こんにちは。仙台青陵中等教育学校4年只野佑之介です。
私たちの学校では先日雪が舞いましたが、皆さんはいかががお過ごしでしょうか?
さて、今回は、第五回講義の感想を書かせていただきたいと思います。
はじめに、福本敏先生による「哺乳類の進化における歯の重要性」の講義を受講しました。この講義では、乳歯・歯の組織の必要性や発生過程、再生医療への応用などについて学ばせていただきました。
まず乳歯についてですが、歯の生え変わりは動物の寿命をも左右するというお話に興味を抱きました。例を挙げると、歯が生え変わるゾウは平均80年ほど生き、歯が生え変わらないキリンは、30年ほどしか生きることができません(ゾウはヒトとは異なり、歯が5回ほど生え変わるようです)。両者の寿命は、実は歯の寿命と密接な関係があり、歯の寿命≒個体の寿命となっているそうです。なぜ乳歯があると寿命が延びるのかというと、乳歯を使っている間に、長い時間をかけて丈夫な永久歯を作ることができ、その永久歯が寿命の長さにつながるからです。小さいころにしか使わない乳歯の存在が、その後の長期間の生命の維持につながるという乳歯のメカニズムは、とても合理的だと思います。私はこれまで、乳歯が生え変わるのは単なる生理現象の一つだと思っていましたが、将来にわたって種を存続させるための重要な役割を担っていると知り、身体の仕組み一つ一つが、幾つもの代を重ねてきたそれぞれの種の祖先の進化の結晶であるのだと感じました。
また、よく噛んで食べることの重要性も教えていただきました。例えば、歯や口は脳の感覚野を占める割合が高いので、よく噛むことで脳に刺激が伝達され、脳が活性化されるそうです。さらに調べてみると、よく噛むと唾液の分泌量が増え、唾液に含まれる発がん性を抑える物質や消化酵素の影響で、がんの予防になったり胃腸の働きが促進されたりと、様々な効能があることが分かりました。
それから、歯が再生医療に活用できる可能性を持っていることにも驚きました。私たちの歯には、外側から順にエナメル質、象牙質、歯髄という組織があります。その歯髄の中には歯髄細胞が主に存在しているのですが、0.5~1.0%ほどの割合で、歯髄細胞に分化する前の「歯髄幹細胞」という体性幹細胞があるようです。この「歯髄幹細胞」は、歯と共通の発生過程を持つ毛や腺組織、肺・肝臓などの細胞に分化する能力があり、再生医療に応用できるとのことでした。さらに、抜けた後の乳歯からも「歯髄幹細胞」は採取することができ、だれも痛みを感じることなく、1本の歯から1万人もの人々を救うことができるそうです。体性幹細胞は、分化能こそ限られているものの、ES細胞やiPS細胞に見られるような、倫理的問題・がん化のリスクがほとんどありません。ですから、今後研究が進み、新たに体性幹細胞を採取できる方法が見つかったり、採取が容易になったりしていくことで、リスクや負担の少ない再生医療が展開できるようになるのではなるのではないかと思います。
この講義では、歯がいかに大切で可能性を秘めているかを学ぶことができました。小さいころから「歯は大事にしなさい」と言われてきましたが、その科学的な裏付けを今回学ぶことができたと思います。歯を大切にすることの意義をもっと広く浸透させるべきだと感じました。
次に、中山亨先生による「エンザイムハンター~暮らしの役に立つ酵素を見つけ出し、利用する~」という講義を受講させていただき、基本的な酵素の働きから、普段とは異なる色の花を作り出す研究の内容まで、幅広く学ぶことができました。
酵素の働きに関しては、教科書にはない知識を教えていただき、理解を深めることができました。例えば、酵素の反応加速能力の具体的な数値や、たんぱく質の立体的な分子構造などです。酵素が化学反応の速度を106~1014倍加速することができると聞き、驚きました。また、酵素がたった一つ欠損しただけでも、けいれん、失明などの生命を脅かす重い症状が出てしまうと知り、生体内での酵素の働きの重要性を実感することができました。さらに、生体内で重要な役割を担う酵素が、生体外においても「それ自体比類のない触媒」として様々な反応に利用されているという特性を改めて認識し、酵素の奥深さに興味が増しました。酵素は、世界市場規模が5300億円に上るほど盛んに産業利用されているそうで、よく耳にするものの中では、洗剤、食品、医薬品、環境浄化、農業などの活用例があります。さらに詳しく学んで、酵素の活用の可能性を探っていきたいと感じました。
そして、先生の研究についても詳しく聴かせていただきました。私は花の色についてほとんど知識がありませんでしたが、化学物質との関連を知り、とても興味深かったです。特に、花の色の変化には規則性があり、修飾基(OH)がアントシアニジンのB環につくと、色が青みを増すという点に興味を惹かれました。
また、先生が研究で大変苦労なさったというお話も印象的でした。黄色い花を作るために、17000本ものキンギョソウを使って、オーロンを合成する酵素を手探り状態で抽出したり、失敗してもあきらめずに試行錯誤を続けた姿勢から、先生の研究への情熱をひしひしと感じました。その強い思いが、目標である黄色いアサガオ・ペチュニアの実現や、果物の褐変に関わる酵素「植物ポリフェノールオキシダーゼ」とオーロン合成酵素との関りの発見といった大きな成果につながったのではないかと思います。研究の道に進むには、大変な覚悟がいるのだなと学ぶことができました。
今回の講義を通して、生物が持つ力の大きさは、私が思うより遥かに大きいのだと実感しました。先生がおっしゃっていたように、生物の世界には知られていないことが無数にあり、学ぶべきことが沢山あります。生物たちの巧みな生存戦略から多くのことを学ばせてもらい、それらを使ってヒトの生活をより豊かにしていく研究に関わることができたらという思いが生まれました。
講義の後に、留学生の方々と交流するミニ講義がありました。私たちは二人の方と交流し、趣味や研究の内容、出身国の文化などについて情報交換をすることができました。二人とも明るく楽しく盛り上げて下さったので、こちらも気軽に話すことができました。これまでも外国の方と交流する機会がありましたが、研究など理系の分野について話すのは初めてで、貴重な経験となりました。今後も交流会が開催されるかもしれないとのことですので、英語のスピーキングスキルを向上させ、さらに有意義な時間にできるよう頑張りたいと思います。
先生方、留学生の方々、受講生の皆さん、本当にありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いします。
投稿者:仙台市立仙台青陵中等教育学校