東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

[最終発表] 講義を通しての総括と今後について(6125字)(農:八巻慶汰)

2019年1月25日 (金)


半年間続いたこの講義も、最終発表を迎えました。それではよろしくお願いします。
トップ画像は種子の時のミズナとブロッコリーです。

(1) 植物、作物の栽培を行って、最初に想像していたよりも、たいへんだったこと、逆に、以外とうまくいったなどの栽培面で感じたこと


 栽培を行ってきた上で大変だったことは3つあります。まず1つ目は、「徒長してしまったこと」です。レッドキャベツスプラウトについてはわざと日光を完全に遮断して徒長させるため問題はないのですが、ミズナとブロッコリーは私の生育環境の場合発芽してすぐに徒長してしまいました。原因は、主に日光条件の悪さであると考えられますが、なかなか鉢の移行場所も見つからず、そのまま土寄せをして植物体を倒れないようにして対策をすることにしました。これも一回土寄せしただけではダメで、成長に伴い葉数が増えるにつれ葉数が増えることで茎にかかる圧力が増すため倒れないようにブロッコリーは何度か株本を抑え込む土寄せを行いました。振り返ってみると、土寄せをするために鉢にはもっと余裕を持たせて土を入れれば良かったのではないかとなみなみになっている現在のブロッコリー鉢の土を見て思います。結果的に植物は枯れることなく生育してはおりますが、いまだに先輩のものよりも成長が遅いところを見ると、いかに日光条件光合成が植物の成長の根幹となっているかが実感できました。春休みは実家に二つの鉢を持ち帰り十分な日照時間を確保して収穫まで持っていきたいと考えています。(写真:徒長したブロッコリーの写真)
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2つ目は水加減です。振り返って見ると、最初は受け皿に100mLほどたまるほど水を多くあげすぎていて、またその後逆に土を乾燥させすぎてしまったことがあり、なかなか植物にあげる適切な水の量がつかめませんでした。多すぎると根の発達を阻害したり腐敗の原因にもなり、また少なすぎると枯れてしまうため、土の表面が乾いたら鉢底から水が少し出るまで与えるというペースが最適だというアドバイスを頂き、現在は2,3日に受け皿に水がたまらない程度に水をあげていますが、冬季と夏季ではまた蒸発量も植物の水の吸収量も異なってくると思うので水の調子を考えながら微調節が必要になってくると思います。(写真:過剰に乾いたブロッコリーの土)
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3つ目は上の二点と被る部分も多くありますが「植物は(意外と)手がかかる」ことです。受講前は植物は日光肥料(発芽時には水と温度と空気)だけあげればそれなりに育つだろうと思っていました。実際、それで育つことは間違いないのですが、その条件を「適切に」揃えることはなかなか容易ではないことを栽培を通じて痛感しました。植物は動物と違って基本的に動くことや音を発することはありません。そのためすべて観察によって健康状態を把握し対処していく必要があり、見ていないところで倒れたり萎れたりしてしまうというところが想像よりずっと大変でした。
 うまくいったところは、「レッドキャベツスプラウトの栽培全体」「温室の製作」の2つです。まずレッドキャベツスプラウトについてですが、私は種をまず水に沈め、そのまま沈んだものと浮いたものに分けて生育を行いましたが、結果としては沈んだものが顕著に成長が良いといった結果が出て、また生育する上で特にトラブルなく進められることができました。スプラウトは日光を遮れば良いため生育はとても簡単なこともありますが、条件を変えた上で結果がはっきりと目に見える形で出たのにはとても驚きました。次に「温室の製作」ですが、最初に作ったものは脆弱で年末年始に壊れてしまい、大変だったこともあります。しかし失敗を省みてアドバイスや他の方々のものを参考に改良をした結果、しっかりと保温ができ、耐久力のある温室になったので全体としてはうまくいったのではないかと思っております。
(写真左:改良前のもの 写真右:改良後のもの)
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(2)他の講義への波及効果


 この講義では毎週の観察からそれを写真やデータとして記録し、考察・方針をを含めて発表するというサイクルを身をもって経験しましたが、これは理系必修の「自然科学総合実験」およびこれからの専門科目の学習に深くつながるところがあるのではないかと思います。自然科学総合実験では実験で観察を行い、発生した変化を記録に取りレポートにて報告をするという同じようなサイクルで成り立っており、とくに「結果を文章化させる」ことやその「結果から言える考察」を考える力はこの講義で多くを学び培いました。また細胞の観察などの実験では必ずスケッチに「スケール」が欠かせないということは植物と一緒に写真に必ず定規などの長さの分かるものを入れるということから学びました。今後光学・電子顕微鏡などの写真や実験の説明図を使う場面は多く出てくると思いますが、今後とも「スケール」を入れて見ている人がどのような大きさであるかという情報を得られるようにするよう気を付けていきたいと思います。
また「生命科学B」では現在主に遺伝分野を学んでおり、生物の個体の形質は遺伝・組み合わせによって様々なものが生まれることを学んでいます。この講義の初めに頂いた種からはほとんど同じ形状や色の植物が発芽し(休眠打破した事も要因に含まれるかもしれませんが)大体の個体の成長速度が同じという事が見受けられました。これはF1(First Filial Generation)種子の開発によって実現されたものと知り、渡辺先生の研究をはじめ遺伝・育種の学問・研究を応用することによりこのような不良環境下でも高い栽培性を持ち均質で良い品種が収穫できる種ができるのだということや、普段見えないところで研究が生かされていて、生活に欠かせないものになっていることを実感しました。私が育てていた日光条件が悪い環境でも栽培できているのはこの開発のおかげなのかもしれません。

(3) 毎日の観察をする上で、どの様なことが身についたのか、感じたことなど


 毎日の展開ゼミでは、最も感じられたのは継続することの重要性と難しさです。この講義は1週間に1記事のペースで投稿するようにされており、私の場合は昨年末までは毎週日曜日に定期的に投稿することができましたが、年始にペースを崩してしまい、間を開けての投稿となってしまいました。これは年末年始に気が緩んでしまい自分に甘えてしまった事が最たる原因だと反省しております。継続を滞りなく続けることは行っている行動に責任を持つと同時に意識を保つことだということを改めて学びました。また(2)とも繋がりますが、物事を細かい部分まで観察する眼も身についたことの一つです。いままでここまで長い期間一つの植物を種から現在にいたるまで細かく観察したことはありませんでした。まず種の形状から観察し、発芽したら子葉・成長していくにつれ葉の様子や根が張ったことなど、さまざまな変化に気づくことができたと思います。また生じた変化をただ単に「こういう変化がありました」だけではなく「なぜそういう変化が起きたのであろうか」「対処するにはどういった方策が考えられるか」を毎回だんだんと考えるようになりました。このプロセスは特に理系分野の研究を今後する上で必要不可欠なものになってくると思いますので、今回の経験を生かしていけたらよいと思います。
同時に、物事を試行錯誤・工夫するという過程もいろいろな場面で経験し、実践する力を徐々に学んで行きました。特にレッドキャベツスプラウトや温室の作成では、アドバイスや先輩の記事から得た知識を生かしてスポンジを削って種子の密度を高めたりトラス構造を用いた温室を作ったり様々な工夫を施すことができたかと思います。(やや工作面が多かった感じもありますが)

(4) 文章を書くという点で、ゼミ開始前とあとでどのような変化があったか


 ゼミ開始前の印象は、単に植物の写真を取ってネットワーク上のホームページにコメントを書いてアップロードする、「観察日記」のようなものだと漠然としたイメージを持っていましたが、ゼミ初回講義の後、先輩方の記事を見ていく、自分で記事を書いていくにつれこの形式はただの日記ではなくきっちりとしたレポートであるという事を理解しました。また自分は今まで長い文章を書くことがあまり得意ではなかったのですが、毎週長めの文章を投稿している坂谷さん鈴木さんの記事を読んだり、後半に行くにつれだんだんと、「前置きを自然に、文章の内容とまた違う文の内容につなげるにはどういう文章を楔に挟めばよいのか」「もっと今回の記録から伝わること・伝えるべきことはないか」「よりreader-friendlyな記事にするにはどうしたらよいか」という事を考えるようになり、少しずつではありますが文章量を増やして行く事ができたかと思います。またホームページ上のアセットを使用しての記事製作でしたが、その方面に関しては比較的苦手意識はなかったため、見やすい記事になるような見出し製作・文字の色や太さの変更・線の利用やURL挿入などの機能を使う事ができました。ここで意識していたこととしては、色(特に赤や濃い黄色やvividなもの)は使い過ぎないようにし、できるだけ研究室のホームページに合ったパステルカラー(オレンジや水色、黄緑色)を使用することに気を付けました。日程の見出し部分は【見出し3】を使用しています。またこの講義で書いた記事はすべてMSゴシック標準がメイリオに変換されるものだと思いますが、メモ帳に一旦ペーストすることにより書式を揃えることができ、書式の統一にも注意しました。振り返ると、レイアウトは考えていたが、「文章の配置」などは要点をまとめて箇条書きで示したり、さらにいろいろ改善すべき点もあったのではないかと思います。今後プレゼンなどで多岐にわたって見やすい文字・読みやすい文章・スライドの作成は必要になってくると思うので、今回得た知識も生かしていきたいです。


(5)客観的に物事を捉えて、自然科学的なものの見方を学ぶという点について、自分自身が習得できたと思う点、他の受講生と比較して、さらに、研鑽を積むことが大事と思う点

 客観的に物事を捉えるという面で習得できた点を考えると、これまで植物の成長に関してメーターを用いて~㎝といった数値で示して具体的な成長の度合いを示すということは実践できましたが、そのデータをまとめてグラフに示したり、定量的に分析することをより行って目に見える形にデータをまとめることができていなかったと感じています。データはただ取り示すだけでは意味がなく、連続的・経過的な変化をまとめることが観察実験では重要であるので、今後そのような場面ではグラフや表に示せるようにしていきたいと思います。自然科学的なものの見方を学ぶという点では、肥料の化学的分類(「アンモニア態窒素」と「硝酸態窒素」)や、ミズナの紫色の部分の組成(アントシアニン色素)などの栽培をする上で生じた疑問を調べてメカニズムを知ることで自然科学的な観点から物事を見る力がついたのではないかと思います。また、自分の野菜を比べるうえで最も模範となるのが「売っている野菜」だと思います。収穫の時期になったら、自分で育てたミズナやブロッコリーとスーパーで売っているミズナとブロッコリーはどこが違うのか、どこが優れていてどこが劣っているのか、またそれは生育段階のどのような違いが生じているのか、などを昨年度の直江さんがやっていたように野菜の特徴・味を比べてみて、家庭菜園と農業の相違点などについて考えることでより研鑽を積むこともこの栽培の重要ポイントだと思います。

(6) コメントにどの程度、followできたのか、意味があったのか


 毎回頂いているオガタさんのコメントには、何回もお世話になりました。野菜の水加減からミズナがうどん粉病ではないということや、追肥の頻度土寄せの方法や間引きの時期、温室におけるトラス構造など、私が自分で気づけなかったことについてまた違った観点からもさまざまなアドバイス・コメントを頂いたおかげで栽培の軌道修正を測ることができ、無事に今までミズナ・ブロッコリーを生育させることができました。また、毎回挟んでいただいたエクソソーム、マイクロRNAを介した情報調節の話や「脱窒」についての話などの専門的な知識情報も、おもしろそうなものは自分で調べて次の回の記事の一部で示すことができたかと思います。
増子さんの記事には、ホームページの技術面で助けられました。写真を同時アップロードできるようになったのは、とても便利で有難かったです。
渡辺先生のコメントには、レッドキャベツスプラウトの生育の際の種子密度について学び、記事からは緊張感を最後まで持ちながらこの講義に望むことができました。
またこの講義の最大の魅力であるのが、他の受講生の方々の双方向の講義も閲覧することができる事です。他の方に充てられたコメントからも様々な事を学ばせていただきました。また「これでいいのだろうか」と不安に行った試行錯誤にコメントが頂けることで、しながら野菜の栽培を行うことができたというのが個人的に双方向の講義の最大のアドバンテージだったと思います。

(7) 中間発表で目指した点がどれだけ達成できたのか


 中間発表で示した注意点および目標は以下の5つです
注意点
・投稿ペースをこのまま継続させること
・冬に備えブロッコリーとミズナの成長を妨げないような栽培(具体的には水加減や日光条件、保温など)をすること
・詳細な観察を行い、対応した写真をupすること
目標
良い記事を作成することと野菜を最後まで育て、収穫しておいしく味わうこと

positiveな面で見ると、2つ目の注意点はロッコリーとミズナの保温を目的に製作を行った温室は完成させることができ、達成できたと思います。また3つ目の注意点は中間発表後は主に葉の大きさに着目して詳細な観察が以前よりはできたかとは思いますがまだまだ写真のポイントとなる部分を〇で加工してからアップロードしたりなど、改善の余地は見受けられます
negativeな面で見ると、1つ目の注意点に関しては(3)と同様、年始の投稿ペースが乱れてしまったため、注意点はおろそかでした。年末に意識が少し緩んでしまったためと反省しています。またこの最終発表も期日での投稿となってしまったため、自分のスケジュール管理を今一度見直して計画性を持つことを心がけたいと思います。
目標については、後半に行くにつれ、少しづつではありますが長い文章・内容の濃いものにクオリティアップできていたのではないかと思います。収穫まではまだまだありますが、このまま水加減・追肥に気を付けながら栽培し、実食した報告もできればよいなと考えております。

(8)以上の(1)~(8)を踏まえて、この展開ゼミで学んだことを、大学での活動を含めた日々の生活に対して、どの様に活かすことができるか。さらには、まだ、収穫していない作物を今後、どの様に管理したいか


 この展開ゼミで学んだことは多くありますが、日々の生活に対しては、特に物事を観察してどのような変化が起きているかどのような問題点が存在しているか、またそれをどう解決するかを考え、実行する力は学び・研究だけでなく今後行うあらゆる仕事に活かしていきたいと思います。特に「なぜ」といった原因は常に事象の裏側に潜んでいるため、原因を考える力は常に役に立っていくと思います。また、最終発表を書くうえでひしひしと感じられた「長い文章を書く力」も、今後の論文制作や報告書制作では比にならないほどこれ以上の長い文章を書くことになると思うので、記録・考えを文章化させる力も活かすことができると思います。同時に、毎回の記事を書く中で意識していたreader-friendlyな記事、つまり受け取り手の事を考えた記事を作成するという力も、インターネットテキストが主流となった現代社会では今後より重要性を増してくると思うので、今後も意識して、読みやすい工夫を生かしたテキストづくりをしていきたいと思います。
収穫していない作物は、今後春休みに入るため、実家の良い日照条件の元に持って行って、収穫までこぎつけられるように管理していきたいと考えております。
(文字数合計:6125文字)
これで最終発表を終わります。渡辺先生、オガタさんをはじめマスコさん、ラボスタッフの皆様や記事を見ていただいた方々、半年間ありがとうございました。
収穫ができれば報告もしたいと思います。

コメント

農学部・八巻さん

 おはようございます、遺伝の渡辺でございます。農学部の1, 2年生の時期には、比較的広い領域を学ぶと思います。その中でも、こうした実際の作物を栽培するのが、コースが決まってからと言うのを聞いたことがあります。意外と手間がかかるというのは、まさにその通りで、もちろん、農家の人たちは、適期に栽培をすること、また、慣れていることもあり、どこか、これというポイントを見ているのだと思います。専門として何をやるかというのもありますが、水加減で学んだ、よい「加減」というのは、何を行う上でも大事なことです。その当たりを他の活動にも活かして下さい。実験は、1年生でやるのですね。渡辺の頃は、2年になってからでした。レポートを書くのが大変だったのを思い出します。そうしたレポートを書くときの物差し、これがあるのとないのでは、評価はずいぶん変わるはずです。これからも写真を添えるとき、物差しと言うことを習慣にして下さい。

 遺伝学を応用したものが、F1種子になりますね。どうやってできるのか、その原理が分かったとき、実際に栽培しているものが揃っている、そのからくりに結びつけたのは、よいことです。農学は応用ばかりが見えるかもしれないですが、その基本原理を明らかにして、よりスムーズに応用に結びつけるという意味を理解して、基礎と応用を連動できるようになって下さい。最終発表に書いてあるように、この展開ゼミでの方法論は、理系の自然科学実験を行う上での基本形です。なぜ、このような形になるのか、このような生長をするのか、このような反応をするのかなど、基本的な質問を考えると、答えに窮するようなことがたくさんあると思います。そんなことを以下に、目に見えるものとして測定し、それを数字にして、それを制御している何かを見つけ出す。これからの学部、大学院、社会人での実験の基礎をなすものです。ここで学んだことをさらに発展させて下さい。

 reader-friendlyという言葉を、今年は使ってみましたが、その真意を理解して、文章の並べ方、写真の配置など、工夫したことは、将来、学会などで発表するポスター作りなどで活かされると思いますので。その基礎である、文章力をさらに磨いて下さい。農学部でも数字を比較的多く使う実験系とそうでないところがあります。ただ、基本的には、数字を扱い、さらには、統計的な処理をして、統計的に有意であることを示すことができるようになることを目指して下さい。こちらからのコメント、それも自分でなくて、他の受講生のものにも目を通し、自分と比較すると言うこと。これも大事なポイントを学習できていると思います。

 文章力については、最初のものから比べると、よくなっていると思います。それは、八巻さんに限ったことではないです。他の受講生の皆さんも同じようにです。書くことを続ける事で、文章力は磨かれます。この文章を書くという習慣を身につけたこと、これを大事にして、継続して下さい。もちろん、継続することの大変さは、この展開ゼミでも理解できていると思います。文章力は、継続していれば一定のレベルで維持されますが、書かなくなると、かけなくなると言う、デフレスパイラルになりますので、注意して下さい。最後に収穫して、食レポの投稿があるのを楽しみにしております。


 わたなべしるす