私は悟った。実の情報が存在するならば、偽りの情報も存在する事を。よくある言葉として、「インターネットを使用する際必要とされるのが、メディアリテラシーである。」が挙げられる。このことは、インターネットに限らず日常生活にも当てはまると考えた。
私は先日、東北大学のGSC(グローバルサイエンスキャンパス)、飛翔型「科学者の卵 養成講座」に参加した。そこで私は航空機についての講義を受けた。私は「揚力の発生」についての話で「悟った」のである。
「飛行機が飛ぶ理由は」と聞かれた場合、大抵多くの人は「翼に揚力がはたらくため」と答えるであろう。しかし、なぜ揚力が発生するのかを正しく説明することが出来る人は僅かである。なぜなら誤った説が広まっているからである。私も誤った情報を信じていた。
なぜ飛行機は飛ぶのかという疑問を多くの解説書や教科書が間違って解説しているということが今回分かった。説明として、飛行機が動いている時、翼の上面を通る空気が翼の下面の空気より速く動く事で上面の気圧が下面より低くなり、揚力が発生する。このことに問題はない。問題はなぜ翼の上を通る空気だけ速く流れるのかということである。ここに、誤った説明が存在するのだ。よくある間違いとして、「等時間通過説」があるようだ。「飛行機の翼の断面を見ると、上側が凸型の形状をしている。空気が翼に当たると翼の上面と下面に分かれる。上下に分かれた空気は後部に同時に到着しなければならない。上面は凸型な為、平らな下面と比べると空気の移動距離が長い。その為、上面の空気が速く流れなければならない。よって上下に速度差が生じる。」というのが等時間通過説である。この誤った説が普及してしまい、NASAは公式に警告文を発表している。等時間通過説では説明が出来ないことがある。それは、背面飛行である。背面飛行は裏返しになって飛ぶ為、翼の凸型は下側になってしまうが、戦闘機や曲芸機は問題なく飛行している。この説の問題点は前提条件にある。空気が後端に必ず同時に到着するという仮定に根拠が存在しないのだ。では、なぜ揚力は発生するのか。それは、翼の周りを気流が循環しようとする力が関係している。飛行機が前進し始めると、空気は翼の上下に分けられる。翼の後縁は尖っている。翼の上下を通る気流を滑らかに合流させるようにする為である。分けられた空気が再び出会うとき下側の空気は回り込もうとする。しかし、空気は尖った角を回れない為、反時計回りの渦が発生し、後方にはがれて行く。渦が全く無い流れの中で渦が生じると同じ強さで反対方向に回転する渦が同時に発生する。その為、反時計回りの渦を打ち消すように時計回りの循環が発生する。この循環が上面を通る流れを加速させる。上面は、前方から来る風と同じ向きに気流が循環するので速くなる。しかし、下面では前方から来る風が気流の循環という抵抗によって遅くなる。よって速度差が生じ上面の気圧が低くなり機体が浮く。飛行機は翼端渦と呼ばれる、後方に向かい循環する気流のロープのようなものを残す。翼端渦が実際に出来ることによりこの理論は裏付けられている。なぜ、下側の空気が回り込もうとするのかは今回、私は分からなかった。しかし、今まで私が信じていた「等時間通過説」は偽りの真実であるということは明確になった。実際インターネットにアップされている風洞実験の映像を確認してみると、空気の流れは後端で同時に合流しないことが分かった。上面を流れる空気が先に到着していた。つまり等時間通過説は間違っていることが分かった。調べて見たところ、この誤った説は日本国内の飛行機の説明で8割も使用されているらしい。
流体力学は複雑で様々な考え方が存在するとことは分かる。しかし流石に、間違えすぎではないか。8割の説明が誤っているとしたら、誤った情報を提供したことになってしまう。教科書までも間違っているのなら何を信じれば良いのだろう。このGSCでの体験で私は「悟った」のである。偽りは何処にでも存在すると。信じるか信じないかはあなた次第だと。
今回の件から言えることが一つ有ると思う。風洞実験の映像を見ると等時間通過説の間違いは誰の目から見ても明らかだ。つまり、実験を行えば誤った理論は生まれずに済んだと考えられる。研究者は実証という過程を省いてしまったようだ。ここから導き出せることは、「自分で物事を確認せよ」ということだ。
IT革命により私たちの情報量は飛躍的に向上した。その結果、現代社会では「メディアリテラシー」という能力がより一層必要とされている。溢れかえる情報の中、この情報は正しいのか、この情報を信用するのかといった、情報の取捨選択を各自で行わなければならないと言われている。
今回の件を通して私は考えた。私たちが情報をインプットする際、メディアリテラシーを利用し、自分自身で確認するというプロセスを踏むべきだと。例えば、教科書に書いてある内容であるので間違いは無い、と決めつけるのでは無く、自分で試せる事は行ってみるという姿勢が大切だと考えた。自分で考える、行動を起こす、今に始まった事では無いはずだ。数多くある情報の中で正しいものを摑みたい。
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 1年内田舜也
投稿者:横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校