雲南調査記⑤
7月1日(水)曇り
7:00朝食。8:00ロビー集合、出発。昆明市街を北へ向かい、途中雲南農業大学の正門前を通る。昆明植物園は昆明市の北の郊外、雲南農業大学に近い黒龍潭にある。8:50昆明植物園(正式名称は中国科学院昆明植物園)到着。入園料は西園10元、駐車料金5元で、西園の西門から園内に入ると、すぐに青紫色のセージの花壇が目に入った。創建は民国時代の1938年である。現在の総面積は44平方キロメートル、樹木園・杜鵑(シャクナゲ)園・木蘭(モクレン)園・茶花(ツバキ・茶)園・単子葉植物区・百草区・裸子植物区・薔薇区・温室群・珍稀瀕危(希少)植物遷地保護区などがある。
百草園は、日本各地にも同名の薬草園があるように、そのむかし神農氏が百草を鞭打って初めて医薬を作ったという故事(『捜神記』)に由来をもつ。ここ昆明植物園の百草園には、神農本草区・滇南本草区のような古本草書に基づいて薬草を集めた区画や、民族薬用区のような少数民族の間で伝統的に使われてきた薬草を集めた区画など、さまざまな区画がある。雲南特産の、三七、冬虫夏草、金鉄鎖、淮山薬(山薬は山芋のこと)、芍薬をまとめた草区には、現在こうした貴重な薬草が乱獲により絶滅が危惧される状態にあること、それゆえ保護の必要性が高いことを記したプレートもあった。産地でのこのような状況は、雲南市内の漢方薬剤を扱う店舗の多さからも推測はできるが、中国における生薬の需要拡大のなかで、山間部その他の生育地を保護していくことは極めて困難だろうと思われた。
10:20西園を出て東園へ。東園は西園に隣接しているが、園区が異なるため、車で移動した。入園料は両園別料金となっており、東園は5元である。東園の創園は1938年で西園より古く、岩石園・山茶(ツバキ)園・水景園がある。岩石園・水景色園には雲南に生育する多くの竹が集められており、人口池にはスイレンの花が咲いていた。また山茶園には、ツバキ・サザンカ・チャなどの中国各地のツバキ科の希少種が多数植えられている。写真はちょうど開花していた広東原産の「杜鵑紅山茶」。
東園には、雲南植物学の大家であった蔡希陶(1911-1981)の碑と、生誕100年を記念して、2010年12月に植樹された雲南山茶花「獅子頭」がある。蔡希陶は浙江東陽の生まれで、上海華東大学を卒業後、民国21年(1932)に雲南に入り、10万種類を超える植物標本を集めた。1938年に雲南農林植物研究所(現在の中国科学院昆明植物研究所)を設立し、1958年には中国で初めての熱帯植物園となる中国科学院西双版納熱帯植物園を建設、その第一期の園長となった人物である。雲南におけるタバコとゴムの生産拡大にも貢献した。中国では現在、タバコの生産はすべて国家が行っているとのこと。
東園にはまた、天然石に刻された郭沫若の詞碑がある(上写真)。1961年に中国科学院主任院長として、昆明植物研究所を視察した際に作成された題詞である。内容は以下のとおり。
奇花異卉、有色」有香、怡神悦目、」作衣代粮、調和」気候、美化風光、」
要従地上、建築」天堂 ※ 」は改行
11:05見学終了、昆明空港へ向かう。
≪終≫