こんばんは。聖ウルスラ学院英智高校の小松優香です。今日は東北大学科学シンポジウム「ニュートリノ研究に夢をのせて」で三人の教授の講義を聞いてきました。主題は共通してニュートリノですが,どの講義もニュートリノの世界から膨らんでいくので,科学への興味の視野を広げることができました。その中でも今回は梶田隆章さんの講義についてお話しします。
最初は「神岡での研究の30年」という梶田隆章さんの講義でした。梶田さんは東京大学宇宙線研究所長を務めており,2015年にノーベル物理学賞を受賞されています。その当時,私は中学三年生でした。新聞の一面や,コラムで研究内容について読んだことはありましたが,そもそもニュートリノとはなんだろう,カミオカンデはどんな場所なんだろうとよく分かりませんでした。疑問に思っていたことを直接講義で聞くことができるとはとても喜ばしいことで,貴重な経験となりました。本題に移りますが,ニュートリノとはいったい何なのでしょう。今までは質量がない物質と考えられていました。それもそのはず,ニュートリノとは最も基本的な素粒子の一種で,電子から電荷と質量を除いたような粒子だからです。例えば,陽子は二つのアップクォーク,中性子は二つのダウンクォークがあって成り立っていますが,このクォークも最も基本的な素粒子です。ニュートリノは極小で地球などは簡単に突き抜けていきます。しかし,まれにぶつかることがあります。この性質があるから研究に用いることができるのです。では研究をすると言っても大きさの無いニュートリノをどうやって調べるのでしょう。これは先ほど書いた「ごくまれにぶつかる」性質をうまく利用しているのです。ニュートリノ自身は見えませんが,まれに原子核とぶつかります。ぶつかったときに別の粒子が出てきます。この粒子が出てきたことを通してニュートリノを研究することができます。
そもそもの梶田さんのニュートリノ研究の始まりは,原子核内の陽子が崩壊するという予言が発表され,陽子の崩壊を検出する実験を日本のカミオカンデ(今のスーパーカミオカンデ)で行ったことがきっかけでした。そのカミオカンデに超新星爆発によりニュートリノが届き,ニュートリノ天文学の幕が開きました。もしニュートリノが質量をもつとニュートリノはタイプを変えると仮説し,例えば3種類あるニュートリノのうちミューニュートリノとタウニュートリノの間で振動が起こるというものです。しかし,カミオカンデは小さいので観測できません。そこで1995年にスーパーカミオカンデの建設をしました。翌年からニュートリノの異常を調べはじめました。ニュートリノ反応は毎日10回くらい観測され,他の研究者たちと協力して分析を行いました。
そしてついに1998年にニュートリノ振動の発見から,ニュートリノに質量があることを導き出しました。これはただ単に発見したから素晴らしいということではなく,最も小さな素粒子や宇宙がどのように成り立っているのか,宇宙がどのように膨張するかなど,根本的な理論に繋がります。また,ニュートリノの質量は電子やクォークと比べ約100億倍も軽いのです。これもまた今後研究していくであろう素粒子や宇宙の謎の解明に役に立つのです。先生の研究を無駄にせず,私たちが活かして新しいことを発見していかなくてはなりません。
梶田さんは今後,超新星爆発の際のニュートリノを観測し,超新星爆発の歴史を調べたいのだそうです。そのためには今のスーパーカミオカンデでは能力不足だから改造して新たに研究を続けていくとおっしゃっていました。3人の先生方の共通したことは「好奇心が大事」ということでした。私たちも先生方のように常に好奇心を持ち,負けずに新しいものを発見していくべきだと思います。大学で自分の興味のある分野を研究するために,今は勉学に励みたいと思います。
投稿者:聖ウルスラ学院英智高等学校