東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

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平成28年度 活動ブログ

平成28年度 活動ブログ養成講座の活動を記録しています

2017.03.08

第十回講義を終えて

こんばんは。県立前橋高校の山田桂一です。

ようやく学年末考査や卒業式が終わり一息ついたので、遅ればせながら、10回講義について記事を書きました。講義を受けるのは今回が実質最後でした。佐貫智行先生による講義「次世代素粒子研究施設:リニアコライダー計画」と中山亨先生による講義「エンザイムハンター~暮らしの役に立つ酵素を発見し、利用する~」の二つでした。

佐貫先生の講義では素粒子について教えていただきました。一時期ヒッグス粒子や岩手に作る研究施設のことなどで盛り上がっていたためたびたび耳にしたことがあり、また小学生時代に宇宙開発に興味を持っていたりしたため多少は知っている分野ではありました。しかし、漠然と知識があるだけで深い理解をできていなかった分野でもあったので、大変興味深い講義でした。

素粒子というと、原子よりも小さい粒子ということくらいは知っていましたが、これを研究することで宇宙開発にどのような恩恵をもたらすのか見当もついていませんでした。それだけに、加速器で電子と反電子をぶつけることで宇宙の起源を疑似的に再現できることを知ったことは大きな驚きでした。望遠鏡で観測できない時期の宇宙もこの方法によって解き明かすことができれば、暗黒物質や暗黒エネルギー、さらにはわたしたちのルーツなど多くの謎が解けるかもしれない、という内容には知的好奇心をくすぐられ、ロマンを感じました。

これらの謎の解明が人類にどのような恩恵をもたらすものなのか私には見当もつきません。しかし、科学とは必ずしも社会に還元されてしかるべきものではないのではないか、と最近の私は考えています。たとえば、ニホニウムの発見にしても何の役に立つのかさっぱりわかりません。しかし、これは大きな快挙足りうる大発見だと思います。なぜなら人類の知識の集積に大きく寄与するものだと思うからです。そのため、直接的に人類文明に利潤を生みだすようには見えないこのような研究も「科学」の一つの形なのではないかと思っています。しかし、研究のための費用は国や企業がスポンサーとして出してくれているものなので社会に貢献するのは科学者として当然のようにも思えます。今の私がいくらこのようなことを考えていても素晴らしい結論を出せるわけでもなく、むしろまったく無意味なことかもしれません。しかし、この講座を通して将来は科学者になりたいとより強く志すようになった今の私にとっては他愛のない思考も有益なものと感じています。

二つ目の中山先生の講義では酵素について教えていただきました。酵素については生物で履修したため、素粒子と比べるとはるかに理解のある分野でした。しかし、酵素というとつい消化やDNA合成ばかりが思いついてしまうため、花の色にも酵素が関わっていることは驚きでした。また、工学部で生物由来の酵素を利用した研究がおこなわれていることにも驚きました。講義に中には興味深い話が多く、これまで以上に酵素に興味を抱くきっかけになりました。私は植物に興味を抱いていたのですが、タンパク質の分野に進むのもおもしろそうだと思いました。

そして、講義の終盤の中山先生の研究内容の話については、失敗話も含んだ臨場感のある話であり、とても面白かったです。キンギョソウを200本用いても成果が出ず、2000本用いても成果が出ず、最終的には17000本も用いてようやく目的のものを発見できた、という途方もない話は、資金の関係やこなさなければならない作業の量など、研究活動の大変さを物語っていました。しかし、その研究途中でのユーモアのある裏話は非常に面白かったです。日頃研究活動とは無縁な生活を送っているので、中山先生の講義にあった研究の裏話をきくことや、研究発展コースに選抜していただいて活動できたことは非常に実りのある経験であったと心から感じています。今年の初めのころは科学者に控えめな憧れを抱いているだけでしたが、毎回の講義や受講生との交流などを通し、今ではとても強い科学者へのあこがれを抱くようになりました。今週末には発表会がありますね。早いことに、もう今年度最後の卵です。思えばこの一年、本当に充実した学習をさせていただきました。最初に書いた「科学者の視点を持とう」のレポートと今の自分の考えを比較すると、気づかぬうちにずいぶんと変容して、固まってきていたようです。これも卵が温まって孵化に近づいている証拠でしょうか。文章力も、この講座に募集をしたころは父親に丁寧に添削をしてもらわなければならないほど拙いものでしたが、今では飛躍的な向上を遂げたように思います。少しずつですが日常生活の中で科学的に考える癖もついてきました。第一回の講義で、昨年度の受講生の方々の発表を聞いて、渡辺先生の講義を聞いて、少し不安に感じていた私は、いつの間にか大きく変わっていたようです。一年間この講座に通い続けて築いた学びや視点は、きっと大きな資産としてこれからの私の人生に役に立っていくことだろうと期待しています。

投稿者:群馬県立前橋高等学校

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