【研究成果】自家不和合性遺伝子の「遺伝子重複」が、離れた地域間での生殖を妨げる仕組みを世界初で証明、英国・科学雑誌「Nature Plants」(6/27, 29, 7/6, 7/28追記)
2017年7月28日 (金)
世の中的には、将棋の「藤井聡太四段29連勝」。テレビのニュースの中でも、勝ちの瞬間を中継。ちょうど、netを見ていて、最後の差し手を見たとき、これで有利になるなと思いましたが、そこで投了とは。。。あのあとの、きちんとしたツメを見ないと、ほっとできないのはあるのですが。。。そんな連勝で湧いている月曜が明けた火曜日。。。
今年最初の研究成果発表となったのが、アブラナ科植物の自家不和合性研究からの派生型研究について。現象を見つけたのは、渡辺がまだ、岩手大にいたころ。ある遺伝子を導入することで、こんな結果が起きるだろうと思っていたのですが、それに近い現象となり、なるほどと落ち着くかと思ったのですが、さらに詳細に調べると、その解釈は間違っていて。。。それをきちんと遺伝学の論文として発表したのが、2005年(Takada et al. 2005)。その後、現象を追いつつ、自家不和合性との関係を明らかにしたのが、2013年(Takada et al. 2013)。
それが、今回、論文として発表したアブラナ科植物における新規一側性不和合性のメカニズムの解明です。自家不和合性は、同種内での多様性を高める仕組みであり、自家不和合性を制御するS遺伝子座のS対立遺伝子が同じであれば、不和合性を示すわけです。ところが、今回の現象は、同じ種であるBrassica rapaの日本とトルコの集団間で交雑を行うと、不思議なことに、異なるS対立遺伝子であるにもかかわらず、不和合性が生じる。それも、トルコの花粉が日本の系統の雌しべ上だけで排除される。ところが、正逆交雑の場合には、日本の花粉はトルコの雌しべ上で排除されない。この原因が、自家不和合性遺伝子が両者の祖先の時代に重複して、その後、トルコ系統では雌しべ側の遺伝子が、日本の系統では、花粉側の遺伝子が機能を失い、結果として、一側性不和合性をもたらしたということを遺伝子導入、バイオアッセイなどの手法により明らかにしました。このことは、英国・科学雑誌「Nature」の植物専門オンライン姉妹誌「Nature Plants」に掲載されました(日本時間:平成29年6月27日(火) 午前0時, Takada et al. (2017) Duplicated pollen-pistil recognition loci control intraspecific unilateral incompatibility in Brassica rapa. Nature Plants 3: 17096.)。
今回の研究は、大阪教育大、東京大、奈良先端大、三重大、チューリッヒ大(スイス)、横浜市大、忠南大(韓国)との国際共同研究であり、多くの方々の協力の下、長年の懸案であった研究成果を発表することができました。これまでの研究から自家不和合性のメカニズムとのクロストークもあることから、さらに研究を発展させることができればと思っております。
わたなべしるす
PS. News and Viewsにこの論文の内容の解説記事をワシントン州立大・McCubbin教授が記してくれました。同教授は、渡辺が初めて国際学会に行ったとき、ペチュニアの自家不和合性の研究を発表していたペンシルベニア州立大・Kao教授のところで、かつて、博士研究員をされていた方。こちらの研究について、とても丁寧な解説記事を書いて頂き、ありがとうございました。感動でした。
PS.のPS. 現時点で、どこかの新聞紙上などに取り上げられたという情報は得ておりませんが、大学のtop page、研究科のtop page、あと、共同研究先である大阪教育大にプレスリリースの記事がuploadされております。あわせて、ご覧頂ければ、幸いです。新聞紙上などで取り上げられましたら、改めて、このpageから、お知らせしますので。
PS.のPS.のPS. 6/29(木), 14:00. まだ、新聞紙上での取り上げを見つけておりませんが、web上(日本の研究.com, 日経バイオテクオンライン, マイナビニュース)では、こちらがプレスリリースしたものを取り上げてくれていました。ありがとうございました。
PS.のPS.のPS.のPS. 7/6(木), 9:15. 毎日新聞・科学面に今回の研究成果を取り上げて頂き、「交配妨げる遺伝子の仕組み解明」と題した記事として、掲載されました。毎日新聞のweb上でも「サイエンス」の所に同じ記事を見ることができます。広く社会に「なるほど!」と思って頂ければと思いいます。ありがとうございました。
PS.のPS.のPS.のPS.のPS. 7/28(金), 17:15. Nature Plantsの日本語サイトの「最新Research」のコーナー、2017年7月ですが、そこに、「Letter: 重複した花粉・雌ずい認識座位がBrassica rapaの種内一側性不和合性を制御する」と題して、今回の論文を簡単に紹介してくれています。昨日の「ライフサイエンス 新着論文レビュー」と、あわせてご覧頂ければ、幸いです。