昨日28日は、大田から水原を経て仁川までの移動となりました。途上、
水原にある国立園芸試験場野菜育種部をお訪ねしました。折しも移転構想
が進捗している中ではありましたが、朴先生のご友人という鄭先生が我々
をお待ち下さっていて、いろいろなお話をお聞きすることができました。
なんと、鄭先生も東北大学に留学されていたご経験がおありとのこと。
一連の視察・訪問の予定も終わり、帰途につく前に、園芸試験場の奥の
一角にひっそりと佇むように築かれている禹長春博士の墓に参りました。
日本人にとって「禹長春」という名はまず馴染みがないことでしょう。
事実、この私もつい最近まではそうでした。しかし、この科研班が発足し、
渡辺先生からいろいろとレクチャーを頂いて禹博士の数奇な人生を知り、
とても驚いた次第です。
ここでは敢えて長くは記しませんが、禹博士は大正年間に当時の農林省
に採用されて、ナタネの育種研究に携わられ、昭和11年には東京帝国大学
より博士学位を授与されました。この時に提出した学位請求論文の中で、
西洋ナタネ・キャベツ・在来ナタネの三種のゲノム解析などを行い、その
三者の関係を明らかにされました。
いわゆる「禹長春のトライアングル(三角形)」として、その後世界的
に評価されることになる重要な発見でした。
現在韓国では、この禹博士のことは道徳の教科書において紹介されて
おり、広く国民にその業績が顕彰されているということです。
なお、禹博士については、日本でも下記の評伝が刊行されています。
角田房子 『わが祖国―禹博士の運命の種』 新潮社、1990年
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN05899925
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN11087844
今回の墓参に際し、渡辺先生が「自分の学問の祖」と仰られていたこと
が、とても印象的ではありました。
夕刻には無事に仁川へ到着して、予定していたホテルに投宿しました。
翌日はもう朝の便で帰国となりますので、夕食のあと一行全員で遅くまで
いろいろと語らいました。
振り返れば、朴先生をはじめとして、多くの韓国の諸先生方に支えられ、
短期間ながらも実り多き調査行となりました。また、改めて再調査にくる
必要性も痛感した次第です。関係各位には、改めて御礼を申し上げます。
以上、たけだ識す。