東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

『最終報告』 ~意義を考えること、無理なく続けること~(理:伊東功平)

2026年1月22日 (木)

CONTENTS

1.近況報告
2.野菜栽培においてうまくいったこと、いかなかったこと
3.植物の観察眼の波及効果
4.毎日の観察で感じたこと
5.文章を書くことの変化
6.自然科学的な見方、考え方
7.先生方のコメント
8.中間発表の目標は達成できたのか
9.この講義で学んだことを今後どのように活かすか

1.近況報告

 中間発表の時もそうでしたが、まだいいかと思っているうちに締め切りギリギリになってしまいました。せめて最後くらいは講義に関する写真を貼りたいと思っていたのですがそれは記事の中にいくつか貼るのでいいかと思い、結局景色の写真を貼ることにしました。これは飛行機からとった富士山の写真です。この日は天気があれる予報でしたが無事飛行機が飛び、写真を撮ることができました。

2.野菜栽培でうまくいったこと、いかなかったこと

・うまくいかなかったこと

 想像していたよりも大変だったのは野菜たちに十分なを与えることでした。はじめは家の中でゆっくり育てていましたが、オガタさんのコメントにもあったように家の中は人間にとって明るいだけで植物にとってはエネルギーとして全く不十分な光量でした。結果的にダイコンとキャベツは発芽当初から徒長してしまいました。

伸びきってしまったキャベツ
Day12 キャベツ.jpg

伸びきってしまったダイコンIMG_2523.JPG

 かといって私の場合はマンションのベランダに野菜たちを移すだけでは不十分でした。自身の記事「光を集めよう~日照環境改善~」で記したように、反射板を植木鉢のふちに入れ、植物の裏にも光が当たるようにしたり、反射板を立てかけたりして少しでも光を集めようとしましたが野菜の成長は芳しくありませんでした。植物に光が重要であることはもちろん重々知っていたのですが、それでも対応しきれなかった点がとても悔やまれます。

・うまくいったこと

 一方、うまくいったこととしてはキャベツの深植えです。前述した通りダイコンとキャベツは発芽してすぐ徒長してしまいました。ダイコンはその後枯らしてしまったため再スタートしたのですが、キャベツは何とか耐えてくれたのでそのまま深植えし、しっかり固定し、今も特に問題なくゆっくりではありますが栽培し続けられています。決してたくましく育っているわけではありませんが、枯らすことなく育てられたことは意外にもうまくいったことでした。大須賀さんの記事でも植物が少し間延びしてしまった際に土寄せをしているものがありましたが、そちらもうまくいったそうなので深植えや土寄せは些細な処置ではありますがとても効果的な手段かもしれないなとと感じました。

深植え直後のキャベツIMG_2422.JPG

今も安定しているキャベツIMG_3206.jpg

3.植物の観察眼の波及効果

・生物学の授業で... 

 観察眼といえるかどうか怪しいのですが、今回の講義の観察で一番大変だったことの1つは何か視覚的な情報を定量的な形で記録するということでした。視覚的な情報も大事ですが、「科学的」に観察したことを正確に伝える、共有するためにはやはり数字として残す必要があるのだなと感じました。このような考えは特に生物学関連の授業で活かされることがありました。例えば、理学部生物学科には1年時から教授らから直接研究の話を聞くことができる「分子・細胞生物学特選科目」という講義があります。生物学はどうやって定量的な研究をするのかが肝であると思うのですが、研究の話を聞きながらどんな定量的な実験を計画したのかとか、そこにはどんな難しさがあるのかなど思いをはせることができました。少しばかり、以前より話に聞き入れるようになったような気がします。

・自由な観察

 ほかには「自然科学総合実験」という授業にも効果があったのではないかなと思います。この学問論演習の講義のポイントは自分で何を観察するのか自由に決められることだと思います。自身も地面から成長点までの長さ、葉の表面のトライコームの有無、葉面積など自由に観察してきました。自然科学総合実験ではあらかじめ用意された実験で何を観察するのかは大方指定されています。それでも、細胞の観察の実験では細胞ごとの核の大きさの違いだとか、ひし形の細胞の数など観察するよう指定されていたこと以外を実験の片手間に観察していました。気になることを無意識に観察できるようになったのもこの講義で養った観察眼の効果だと思います。

4.毎日の観察で気づいたこと

・数種類を育てること 

 朝起きて時間があったらまず観察して、寝坊して観察できそうになかったら帰ってきてから観察して、寝坊+サークル+バイトなどが重なったら深夜ギリギリに観察してなどなんだかんだ定期的に観察できていたと思います。私は頂いた鉢に加え、新たに2つの鉢と土を追加してダイコン、キャベツ、ホウレンソウを計4つの鉢で栽培していました。今考えると多くに手を出しすぎてしまったなと感じていますが日々観察することや気づくことが増えたので、特に日照不足のため野菜の変化があまりなかった私にとってはむしろ良かったなと感じています。はじめはいろいろ育ててみて記事にするものは絞っていくような形がいいような気がします。

・観察態度の変化

 またこれまでの日々の観察を通じて、野菜の成長が鈍いときは自分から野菜にアプローチしてその応答を観察することが大事だと感じました。初めの記事では種まきして、芽が出て、間引きしてなど植物の変化が速く、大きく観察することもいろいろあると思います。そして、何を観察しようかと決めなくても自然と観察することは出てくると思います。一方、後半になると気温も下がり植物の変化も遅く、小さくなっていきました。この時から受動的な観察から、能動的な観察に変わりました。具体的には反射板を作り葉面積を測るという行動をとりました。結果としては反射板の効果があったとかどうかわかりませんでしたが中身のある有意義な観察になったと感じました。このように植物の変化が鈍くなった時こそ何か行動をとって焦点を当てた観察ができるとよいのではと感じます。

5.文章を書くことの変化

・気にしないことと気にすること

 文章を書くことが好きだという人はどのくらいいるのでしょうか。私は文章を書くことは好きでも得意でもありません。読書感想文とかはいつも後回しにするタイプでした。講義を受ける前は毎週文章を書き続けられるのだろうか、読みやすい文章を書けるのだろうかと不安でした。しかし本講義では、自由に好きなだけ文章を書くことを約10回ほど継続してきました。この経験を経てから、今ではレポートの○○文字以上などがあってもとりあえず書いてみれば字数が足りないと感じることは少なくなりました。そうです、字数を気にすることが少なくなったのです。さらにパソコン初心者にとってはよいタイピング練習にもなったと思います。
 
 一方、今では他人が読んだらどう感じるのか、伝わるのかなどをこまめに気にするようになりました。例えば、ここには具体例を入れたほうが分かりやすいだろうとか、題名にせめてキーワード入れないと読者は何の記事なのかいちいち記事を開かなくてはいけないから面倒だろうななどと考えることができるようになりました。つい、記事を作成している側にとっては当たり前だと思い込んでいることでも読者にとっては障壁になっている場合があるということを気にするようになりました。ちなみに、最終報告は文字数が多いので段落の中でさらに段落分けをすることにしました。少しは読みやすくなったかな。

6.自然科学的な見方、考え方

・観察方法の計画と観察結果の解釈

 この段落ではダイコンの葉面積測定について触れたいと思います。まず観察方法の計画について。私はダイコンの葉が楕円形に似ていることからその形に近似して計算し、データをとっていました。しかし、記録の最後のほうではとても楕円形とは言えない葉の形がでてきたり、切れ込みが複数入った葉も同様に計算していました。これらの葉を楕円形に近似してしまうのはよくないとわかっていたのですがそのまま計算していました。今思えばそこで葉面積の計測方法を修正するのも1つの手だったのかなとも思います。しかし、計測方法を観察途中で変えていいものかとも思っていました。こうならないためにも観察方法は入念に練ってから観察に取り込むことが大事だと感じました。
 
 一方、私はこの観察の結論として反射板の効果があるのかはわからないとしました。オガタさんのコメントにもありましたが結果を素直にとらえることが重要であると学ぶことができました。こういう時はわからないということが分かったとポジティブに考えられることが重要だなと感じました。もちろん当初は反射板の影響を受けたダイコンの株だけの葉面積が優位に大きくなるというデータが得られると見越していたので少し残念な気持ちもあるのですが...

 このように、観察計画を十分に練ること、結果を思い込みで解釈しないことが自然科学的な見方や考え方には必要だと思いました。

 また、岡崎さんの記事ではAIを利用して野菜に付着していた虫を分析しようとしていました。このようなAIの活用は見習うべきことだなと思いました。例えば、私のように葉面積を計測しようとした過去の事例はあるのかとか、ホウレンソウのしおれの状態についての記事をまとめたものはあるかなど情報収集のためにAIを使えば大幅に時間を削減でき、観察計画はさらに練ることができ、効率的だなと思いました。このようにAIを有効活用することも自然科学には必要なことなのかもしれないと感じました。

7.先生方のコメント

 野菜栽培が初めての自分にとってはオガタさんからのコメントは非常にありがたくためになるものでした。特にその生徒がどの学部であるかによって同じ内容でも若干焦点を変えたコメントをしているのを見て驚きました。野菜栽培のプロはあらゆる学問を網羅しているものなのでしょうか。本当にお世話になりました。何か失敗した点があったらすぐに指摘していただけたため、次の記事までには軌道修正して何とか今も野菜を栽培し続けられていると思います。もし、コメントがなかったらずっと部屋の中で育てては枯らしてを繰り返していたかもしれません。
 そして、このコメントの最大のポイントは自分の野菜栽培のためだけではないことです。もちろん自身の記事に対するコメントではあるのですが、今後同じような境遇になった受講生のためにもなるコメントだと思います。実際私も追肥の考え方とか水やりの考え方などは個別にコメントをもらう前から過去受講生に対するコメントを参考にしていました。こんな感じで私に対するオガタさんからのコメントもこれからの受講生の救いになることを願っています。本当に感謝です。

8.中間発表の目標は達成できたのか

・意義を考えて栽培すること

 中間発表で掲げた目標に一つは「一般論に加えて自身が栽培する野菜、その環境、状況に向き合ってなにをするべきなのか考えて栽培すること」でした。この目標を達成できたと感じられたのは自身の「追肥するぞ!~キャベツを例に~」の回でした。一般的な追肥のやり方や量は種が入った袋に記載してあるので、普通はそれを参考にして追肥すると思います。しかし袋に書いてあるのは一般的な広々とした畑を想定した話であり、私の栽培している植木鉢のような閉鎖的な空間での話ではありませんでした。そこで追肥の根本的な考え方を調べ、量や配置にどういう理由があるのかなどを調べました。そして私が育てるキャベツの場合にはどうするのが最適なのか考えて追肥しました。オガタさんから、結果として追肥は成功しているとのコメントをいただいたときはとても嬉しかったです。このようにして追肥の意味や仕組みを理解して柔軟に対応できたことは非常に良かったと思います。

・(約)1週間をどう過ごすか

 この講義は(約)1週間に1つの記事をアップロードするように計画されていたと思います。中間報告の少し前から次第に忙しくなり、簡単に外観を観察し、水やりと温度や湿度の計測をして1日を終えてしまうことが多かったことを覚えています。そして1,2週間経っても何を記事にしようか悩んでしまうことがありました。この状況を打破するべく掲げた目標が「気づいたことに対してどう考えて何をしたのかを記事にすること、なんとなくの観察で終わらないこと」でした。この目標はダイコンの葉面積の計測の観察を通して達成できたと思います。当初は反射板を設置したあと次第に大きくなる様子を写真で報告しようとしていました。しかし、ここで単なる外観の観察から葉面積の計測というより具体的な行動をとれたことがとても重要だったと思います。日々葉面積を計測するのは大変でしたがとても有意義な約2週間の観察だったと思います。

・読みやすい記事を書く

 講義全体の目標でもあった読者が読みやすい記事を書くために意識したことをはなしたいと思います。私は、1つの記事で取り上げる野菜を1,2種に限定することが重要だったのではと思います。私も最初のほうの記事では全種の野菜について書こうと思っていたのですが、次第に成長の差が出てきて書きたいテーマが野菜によって異なるようになりました。それをすべて記事にしてしまうと内容が混み入ってしまい理解しにくい気がします。そこで記事にする野菜やテーマを絞ることで簡潔で、テーマが明確な読みやすい記事をかけたと思います。岡崎さんの記事でもジャスさんカブリーニさんに焦点を当てた記事を投稿されているものがありました。是非参考にしたいと思います。

・育てた後は食べること

 最後に一番最初の記事で掲げた目標について振り返りたいと思います。その目標は栽培した野菜をおいしくいただくことでした。おいしく育てられているかどうかはさておき、まだ少しずつ野菜たちは大きくなっています。限界まで大きく育てて、最後の締めとしてしっかり実食し記事にまとめたいと思います。

9.この講義で学んだことをどう活かすか

・意義を考えること 

 私は野菜栽培者として初心者で、水やり、間引き、追肥など様々なことが初めての経験であり最初はうまくできるか心配でした。しかし、過去の記事やオガタさんのコメント、さらにはインターネット上の様々なサイトを参考にしてその意義を考え、理解することができました。こうして意義から考え直すことで行動に自信が持てると思います。これから大学で学ぶ内容はもちろんのこと、仕事や研究など社会でもこの考える力は自分の行動に自信を持つために重要だと思います。そして意義から考えて行動する力は新しいことに挑戦することにもつながると思います。この講義で培った意義を考える力を今後も頭の片隅に置いておきたいです。ただ、何でもかんでも理屈っぽく考えてしまうだけでは退屈な気がするのでたまには直観に頼ってみてもいいかもしれません。

・無理なく継続すること

 この講義で得られたものはやはり継続力です。日々の観察、記録は正直言ってとても大変でした。特に寒くなってからはベランダに出たくないので本当に大変でした。自分は気分屋なのでやりたいこと、気になることが右往左往するタイプなのですが不思議と観察は継続することができました。おそらく、投稿頻度がある程度自由なこと、必修であること、オガタさんのコメントや他の受講生の投稿、植物の興味深い生体などさまざまな理由で継続できたと思います。これからも継続が必要な場面は必ずあると思いますが、自分なりのペースで続けていけたらいいなと思います。  

 前の章でも書きましたが野菜はまだ大きくなっているのでもう少し育ててみようと思います。ただ、ホウレンソウはしおれたままでこのままでは完全にしぼんでなくなってしまいそうなので少し早めに食べてみるつもりです。(6463文字)


 こんなに長い文章を書いたのは久しぶりな気がします。同じような事を何度も書いているかもしれませんが最後までよんでくださりありがとうございます。次の記事でまた会いましょう。

コメント

伊東さんこんにちは

 ついに最終報告ですが、文章自体にもこれまでの集大成が現れているというか、大変リーダーフレンドリーな読み易い文章になっています。それはこの講義の大きな目標ですから上手く達成できてなによりです。

 植物栽培もまあまあだったのではないかと思います。育ちが良いとは言えず、目標とした大きさでの実食はかないませんでしたが、逆に枯らすこともなく成長させられました。こちらとしても結構驚きです。どちらかの方向へ行ってしまうのが普通なので、とてもゆっくりかつコンスタントに成長する、面白いものでした。まあ今後は趣味的に続けられる範囲で栽培を続けて下さい。

 最終報告では、この講義で得られたことについていくつか述べられています。特にコメントがつけられないほど優秀なまとめですね。「科学的なものの見方」、「定量化・客観化」、「仮説・実験・結果」、「変化からのフィードバック」本当にわずかな講義ではありますが、エッセンスを感じ取れたでしょうか。

 それは、伊東さんが継続して努力を続けられたこと、また柔軟かつ素直に思考できたことの報酬でもあります。例えば水やりについて、追肥について、光環境についてこちらのコメントを素直に受け取って頂いたこと、案外なかなかできることではありません。特に光環境では「自分の感覚と植物の必要性が違う」ことが理解しづらいもので、これまでの受講生でも苦労したものです。今回伊東さんの場面では非常にうまく受け取って頂いたので助かりました。

 さあこちらの側にとって、伊東さんの報告は今後に役に立ちます。反射板の設置方法なんかは独創的で、来年以降の受講生に示唆を与える上で参考になります。

 といったくらいで最終報告へのコメントも終わってしまいますが、一つだけ加えて言うと「生成AIの活用」についてです。正直こちらのような「昭和的人間」とって機械(パソコン)は本当に融通の利かないロボット的なもの(くっそフリーズしたりエラーしたり)にしか思えないのですが、これからの生成AIはなんだか凄そうです。生成AIの登場により「知識や検索の重要性」は過去のものとなり、いっそう必要になってくるのは「発想力」「計画力」になってきます。つまり、人間の「本質の力」が試されるんですね。これは若者にとって大きなチャンスになります。本質に優れていればスタートに着いたばかりの若者でも一気にトップへ行けます。しかしながら、面白いことに老人にも逆にチャンスが出てきます。つまり面倒な「プレゼンなどの手間暇」「機器やソフトの扱いの煩雑さ」から解放され、経験からの直感などが純粋に活かされてくるものだからです。

 まあ大変な時代になるものです。

 大変ついでに、生物学の分野に絞って言えば、最近大きなパラダイムシフトが起こっています。「従来考えられていたよりも大きな生態系(高空・海底・土壌など)」、「スモールRNAを介した膨大な量の情報交換(個体内・個体間)」、「主に植物において深層にまで至る微生物圏の存在と意義」なんかですね。これらはやっと研究が端緒についたばかりです。伊東さんを始めとした若者に、解明を託したいですね!

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 実にイメージ伝わるネーミング!

ラボスタッフ・オガタ