研究経過
植物受精卵の核合一過程における転写動態を解明 〜顕微授精法と1細胞トランスクリプトーム解析によるアプローチ〜(井澤班・越水班)
February 13, 2025 2:39 PM
Category:論文発表
main:井澤班, 越水班
東京大学農学生命科学研究科の戸田絵梨香特任研究員と井澤毅教授、東京都立大学理学研究科の木下温子助教と岡本龍史教授、東京大学理学系研究科の東山哲也教授、国立遺伝学研究所の越水静助教およびウェルグリーン・アイ株式会社の矢野健太郎博士らの研究グループは、植物受精卵の核合一過程における経時的な遺伝子発現プロファイルとその父母アリル依存性について明らかにしました。
本研究では、イネ受精卵の時系列トランスクリプトーム解析から、卵細胞と比較して受精後に発現上昇・低下する遺伝子群の核合一過程における発現パターンを明示しました(図A)。さらに父母アリル間の解析から、雌雄核の融合時期に父性アリルの転写が開始することや、受精卵の核合一過程において、母方の転写産物に偏った状態から両親アリルに由来する発現へと移行するようすを捉えることに成功しました(図B)。これら研究成果により、植物受精卵の初期発生機構を司る遺伝子の機能解明に向けた研究の進展が期待されます。
本研究成果は、「Development」誌に2025年1月27日付で掲載されました。
図.植物受精卵の核合一過程における遺伝子発現変動 (A)と父母アリルの寄与 (B)
図の一部は、CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/) に基づき、部分的に改変して使用した。
<発表論文>
雑誌:Development
題名:Transcriptional dynamics during karyogamy in rice zygotes
著者:Erika Toda*, Shizuka Koshimizu, Atsuko Kinoshita, Tetsuya Higashiyama, Takeshi Izawa, Kentaro Yano, Takashi Okamoto
DOI:10.1242/dev.204497