東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

最終報告-先を見据えた観察の重要性(医:酒井 桜奈)

2025年1月24日 (金)

実家に野菜を持って帰ったことで家族の白菜に対する興味が増したように感じています。時々「白菜どうなった〜」と聞かれることがあります。私としては嬉しい限りです。あと白菜が鉢を飛び出して大きくなりすぎて初見の人は苦笑いです。我が家の犬も時々クンクンしていましたが食ベることはありませんでした。もともと肉食だからでしょうか。

 

(1)大変だったこと、うまく行ったこと

継続力がない私にとって、栽培を続けること自体が大変なことでしたが、その中でも特に努力したことは、植え替えです。特に白菜と小松菜は成長のスペースを確保するため、全て植え替えを行いました。植え替えは根を傷つけてしまうリスクが大きいため、慎重に行いました。とても時間がかかり体力的にも大変であったという印象があります。結果的に移動した株は枯れることなく成長を続け、うまくいったことでもあるかもしれません。この植え替えの経験から学んだことは、株が大きくなるような野菜は最初から栽培計画をしっかり立てた上で、成長した後のスペースを考えて栽培する必要があるということです。

11月14日  植え替え直後の小松菜IMG_9432.jpg

12月21日  収穫直前の小松菜IMG_0251.jpg

 そしてもう一つ大変だったことはすぐり菜大根とブロッコリースプラウトの栽培です。どちらの栽培においても水換えがうまくいかず結果的に容器から異臭がするようになってしまいました。しかしそのような経験をしたことで、次回スプラウトを育てるときは容器を2重構造にすることで水換えを行いやすくすると同時に風通しをよくすれば良いのではないかという考察を立てることができました。他の受講生のスプラウト栽培を読む中で特に興味を持ったのが武田さんの投稿です。根の広がりをよくするためにスポンジを2層にしてスプラウトの栽培を行なっていました。上層の水分不足が目立ったということですが、風通しは一層の時よりも良いと考えられるので菌が繁殖しづらいのではないかと感じました。こまめに水をやり、収穫まで持って行っているところがすごいと感じました。

 一方で、うまく行ったことは室内栽培だと考えています。日光が外よりも少ない状況で確保できる最大限の日光を当てたうえで、室温を有効に活用しながら栽培ができたと感じています。まだ収穫はしていないため、味も考慮した上で室内栽培を全体的に評価したいと考えています。

11月18日  植え替え直後の白菜(内鉢)IMG_9459.jpg

1月18日  最近の白菜(内鉢)
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(2)他の講義における観察眼の波及効果について

後期の講義では実際のものを観察するような講義が他になかったため、この講義で得た観察力が直接生きるという機会は少なかったかもしれません。しかし、「医療解剖学」の講義で観察眼を間接的にではあるかもしれませんが活用できたのではないかと考えています。解剖学では人体の組織図を見て、どこにどの臓器があって周辺とどのような位置関係になっているのかなどを理解する必要があると私は考えています。その中で、本講義で得た、観察し、疑問に感じたことを追求する能力は生きたのではないかと考えています。解剖学を勉強するときにどの角度から見ている図なのか、どこを表しているのか想像できないことが何度かありました。そのようなときに自分の知りたい情報を探す力や、図を観察することで位置関係を理解する力はこの講義で身につけたものではないかと考えています。

 

(3)毎日観察することで身についたこと感じたこと

 私はこの講義を始めるまで、何か一つのことを続けて行うということが非常に苦手でした。しかし、この講義を通して継続することで得られることの大きさや達成感を学ぶことができたと感じています。私は葉の大きさを測ることを特に継続して行いました。義務感から記録及び投稿を続けられたということもありますが、結果的に自分なりに物事を続ける方法を少し理解できたのではないかと思います。具体的には自分のペースを掴めたということです。今まで、計画倒れしてしまうことが多かったですが、自分が続けられるスピードを感じられたことが大きな成長です。毎日が無理ならまずは週一回から始めてみればよいと考えられるようになりました。また栽培は継続することで得られる成果がわかりやすいためモチベーションになったのではないかと個人的に考えています。そして無理のない範囲で行うことで楽しさを感じることができました。この講義で学んだ「ペース」を大切にして新しいことに挑戦していければ良いと考えています。

 

(4)文章を書くという点においての変化

 1セメスターで自然科学総合実験を履修したことで文章を書くことにそれほど抵抗がなかったというのが最初の気持ちです。しかし自然科学総合実験とこの栽培日記には大きな違いがありました。それは読み手とどれだけの情報を自分が共有しているかです。自然科学総合実験のレポートでも、もちろん初めて読む人が同じ実験をできるような文章作りを心がけていましたが、「教科書の図1のように〜」などの言葉を使うことも何度かありました。また実験から得られる結果は事前にある程度予想がついていることもありました。しかし、この講義では講義の内容を知らない人が読んでもわかる文章を書く必要があります。加えて野菜栽培は育てる環境によって成長過程が変わるため1通りではありません。そのため文章を書くという点において、他者の視点を意識して文章を書くようになりました。私が見ている実物の白菜をどのように表現することで、読み手もイメージすることができるのかを考えて毎回の投稿を書くようにしました。その点で最も大切だと感じたものが数値です。数値は事実を表すため、成長の様子が自分にとってだけでなく他者にとっても感じやすかったのではないかと思います。また不思議に感じたことを調べて考察する場面もありました。そのような場面で、調べた内容をもとに、野菜の状況を推測して考察する力を身につけられたのではないかと考えています。

 

(5)客観的に捉えて、自然科学的にものを見るという点で習得したこと。また他の受講生と比較して研鑽を積むべきだと感じたこと。

 客観的に捉えるために私が取り組んだことは葉の長さを定期的に測り、成長率を表すということです。今まで植物の一部を測りつづけるという体験がなかったため、測ることで見える成長は非常に興味深いものでした。測ることで1日の中でも葉が成長しているということが体感でき、非常に嬉しかったです。

 また今回の講義では気になったことについて調べ、得られた情報を実際の野菜の状況に投影するという経験をすることができました。小学校の時、校庭に生えている桜の木を観察する授業がありました。しかし気づいたこと、気になったことはあったとしてもその原因や仕組みを調べることはなかったです。この講義で得た、調べたことを科学的に分析する能力は多方面に活かせると考えています。例えば、以前祖母が「料理は科学だ」と言っていることがありました。確かに調味料を混ぜ合わせたりするような点は科学に近いものがあるのかもしれません。料理だけでなく趣味となるものを自然科学的な視点で見ることで、より興味を深めることができるだけでなく、新たな視点を持つことができるのではないかと思います。

 また他の受講生と比較して自分がさらに研鑽を積むべきであったと感じたことは、適切なデータから成長の様子を見るということです。私が主に行った客観的な観測は葉の大きさのみです。金濱さんは測った値と他のデータの相関関係を数値として出していて面白いと感じました。また得られたデータをグラフにしている点も良いと感じました。複数の情報を対象としてそれまでの成長の原因を調べることで野菜の状況の考察も正確になるのではないかと考えました。測った値を示すだけでなく、気になることの原因を特定できるようなデータを追加して集めることが大切だと感じました。例えば私の場合は外鉢の成長が遅い原因を気温か水やりの頻度ではないかと考察することがありました。インターネットなどで調べましたが、さらにデータを集めることでより原因を絞り込めたのではないかと感じました。

 

(6)いただいたコメントにどれだけfollowできたか。

 オガタさんからいただくコメントは野菜栽培においてとても助けになっていました。ほとんど初めてと言える野菜栽培で悩むことも多かったですが、その度にアドバイスをいただけて本当によかったです。

 まず日当たりについてです。野菜を外鉢と中鉢に分けてから少し経った後、大きさの差が目立ち始めました。植え替えを行った後だったため根痛みを疑い、サイズが比較的小さかった外鉢をこのまま育て続けようか悩む時期がありました。しかしオガタさんにこのまま比較を続けてみた方が良いという助言をいただき育て続けることを決めました。大きさの差は広がってしまいましたが、外鉢の方も徐々に成長する様子があり、育て続けて良かったと思っています。まだ収穫には至っていませんが、味の違いも感じることができれば良いと考えています。

 また肥料の与える時期は自分ではわからなかったというのが正直な感想です。自分の野菜の状態を写真で伝えることができる双方向授業だからこそ的確な肥料の時期を教えていただくことができ非常に感謝しています。

 そして最初はどれくらいの寒さに野菜が耐えられるのか分からず、寒い夜は室内に入れるようにしていました。温帯植物である白菜と小松菜は夜間の温度が低くても大丈夫で、逆に温度変化がストレスをかけるだけでなく、呼吸による栄養分の消費が顕著になることを学びました。自分の改善点を見つけることができるだけでなく、新たな知識を得られるということが良い経験となりました。

 

(7)中間発表の目標をどれだけ達成できたのか。

 私の中間発表の目標は大きく分けて主に以下の2つでした。

  • まだ栽培を行なっていないブロッコリースプラウトとミックスの栽培を行う。
  • 仮説を立てて栽培を行い、同じ尺度での観察をこまめに行う。

 ゴール地点まであと少しとなり、目標達成率は50%程度だと考えています。まずブロッコリースプラウトとミックスの栽培を始めました。ブロッコリースプラウトは残念な結果となってしまいましたが、次回育てるときにどこに気をつけて育てれば良いのかを学ぶ機会になりました。ミックスは収穫には至っていませんが白菜と小松菜の栽培で得られた知識を活かして日々のお世話をすることができています。

 また前半に引き続き後半でも葉の大きさは定期的に測るようにしています。収穫まで続け、最後に全体の推移を見たいと考えています。ただ前回の目標でもあったこまめに測るということが達成できなかったことが反省点です。毎日ではなくても3日に1回測るなど工夫を行うことで改善していく必要があったと反省しています。そして白菜においては、結球を始めてからから反省したのですが、横からの写真を撮っておくべきだったと感じました。上からの写真だと立体感に欠け、結球を始めているのかタイミングが掴みづらいです。もし横からの写真を定期的に撮っていれば結球を始めたことをいち早く把握することができ、その時の気温やその他環境について正確に記せたのではないかと感じています。白菜だけではなく他の野菜においてもいくつかの方向から写真を撮っておくことは大切だと考えます。立体的な記録を残しておくことで気付ける変化も増えるのではないかと感じました。

 

(8)得た知見をこれからどのように活かすのか。また収穫していない作物をどのように管理したいか。

 私は今回、様々な視点から観察記録を残すことの大切さを学びました。この知見を様々な分野で活かしていきたいと考えています。私は医療放射線について学んでいるため、検査画像を見る時にこの知見が生きてくるのではないかと考えています。1つの考えに固執しないで様々な場合を想定して画像を見たいと思います。また今回野菜の種を植えてから収穫間近の状態までいき、なかなか得られない達成感を感じることができました。今までも野菜を栽培したことはありますが、その多くを枯らしてしまい1人で栽培まで持って行けた経験は初めてです。今回のような貴重な経験をして、新たな野菜を栽培してみたいという気持ちがあります。自分が好きな野菜や少し難しい野菜に挑戦してみたいです。そのときは今回の反省点にもあった多角的な視点から観察記録を行うということを実践したいと思います。

 私はまだミックスを収穫していません。現在、播種から29日たっており、ほとんどが子葉の状態です。白菜の隣の小松菜が植えてあった場所で育てているため、栄養面と日光面で不安が残っています。そのため、まずは日当たりを良くするためにアルミホイルで日光を反射するような構造にしました。この変化を見るためにこまめに写真を撮って徒長の様子などを重点的に観察していきたいと考えています。そして栄養面です。小松菜や白菜の影響で土の栄養が減っているため、10日間おきに肥料を与えています。それに加えて太くしっかりとした野菜を残すために、株が密になったり、葉が重なってきたときには早めに間引きを行いたいと考えています。最後に中間発表の反省にあった「成長を示す尺度や仮説を決めずに栽培を進めてしまった」ということを活かすため、観察していきたい部分を決めました。それは、それぞれの野菜の葉の成長率に加えて、葉の形です。ミックスはさまざまな野菜を育てるため、比較を重点的に行なっていきたいと考えています。特に白菜や小松菜ではそのときに最も大きい葉を計測していましたが、次は特定の葉について計測を行いたいと考えています。ある程度大きくなったら大きさを測る葉に何らかの印をつけて見失わないようにしたいと考えています。

1月18日 ミックスIMG_0946.jpg

以上で最終報告を終わります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 (文字数5643文字)

 

 

コメント

医学部 酒井さん
 
 中間報告の時は早めの投稿でしたが、今回はギリギリの投稿。時間管理というか、他の講義の試験などと重なったのでしょうか。中間報告の時にできていた理由などを考え、次に活かして下さい。早めの対応ができることはこれから先、大事ですから。タイトルの「先を見据えた」という部分ですね。
 
 これだけたくさんの植物の植えかえをして管理できていることが評価できますね。また、コマツナは市販のレベルに近いし、ハクサイも結球をしようとしているのは、植物が何を欲しているかの勘所を理解できたことではないでしょうか。物言わない植物ですが、植物がリクエストしているところが何かを分かることは、専門として学ぶ「医療」にも活かされると思いますので。収穫をして市販の野菜と食べ比べというのもよいかも知れないですね。また、この講義での学びが早速「医療解剖学」という異なる専門の科目に活かされているのはよいことです。是非、他の講義にも波及させてください。
 
 読み手に合わせてわかりやすい文章にするのは大事です。また、調べたこと、つまり、ある種の先行研究のようなことを踏まえての文章作りはこれから先色々な場面で求められます。是非、習慣になるようにして下さい。この講義を含めて、講義から何を学ぶのか、また、その講義、実験の背景にあるものは何なのか。そうしたことを考える習慣の重要性に気付きがあったのはよいですね。科学的な背景は医療においても大事なことです。場合によってはそれを説明することも求められます。その意味で是非習得してください。
 
 観察記録を残すこと。とても大事です。研究者であれば、実験ノートは実験をしたという証拠であり、記録です。それを元に誰かに説明したり、自分自身を発展させる基礎になります。また、手書きであれ、パソコンの中であれ、誰が見ても分かるように書いておくことは共通理解をするという点で大事になります。気になったことをメモ書きのように残すのではなく、きちんとした記録にしておくこと。是非、覚えてください。メモ書きはすぐにどこか似なくなったり、分からなくなったりしますので。
 
 ミックスの栽培はちょうど大寒の時期。植物の生育には厳しいです。もし、種子が残っていれば、2月後半とかに播種すると、もう少し良い生育になると思います。植物に限らず、いつのタイミングで行うのがよいかというのも大事なことです。
 
 
 わたなべしるす