東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

仙台市教育センターとのコラボによる夏休み企画「科学的思考力を伸ばす授業展開と教材教具の工夫(講話・実技)」(8/17)

2016年8月18日 (木)

 午前中が仙台市立片平丁小学校へ。午後からが仙台市教育センターとのコラボのメイン企画。正式には、〈授業づくり研修1〉 小学校理科研修「夏休み以降に指導する単元について,重点的に学ぼう!」と言う研修が夏休み中に7回計画されており、その1つの枠として、四国中央市川滝小学校・村上校長先生に講義と実習。mainは、渡辺も昨年、四国中央市内の先生方向けにされいていた「理科学習教材研究グループ」での実習内容をさらに充実させたもの。というか、四国中央市内の場合は、2ヶ月に1回くらい、教材研究をされているようですが、今回は、駆け足で、いくつかの実験に使えるヒント。渡辺もなるほどと。。。

20160818194420-da242c81db9439d38176f71953cc3a7370a25c45.JPG20160818194440-020bae7d0477d7c5bb8519843ad09266b9b71573.JPG イントロでは、今治市の話も。村上校長先生と渡辺の母校である愛媛県立今治西高等学校の写真、さらには、昨年の11月に四国中央市立川滝小学校での「理科学習教材研究グループ」で、多様なドングリの果実を使った模型というか、サンプル作りも。なにより、購入したものでなくて、自分で作ったものというので、子供たちに見せることの刺激の大事さを。。。最近は、大学でも危機の先端化が進み、渡辺には使えないものが多くなり、ちょっとしたことを直したり、ピンセットを研いだり、。。そんなこともやらなくなったり。。。ちょっと、かなり反省でした。

20160818194952-96c03b12cef60aad8b4920b9c228da8be0a8f346.JPG20160818195010-848d3ce1ba931b6a385dcdad5c32afd60f0670e0.JPG 授業のあり方という点では、耳の痛い言葉が。。。大学も教育研究機関。東北大が掲げる3つの理念、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」のうち、「研究第一」、「実学尊重」と言う点は、研究を通じて、いかに教育を行うのか、また、実際の自然であったり、現象の中から、実用に供するものを考えるという点では、子ども時代、若いときにどれだけ、自分に影響を与えてくれる先生と接点ができるか。と言うことにかかっているのだなと。その点、渡辺は、恵まれていたのだなと。。その1つが、「今治自然科学教室」。今まで、このHPからも数多くその意義を書いてきましたが、今治市内の理科の先生方が55年前に、月1回、小学校5, 6年生の理科好きの希望者に、物理、化学、生物、地学という多様なことを今治、愛媛の自然を活用して、指導すると言う試みを始めたこと。また、それが、55年間、粛々と続いていると言うこと。渡辺の研究でも30年ほどであり、継続は力なりというのは、まさにこのことだと。。。さらには、1つの小学校にいれば、理科の先生は、数名。ところが、この今治自然科学教室では、色々な小学校の先生が集まるわけです。そうしたら、岩石のことなら、この小学校のこの先生、植物のことなら、別の小学校の先生というように、色々なプロがいるわけです。まさに、餅は餅屋。そう考えたとき、今治での理科専科の先生方、今治自然科学教室があったからこそ、今のように自然のものを見ることをしっかり子供の頃から学べたのだなと。もちろん、田舎で、遊ぶものもなくて、ものを自由に壊せたし、虫を捕って悪さをしたり。。。そんな子供時代を思い出しながらの拝聴でした。というか、そんなことが基礎にあったので、学生時代指導頂いた日向先生のコンセプトであったり、科学者の卵養成講座の発想になったのかもと。。。。ちょっと、overestimationかもしれないですが。。。

20160818195318-71664d22444c7cf40687bc2fc469c893c8cef555.JPG20160818195336-df9b06faa909db9c4c9695db76461bcb2c4919d2.JPG あと、おもしろいものでやるということ。これは、難しいことだと思いました。昔から、4年生でヘチマ、つまり、ウリ科の結実を学んでいるような。。。昔は、ついでに、導管液というか、ヘチマ水というか、それを一升瓶に集めて、と言うことをしていましたが、今はなぜか、どこの小学校に行ってもみることがない。なぜなのか。。。この理由はわからないですが。。。ただ、ヘチマの場合、食べることは難しい。ところが同じウリ科でもスイカ、メロン、キュウリ、カボチャ、ゴーヤなら、食べることができる。子供たちには、スイカ、メロンなら、大人気。ところが問題は、これらの栽培は、ヘチマから比べると、病害虫も多く、管理がたいへん。蔓割病、うどんこ病など、結実して、成熟するまで個体が持ちこたえず、途中で果実がだめになることが多いわけです。また、子供たちの数分だけというか、班の数分だけのスイカの苗を用意するとなると。。。それも播種し、カンピョウ、カボチャなどの台木に挿し木をするとなったら。。。。農学部農学科卒の渡辺でも結構たいへんなこと。まず、台木と穂木の播種する時期をずらすところからやらないと。。。近くに農業高校でもあれば、コラボもできるかもしれないですが。。。そこを、村上校長先生は、市販の接木苗を購入して、やっているとか。これを使うと、子供たちの植物管理への意欲がちがうと。。。確かにそうですね。食べることができるおいしい果実ですから。。。そんな工夫も考えること、実験、研究の場合は、なかなか、そうはいかないわけで。。。どうやってモチベーションを維持するのか。もちろん、それが教官の腕の見せ所なのかもしれないですが。。。なかなか、言うは易く行うは難しと言うのが実際かなと。。。いずれ、考えさせられる前半の講義でした。

20160818195421-201f77cb0dcf3c177e2530a66ebd95153ce39d6b.JPG20160818195435-60b855282ed4509dcb45d98f95bc3dc01ba46821.JPG 後半は実験講座。最初は、対流の観察法。渡辺は知らなかったのですが、温度で色が変化する「特殊な色素」があると。あっても不思議でないのですが、そんなことを使うことはほとんどないので。。。植物が高温になれば、普通はアウトになるので。。。もちろん、復活もしますが。。。対流の観察するとなれば、ビーカーに水を入れて、過熟。そのビーカーが円柱。これが立方体というか、六面体というか。それであれば、観察しやすいと。。。なぜ、パイレックスのビーカーでそんなものがないのかと。。。渡辺はここで答えに窮したわけですが、角があると、加熱をすると、そこに熱が集中して、割れやすくなると言うのが、解答のようですが、東北大に100年の歴史がある材料物性などの研究をされている方に、また、きいてみようと思います。確かに角型のビーカーはないので。。。 また、オガクズを使っての対流の観察法も。へーーーでした。

20160818195508-73713043c201ff209a1834892b6d05309927f120.JPG20160818195521-47b6104b516ff26d929f38ff34e71974bcfe92de.JPG その後は、風力発電、蓄電、放電を見ることができる装置の作成。設計図から部品まで用意され、昔よく遊んだ、プラモデル、と言うより、学研の科学の付録を作っている感じ。懐かしく、楽しいものだったなと。もちろん、設計図を見ればわかるのですが、理科が少し苦手という先生のために、村上校長先生が代わりに、配線をしたり、ねじ止めをされているのは、とてもniceでしたし、作っておられる先生方の子ども時代を想像できるようなかぶりつきの組み立てだったような。もちろん、最後には、扇風機で風車を回し、発電。赤色の発光ダイオードが光るのを見て、歓声を上げている先生方でしたが、夏休み明けには、これが子供たちに変わるのだろうなと思うと、感動でした。

20160818195726-8a2617acbf77b5e3ec679f76bc87771cbf480b3c.JPG20160818195638-448e303f13ef8a0ce1f28cc2972ab84057fd1d96.JPG20160818195748-ce7ea2069cecc3bac55166a02b934a5621e68f31.JPG 最後の所は駆け足で、樹脂包埋した昆虫標本。ここまですることはもちろん、難しいですが、Internetの時代。HPを見れば、意外と簡単にできるのだと。昆虫は植物と異なり、水分含量が多くの成虫では、少ないので、感想さえさせれば、。。。渡辺も助手時代に害虫研の学生さんたちとサンプリングにいった「ノコギリクワガタ」が包埋されたものが机にあったり、包埋まで入ってないですが、乾燥させてある、スズメバチ、オニヤンマが机の周りに。虫が苦手な先生方もいるかもしれないですが、スズメバチはさすがに生きているものをさわるのは、。。。labで捕まえたのも、うまくたたいて、落とすことができたから。。。そのおかげで、型崩れすることなく。。。そのレベルで考えるのも、1つかなと。長持ちの問題は、難しいですが。

20160818195950-2c3c5b33886b5d235bd0f29360560e4912e2b750.JPG20160818195925-e4b4079dcb6202c00a1e7927587ded87f80ef07d.JPG20160818195855-ea1c2768e1acc6529fd60b0fa0932ba4cf24cc59.JPG ちょうど、ここで終わりの時間が。あっという間の2hr45minでした。講義のあと、個別に色々な議論があったようでした。今治の何かが仙台に伝承することができれば。。。この企画を昨年から立案に関わられた豊川指導主事、大友主任指導主事もほっとされるのではと。。。と言うことで、四国中央市立川滝小学校の村上校長先生をお招きしての3つのイベントは、無事、終了と言うことで。。。今度は、渡辺が愛媛に戻って、お役に立てればと思います。最後になりましたが、この場を競って頂きました仙台市教育センター、豊川指導主事、大友主任指導主事を始めとする関係の方々、もちろん、遠く愛媛からきて頂いた村上校長先生にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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 わたなべしるす

 PS. 震災からしばらくしてからだったような。村上校長先生が愛媛県教育センターにいらした頃、伺ったことがあり、その時にもいろいろな機器があったのを。桿秤というのだったと思います。行商の魚屋さんが持っていたものを見つけて、うれしかったのを思い出したのは、ヘチマの種子のサンプリングをされていて、それが次年度の小学校への配布とかにつながるのかなと。。。ふと。。。

20160818194201-666b2ced1fb7375e491b7fb5ffe2844e5d19c4fd.JPG PS.のPS. 200oくらいまで加熱して、樹脂を曲げる装置。なんでもさわってみないと落ち着かない渡辺は、つい。。手を出すわけですが。。。これは熱いとなると。ぱっと逃げる。その当たりも子供の頃からの経験かもしれないですが。

20160818194141-6a6bfb149d1cb6e8480cc83b4ac842fe8ae1fc92.JPG PS.のPS.のPS. 移動、食事の時間などを利用して、村上校長先生とは、色々な昨今の理科教育というか、そんなことを議論する時間を頂戴しました。これから10年単位での先の時代を考え、今何をしておくことが、将来につながるのか、そんなことをたくさん学びましたし、年代が近いこともあり、昔よかったことをどこまで、再現するのか。無理なこともあるかもしれないですが。それにしても、危機管理能力、戦略的な思考力などというのは、まさに、子ども時代のちょっとした遊びの中にあったり、そんなのだなと。。。ありがとうございました。

 PS.のPS.のPS.のPS. このイベントとは、独立事象。時々、記していますが、福島県立福島高等学校での天蚕の様子。今日も報告頂き、大きな蛹が。。。あと、写真ではわかりにくいかもしれないですが、繭の繊維というか、生糸の量がカイコよりも少ないと。。品種改良により、より小さなカイコで多くの生糸の生産を。育種学、遺伝学を実用化させたもののすごさを実感した瞬間でした。ありがとうございました。

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