東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

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平成28年度 活動ブログ

平成28年度 活動ブログ養成講座の活動を記録しています

2016.07.04

2枚貝のがんの論文

飛翔型「科学者の卵養成講座」事務局の下山せいらです。

ジャーナルクラブ※をしてみました。

医療やがんについて興味があるという受講生がいたので、がんに関する論文を読んでみました。

Letters
Widespread transmission of independent cancer lineages within multiple bivalve species
Michael J. Metzger, Antonio Villalba, María J. Carballal, David Iglesias, James Sherry, Carol Reinisch, Annette F. Muttray, Susan A. Baldwin & Stephen P. Goff
Nature 534, 705-709(30 June 2016)

News&Views
Cancer: Transmissible tumours under the sea
Elizabeth P. Murchison
Nature 534, 628-629 (30 June 2016)

簡単に言いますと、二枚貝のがんが別種の二枚貝にうつるという研究です。

がん細胞は、転移することがありますが、それは個体内でとどまっています。
ヒトでは、がんになりやすい家系があり、遺伝的な理由だったり、生活習慣が似ていたり、ウイルスや細菌の感染によっておこる疾患によってできるがんは近いヒト同士で起こる点ではがんがうつっているのでは?と思ってしまいます。
犬の一部のがんやタスマニアデビルの顔にできる腫瘍、貝のがんがうつることが報告されています。
しかし、これらは同じ種の中で伝播するがんで、例は多くありません。

この論文とニュース記事では、二枚貝のがん細胞と二枚貝のあるゲノムを比べたとき、ゲノムの類似性はなかったものの、別種の二枚貝のゲノムとがん細胞のゲノムが似ていたそうです。
別種の二枚貝からがんが伝播したという結論です。
貝のがんが同じ地理的地域にいる別種の貝にうつるということは、種を超えてがんが伝播したという例が見つかったのです。


研究対象の二枚貝がどのくらい近縁の種なのかは調べてみないとわからないのですが、がん細胞は規格外すぎて驚かされます。
がん細胞はどんどん増殖していくと、いつかは宿主を死なせてしまいます(ヒーラ細胞のように培養されて生き残っている細胞もいるが)。
宿主がいないとがん細胞は生きていけないので、隣の個体や別の種に移れば、また増えられると考えた結果なのかもしれません。

ヒトのがん以外にも、この貝の研究のように動物のがんの研究もたくさんあります。
動物のがんの研究は、ヒトのがんに応用できる場合があります。
例えば、ネズミなのに長寿のハダカデバネズミがどうしてがんにならないのかは、デバさんの衝撃的なヴィジュアルからも興味深い研究です。

※ジャーナルクラブ・・・論文を読んで紹介する会のこと。大学生になると、研究室の配属の前から、論文を読んで解説する授業やゼミがあります。ほかの人が論文を紹介してくれると、論文を読まなくても理解できるので、皆でやるとたくさんの論文の情報を得られる会。


投稿者:事務局

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