。あと、高校時代に学んでほしいのは、数学で自分で考える力を養成すること。答えを覚えても、役に立たないですから。また、文章を書く力。日本語で。英語も大事かも知れないですが、AIの発達で、自動翻訳も近いうちに。そうなると、母国語でどれだけ考えるかが勝負。そのためにも、SSHで文章力を養成して下さい。それから、高校から大学への進学での障壁となるのが、センター試験の結果。志望校に行ける方もそうでない方も。そんな時、くじけず、いけるところでがんばる。渡辺もそうでした。そんな時、支えてくれる方を探しておいてほしいと。それを言うのを失念していたのですが。

20161015184208-bc9cdfbc94db4e2dffdf3a9d0d77e737ea70b506.JPG それから、これはという師匠を見つけてほしいと。志望校に行けなくても、そんな師匠は見つかるものです。渡辺もそうですから。また、どうせやるなら、世界トップクラスを目指すこと。人生で。大学が目的ではなく、その先を見すえてほしいと。そのためにも、講義の最後に話をした「組織論」。夢・野望を抱き、努力をして、失敗にへこたれないで、がんばってほしいと。質問では「夢」をどうやったら、持つことができるのか。。。。最近、こうしたことが多いです。世の中が、不景気だからなのか。。難しく考えすぎで、こんなことが好きと言うことから考え始めたら、どうでしょうかと。渡辺の子供頃の夢というか、かっこいいと思ったのは、マジンガーZなどのアニメ。その科学力のすごさ。また、今の遺伝学をやろうとしたのも、テレビの影響。そんなところもきっかけはたくさんあるわけですから。そのためにも、座右の銘で話をした「明日のために今日の屈辱に耐えるんだ」という、宇宙戦艦ヤマト・初代艦長・沖田十三の言葉。それから現在からこれからへと言うことで「環境は人を創り、人は環境を創る」という、理化学研究所所長・原子物理学者・仁科芳雄博士のことを話したと思います。ポテンシャルはあるわけです、最後まで、あきらめず、やってみることではないでしょうか。最後はいつものように、世界に向かって情報発信。

20161015164424-b9b265726c8d824664505642c34634dc8c81fb14.JPG 講義が始まる前の少しの時間、萩原校長先生と昨今の教育問題などについて、議論をできたのは、大変貴重でした。高校側、大学側のいずれから見ても、同様の問題意識を再認識でき、では、それを解決するには、どうすればよいのか。もちろん、難しい問題ですが。さらには、講義が終わったあと、担当の吉永先生、1年学年主任の近澤先生とも、講義の内容を踏まえて、近年の高校生の特性というか、そんなことも伺え、この後、そうした波が大学にも来るのだろうと。参考になりました。ありがとうございました。最後になりますが、萩原校長先生、SSH担当の吉永先生、1年生の近澤先生をはじめとする関係の先生方にこの場を借りて、お礼申し上げます。ありがとうございました。また、次年度も講義に来ることができれば、幸いです。ありがとうございました。

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 わたなべしるす

 PS. 記事を書いているのは、いろいろなことが金曜の夕方にあったので、翌日の土曜日。ちょうど、科学者の卵養成講座の開催日。数学と有機合成化学の講義。数学の講義では、なるほどと思うことが。。ちょっと発想を変えると、こんなこともできそうだなと。講座の運営をしながら、そんなことも。。。。もちろん、数学の発展が思わぬことをという新聞記事も。。。こちらは何が真実なのか。。。そんなことも講義の中で取り上げられて。それもびっくり。化学の立場で歴史を振り返ると。。。なるほど、そんな逆転が起きる可能性もあったのかと。。。そうそう、宇都宮女子の先輩もがんばっておられました。メンターとして。。。

20161015184240-1aedf7c5e8f523b1fb638b8788cdcc1bae8abb48.JPG PS.のPS. 最近、忙しくてほとんどタッチできてないのが「国際植物の日」のイベント。そんなイベントでお世話になった方が現在は、新しい職場で仕事をされていて、同じキャンパスで別企画をしていて。。。偶然とは。。ありがたいことです。また、どこかでお世話になることができれば。。。声をかけて頂き、ありがとうございました。




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