【最終報告】 誰にでも伝わる文章を(農:武田 壮司)
2025年1月23日 (木)

ダイコンとミックスの栽培を始めてから早いものでもう108日目を迎えました。いよいよ最終報告の時ですね。長かったような短かったような忙しい3ヶ月ちょっとでした。渡辺教授に受講を申請するメールを送ってからとなるとすでに半年以上経過しており、時の流れる速さに驚くとはよく言いますが、ここまで早いとリアクションも取れないです。あれから私は成長できたのでしょうか。それを知るためにも最終報告、張り切って書いていきます!
1. 植物、作物を栽培する中でうまくいったこと、いかなかったこと
まず、栽培する中でうまくいったことは、前回記事にした二回目のスプラウト栽培です。私は、すでに一度スプラウトの栽培を行っていたのですが、その内容としては多く課題が残るものでした。そこで、自身の栽培過程を振り返り、良かったと思える点と、改善が必要だった点をまとめ、次に活かしました。また、失敗についてまとめた記事に対するラボスタッフのオガタさんからのコメントも参考にさせていただきました。実際に上がった課題としては、遮光を完全に行うこと、播種密度を上げること、ベースとなるスポンジを平らにすることが挙げられました。この3点の改善を主に行い、二回目のスプラウト栽培を行ったのですが、結果としては、収量を格段に上げることに成功しました。実際に栽培中にもその変化は顕著に表れていました。
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左 一回目における8日目の様子 右 二回目における8日目の様子
次にうまくいかなかったことについてですが、それは大根の植え替えです。1月2日の記事において、二株ある大根のうち片方を土袋に植え替え、もう片方を間引いたと記していたのですが、植え替え終わりの時点ではもう片方の大根も残して育てる予定でした。しかし、程なくして葉先から枯れていってしまい収穫を行うことに決めました。
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葉先の枯れた大根
間引きや植え替えを行う際は、普段外部に晒されていない植物の根の部分に変化を及ぼしやすい行動のため、普段の何倍も慎重に行わなくてはならないと感じました。
他にうまくいかなかった、というよりも足りていなかったこととして、行動前の試験が挙げられます。冬の防寒対策を行う際に、思いついた方法をいきなり実践投入してしまい、場合によっては生育に悪影響を及ぼしていたかもしれませんでした。結果的には悪くない結果が得られましたが、試験を行うことが必要なことをコメントにて指摘していただき、気づくことができました。
2. 他の講義における波及効果
本講義で私は毎日植物を観察することで、観察眼を養うことができたと感じます。実際にその効果を強く感じたのは、「自然科学総合実験」という実験科目においてです。この授業では自然科学の分野について全6種類の実験を行い、実験終了後それぞれの実験についてレポートを書くのですが、まずレポートの書きやすさが回を追うごとに上がっていったと感じます。それはもちろん実験に慣れてきたという点もありますが、何を書こうかと迷わなくなったという意味で書きやすくなったことから、学問論演習の進行に伴い観察眼が養われたことで、実験から得られる情報がより多くより鮮明になり、実験への理解度がまして行ったからだと思います。実際にそれはレポートの評価点や総評に現れており、自信につながりました。
また、観察眼という点で本講義と合致しているかわかりませんが、「異文化理解」の授業でフットサルを行う際に、周囲の情報がなんとなく今まで部活でサッカーをやっていた時より多くなった気がしました。たとえば、パスを出す際に前日の雨によるピッチの濡れ具合からどのくらいの力と回転で出せばちょうど相手に取られないかなどが思考の中に自然と取り入れられていて、少しこじつけがすぎる気もしますがこれも観察眼の力だったのではと思います。
3. 毎日の観察で気づいたこと、身についたこと
毎日観察を行うことで学ぶことができたのは、観察眼は毎日観察をしなければ養われないということです。思い返すと恥ずかしながら本講義期間中には毎日観察を行っていた期間もあれば行っていなかった期間もあったと思います。この経験から絶対に言えるのは、毎日観察していると観察眼が養われ些細な植物の変化にも敏感になり、逆に数日だけでも日を開けて観察した場合は大味な変化が起きているために観察眼があまり養われないということです。実際に、初期の毎日観察をしていたいた頃のこの記事の、朝夜の葉の動きに気づけたことのように、これは本当に当たり前なことではあるのですが、前者と後者では明らかに差がつくと感じました。
また毎日観察することで、感じたことがもう一つあります。本講義とは直接的な関わりは少ないのですが、それは一つ決まったルーティンが1日の中に組み込まれると、生活の質が向上するということです。この決まったルーティンは、1日の行動の枠組みとなり、何をするか曖昧にしてダラダラしていた時間に締まりを出してくれました。1月初めは正月休みで少しだれていたのですが、そこを一つ締めるような働きをしてくれて、今でも継続して規則正しい日々が送れています。
4. 文章を書くという点で見られた変化
ここに関しては書く速さと構成力の両方に大きな成長があったと思っています。中間発表の際にも記していたのですが、本講義の受講を決断した理由として、今後の大学生活で必要となる、「長い文章をわかりやすく書く力」を養うためというものがありました。これまで私は作文を書く授業では毎回クラスのなかで最後に提出し、たくさんの赤字をつけられて返されるほど文章を書くのが苦手でした。本講義でも初めは1つの記事を書くのに睡眠時間が削られてしまうほど時間がかかっていたのですが、最近の記事は書くために必要な時間が以前と比べ半分...までとはいきませんが、格段に減りました。記事を書く回数を重ねるうちに自分の中で文章を書くプロセスが構築されていき、文章を書くこと自体に対する苦手意識が薄れたことによると思います。
構成力の成長に関しては、記事というレポートとは違い、ある程度自由なフォーマットから始められたことが大きいと感じます。自由度が高いために、文を書くのが苦手な自分にとってもハードルは比較的低く、相手に伝わりやすい文章の構成を楽しく行うことができました。実際にあった大きな変化としては、書く前に一度内容をノートに書き出し、構成を考えてから書き始めるようになりました。先述した通り、この成長は「自然科学総合実験」の評価点や総評にも現れており、この成長を足がかりにさらに精進していきたいと思っています。
本講義を通して、「文章を書く能力」は成長できたと思いますが、いまだに、読みやすい文章になっているかを主観で考えてしまっているので、どのような人に発信し、何を伝えるために書いているのかまで考えられるようになることが次の私の目標です。
5. 自然科学的なものの見方について自信が習得できたと思ったこと、他の受講生と比較して研鑽が必要であると思ったこと
本講義を通して私は、「観察、考察、実践」を行うプロセスを習得できたと思います。本講義では「観察」がたびたび強調されてきましたが、植物を自分で栽培し、コメントをもらえるという点から、「考察」、「実践」の部分も同様若しくはそれ以上に必要な要素であると感じました。栽培をしていく中で、日の高さが変化することで日陰の位置が変化するといったことや、スプラウト栽培のやり方を1から見直すといったことなど、さまざまな疑問や課題に遭遇していき、その都度解決策を考え実践してきました。この繰り返しによって私は成長できたと思います。本講義の植物を育てるという「実践」の部分は、他の一般的な講義では経験することが難しいため、非常に良い経験ができたと思います。
他の受講生と比較して研鑽が必要であると思った点は、「データの数値化」にもっとこだわるという点である。同年度の受講生の方を例に挙げさせていただくと、金濱さんは本講義の初めのうちから日照量を数値として観測しており、その後も成長度合いのグラフ化を行なっています。私の書いてきた記事のどこを見ても、視覚的にどの程度の速度で成長していたかということは理解できないと思います。相手に情報を伝える手段として、数値あるいはそれをグラフした形というのは、主観の入る余地の少なさという点で効果的だと感じました。初めのオリエンテーションでたくさん定規を当てるようにと言われましたが、それは誰にとっても等しく認識できる値を物事に与える、すなわち客観化させなさいという意味であったと理解しました。今後の物事を観察する場面では、得られた結果の「数値化」にこだわっていこうと思います。
6. コメントに対するfollowとそれを通じて感じたこと
栽培全体を通して、記事に対するコメントに助けられることが多々ありました。まず挙げられるのは、私が疑問に思ったことに対して、回答を頂けたことです。実際に例を挙げると第二回の記事において、種子の感光性についての疑問を記したところ、その回答をコメントに記していただけました。自分で調べてもあまり出ず、気になっていた情報だったので非常に助かりました。他には、自分がやろうとしていることに対して選択肢を提示していただけました。鉢が混み合ってきたために、大きいプランターに植え替えようと安直に考えていたことを記事にすると、コメントで、植え替え以外のさまざまな方法を提示していただき、結果として一部を収穫して間引きを行うことにしました。先述の通りその後、大根の植え替えで失敗するので、コメントのおかげでリスクを回避できたのかと思います。また、栽培の結果に対する考察も一緒になって考えていただくこともありました。これは先述したスプラウト栽培においてのもので、このフィードバックが元となり二度目のスプラウトを成功させられたのかと思います。このように重要な局面ではいつもコメントに助けられてきました。
中間報告でも述べましたが、双方向であることは、ただ思考が二人分になるのではなく、一人では完結してしまっていた思考が、その人たちの間で連鎖し続け広がっていく、そんな利点が感じられます。これからの大学生活、一緒に考える人がいるという状況を大切にしていこうと思います。
7. 中間発表における目標の達成度
私は中間発表にて、以下の3つの項目を目標に設定しました。
堅実な手入れと観察
この項目に関しては、ある程度達成ができたかと思います。特にスプラウトに関しては、失敗から学び、再チャレンジして不備なく収穫までいけたのでかなり水やりなどの手入れを堅実に行えたかと思います。冬季の防寒施策を行なったことで、栽培していたミックスは大きく成長し、収穫まで問題なくいくことができ、大根に関しても窮屈になっていた鉢から大きな土袋へと移動させられ、ストレスなく栽培できていると思います。1点惜しかった点は、大根の植え替え時に小さい方の個体を刺激してしまい、葉先の色を変化させてしまったことです。
記事を書くスキルの向上
先述の通り、「文章を書く能力」は初めの頃から大きく成長しており、自信をつけることができました。が、私の場合はスタートラインがかなり後ろにあったため、いまだ周りには追いつけていない状況ではあるので、これからはどのような人に発信し、何を伝えるために書いているのかまで考えられるようになることを次なる目標として「文章を書く能力」の向上に励んでいこうと思います。特に私の好きな昨年度の田中大翔さんの記事のように伝えたいことを伝えてかつ面白いと思えるような記事が書けるように努力します。
コンスタントに1週間に1本記事を書く
この項目は、達成できませんでした。前半の講義では、やらなくてはならないこと(大学の課題等)、やるべきこと(大学の勉強等)、やりたいこと(バイト等)を何でも優先順位を等しく全て行おうとして、結果キャパオーバーしてしまいました。それによるつけは大きく、そこに自分の惰性が加わることで、この結果になったのだと反省しています。今後は自分のキャパシティを理解し、自律心と計画性を持って行動していきます。
8. この講義で学んだことを今後の生活でどのように活かしたいか
この講義で学んだことで、私が特に大切にしていきたいのは、「相手の意見を取り入れ、自分の中で広げて再び発信することの大切さ」と「結果の数値化」と「受け取り手の気持ちになり文章を書くこと」の3つです
「相手の意見を取り入れ、自分の中で広げて再び発信することの大切さ」について
これは本講義の双方向性の部分に該当しています。栽培時に生まれた疑問や課題は常に記事に対してのコメントや他の受講生さんの記事によって解決の糸口が掴めるようになり、これらは自分に成長を与えてくれました。今後、研究などで課題にぶつかった際は思考の中に他者との議論を取り入れていこうと思います。
「結果の数値化」について
これは本講義で自分が十分に達成できなかった課題の一つであり、その重要性に気づいた存在でもあります。今後あるであろう研究の発表時に必要となるスキルであり、現状自分にはできていないことなので、今からでも数値化する機会があれば飛びついていき、身につけていきたいと思います。
「受け取り手の気持ちになり文章を書くこと」について
これは、この講義を受けて見えてきた、私がこの講義を受講した根本の理由である、文章を書くスキルを上げることにおいての、次なる目標です。文章を、何を伝えるために誰に向けて書いているのかを意識することで、より良い文章が書けるように頑張っていきます。
今後の植物の管理に関して
まだ収穫していないのは、ダイコンのみとなっており、大きさも十分で成長が止まっているように感じられてきたので来週の記事までに収穫し、その様子を記事に記そうと思います。また、今週は収穫したハクサイについて記事を書く予定です。
以上で最終報告を終わります。最後まで読んでいただきありがとうございます。残り数本の投稿にはなりますが、最後まで頑張りたいと思います!
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コメント
農学部 武田さん
講義をスタートしてから3ヶ月ちょっとですね。あっという間だったというのは、それだけこの講義に加えて、多様なことに対応していたからではないでしょうか。カイワレダイコンを例にしていましたが、何が問題であり、どこをどの様に改善すれば問題解決になるのか。他の受講生のコメントにも書いた高校にも導入された「課題研究」です。大学、大学院でも同様の単位が卒論、修論、博士論文の研究として設定されています。ちょうど、そのモデル的なことを、この講義で行ったことになります。ダイコンの植えかえがうまくいかないとありましたが、例えば、ダイコン、植えかえという単語でGoogleすると、なぜ、ダイコンのような根菜類は植えかえをしないで間引きをするのか、実験結果も交えています。つまり、過去の先行研究を調べておくというのが大事だということが理解できるかと思います。色々なことにチャレンジすることはもちろんよいことですが、大事なことは、そもそもやってないことなのか、やったけど無理だと分かったことなのか。そこの理解は大事なポイントです。
文章を書くと言うとき、どのような内容、文章構成にするのかを事前に考えるということが大事です。簡単なメモ書きを作るのもよいですし、uploadする写真を並べて、今回はこんなことが主張できるというやり方もあります。いずれ、もっと長い論文等を書くとき、構成を如何するかという問題に突き当たります。どんな文章にするのか、誰を対象にするのか、その点をしっかりと考えれるようになってください。
継続は力なりということわざがあります。1つは文章を書くという面で実現できたと思います。一方でコンスタントに毎週決まった曜日に記事を書く。難しかったようですね。本来は講義を行う時間は大学にいて話を聞いたり、議論をするわけです。この講義は特別というか、自分で時間、場所などをデザインして自己管理するということを求めています。これから先、やりたいこと、やるべきことなど増えてきます。その時の順番付けができるようになること、そんなことを考えてください。
dataを数値化して表す。これは農学を学ぶ者にとっては大事なことです。次年度からは専門の講義も始まると思います。三年次からはコースごとの学生実験もあると思います。そうした実験が始まる前に、見ている現象を数字で表し、評価するということを実感してください。もちろん、日々の観察で昨日と、ここが違うということに気がつく「観察眼」を持つことは大事ですが、それを身につけるためにも数値化は大事ですから。
わたなべしるす