東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

2015年7月の記事です。

2015年度 雲南調査備忘録(2) 「大根おろしは日本独特」

2015年7月16日 (木)

 今回の調査旅行では、日本からステンレスの大根おろし器を持参し、それを見せながら「おろして食べる」文化が有るか聞き取り調査を行った。昆明から元陽に移動し、食堂のおばさんや市場のおじさん、ハニ族とイー族の農夫にインタビューを行った。その結果、ダイコンをおろして生で食べることはないということであった。ただし、陶器のおろし器があり、ジャガイモをすりおろして料理に使うことはあるという話もあった。また、麗江や大理ではワサビをすりおろして豆腐を食べるときなどの薬味として利用するという話もあった。

(鳥山欽哉・佐藤雅志)

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2015年度 雲南調査備忘録(1) 「アブラナ科作物として注目され始めたマカ」

2015年7月16日 (木)

雲南農業科学院の副所長He Jiangming 教授から、雲南地域で、南米原産の生薬として有名なマカが栽培されていることが紹介された。マカの学名を調べたところLepidium meyeniiであり、アブラナ科の植物である。Lepidium属の野菜として、ランドクレス(ガーデンクレス, コショウソウ; L. sativum)があり、日本ではスプラウトとして利用されている。マカがランドクレスと同じ仲間と知らなかったので、驚いた。


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He教授によれば、雲南におけるマカの栽培面積は大根の約半分とかなりの広い面積で栽培されているということであった。麗江や中甸など、標高が2,400mから3,300mの高地で栽培されているそうである。マカの根を乾燥したものが昆明市内では500 gあたり360元で販売されていた。乾燥品の大きさは3cmほどであるが、形は聖護院ダイコン(カブ型の根)にそっくりであった。(鳥山欽哉・佐藤雅志)


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雲南農業大学と雲南農業科学院との研究交流

2015年7月16日 (木)

雲南農業大学・農業生物多様性応用技術国家工程研究中心の主任であるLi Cheng-yun教授を頼って、630日に雲南農業大学訪問した。

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Li教授はイネの専門家であるが、アブラナ科植物の研究者として、雲南農業大学・園芸学部のYue Yanling教授と雲南農業科学院の副所長He Jiangming 教授を紹介していただいた。

雲南農業大学・園芸学部の講義室で9時から開かれたセミナーでは、鳥山がイネとアブラナ科植物に関する研究成果、アブラナ科植物に関する本海外学術調査に関わるミッションを紹介した。seminar1.jpgさらに、日本における研究例として、日本の古典に見るダイコンの育種の歴史について紹介した。桜島大根と守口大根をとりあげ、守口大根の長さが100年で30 cm伸びたことを紹介した。品種改良と栽培技術の進歩の歴史を知ることができるような文献/図譜が中国にないかの問いかけを行った。続いて、雲南農業大学のYue Yanling教授が「ハクサイにおける核遺伝子型雄性不稔性に関する研究」を、雲南農業科学院のHe Jiangming教授が「雲南農業科学院園芸作物研究所におけるアブラナ科野菜の育種状況」と題して、日本のオグラ型細胞質雄性不稔性の利用や、根こぶ病抵抗性に関する成果を発表した。seminar.jpgセミナーは14名ほどの参加者があり、12時まで活発に意見交換が行われた。アブラナ科植物に関する本科研費のプロジェクトに協力してもらえるという快諾を得ることができ、今後も交流を続けることとした。

(鳥山欽哉・佐藤雅志)

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2015年度海外調査 雲南調査②(2015.06.28)

2015年7月14日 (火)

628日(日)昆明:曇り 元陽:晴れ

600起床。日本との時差は1時間だが、日の出はかなり遅い。700朝食。米粉を使った麺「米線」をいただく。


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805ホテルを出て元陽へ向かう。途中の個旧の手前まで高速道路が伸びており、左右にカルスト地形を眺めながら9時過ぎには石林を通過、10時過ぎにはブドウ畑の拡がる弥勒県に入った。赤い土と緑の畑が続き、所々に見える高々とした白銀の枝葉はユーカリとのこと。葉からオイルを採取し、日本にも輸出しているのだそうである。いま日本で人気のユーカリ・アロマオイルがそれであろう。11時頃開元の街に入ったところで、警察のパスポート・チェックを受ける。のんびりと車窓の風景を眺めていたのだったが、国境地帯であることを思い知らされた。高速は開元までで、この先は一般道となる。イスラム教の信者が多い沙甸を過ぎ、ちょうど12時頃に個旧に到着して、清真(ムスリムの)レストランで昼食をとった。レストランでは数種類のアブラナ科の野菜が食材として提供されていたこともあり、佐藤先生は日本から持参された「べったら漬」や「切り干し大根」を店主にみてもらい、こうした加工食はないかと聞き取り調査をされていた。「べったら漬」は初めてだったようで、味はどうなのかなど、逆にあれこれ質問をされていたようである。またおろし金を使って、生の大根をすりおろす料理法はないかとの質問には、これも見たことがないとのことであった。

 13時、個旧の街を出発して元陽へ向かう。道中棚田の風景が見えてきたところで、いちど車を止めて写真を撮らせてもらった。段々に連なる耕地をよくよく見てみると、一番下は蓮池、中段部分は水田、山頂に近いところはバナナの畑になっていた。佐藤先生のお話では、昔は水田の棚田であったものが、経済効率のよい果樹や野菜などの畑に次々と変わってきており、このため平水面を必要とする棚田が急速に消失しているとのこと。


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1345トイレ休憩。道端に果物を販売する露店が並ぶ。モンキーバナナ2ふさ(約1キロ)7元(170円)、手のひら大のマンゴー1個1元(25円)、蘭州在住の田さんが驚くほどの安値で、しかも品が良い。道中のおやつに、少し買い入れた。車は、昼食をとった個旧から山間の登り下りを繰り返しており、棚田を撮影した場所は涼しいくらいだったが、露店が並ぶ場所は立っているだけで頭から汗が噴き出す蒸し暑さであった。この高低差と多様な気候こそが雲南独特の風土なのだと実感する。

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1515元陽到着。世界遺産区域に入る際、1180元(約4000円)の入場料を事務所に支払う。事務所から、入り口の箐口村までは車で15分ほどである。民族衣装を着た女の人たちが巷街のあちこちで洗い物やら染色やらの手作業をしていた。放し飼いのニワトリの親子がわらわらと足元を駆けまわる中、ひよこを踏まないよう用心しながら村をぬけ、棚田の拡がる山谷へと足を進めた。

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 途中、農作業中の方に話を聞くことができた。写真の家屋は農作業用の仮小屋で、夜は泥棒除けのために番犬と一緒に泊まりこむこともあるらしい。作業小屋のまわりには、サトイモ・トウガラシ・ナス・ダイコン・トウモロコシ・大豆等の野菜畑もあり、地味の豊かさが感じられた。水田では主に在来の赤米を作っているとのことで、収穫量は決して多くはないが、土地に合った種であり、代々作り続けているそうである。畦にはドクダミやウツボグサ、ヨモギ・コブナグサなど、日本でもなじみの深い野草が見られた。

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山道を歩きながら足元をみると、畦脇の所々に1メートル大ほどの水溜りがある。水牛の水飲み場らしく、おおきな蹄の跡が無数に残されていた。山間部での農作業で機械も入れられず、よって昔ながらの水牛耕作が続けられているのである。この先で出会った水牛は、やはり大きく、立派な角を重そうにしながら、もさりもさりと草を食んでいた。


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 棚田の途中には湧水があり、棚田大のため池が作られて、そこから各水田に水が引かれている。ため池ではカモやガンが飼われていて、糞などは有機肥料としてそのまま下の稲田に流れ込む仕組みであるらしい。このほか水碓小屋や水磨小屋なども見学した。

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箐口村に戻り民俗博物館の中の農具等の展示をみた後、日没まで少し時間があるということで、棚田全体が見渡せる唄達という所に行くことにした。箐口村から車で15分ほどと近く、二か所の展望台も作られている。天気もよく、夕日を受けて青々と影を伸ばす棚田を遠くまで望むことができた。下から上まで何段くらいあるのだろう?ということになり、鳥山先生が数えておられたが、200段は下らないだろうとのことであった。この地域の棚田は、治水の役割も果たしているため、年中水を張っておかなければならず、いったんその手が止まれば三年とたたずに田は土砂で埋まる。この風景が人の手で代々作られ続け、維持され続けて千年余、と考えると気の遠くなるような眺めである。

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 山に陽が落ちると急に気温が下がりはじめた。1945に唄達を出て、元陽旧市街にある宿泊先の雲梯大酒店に到着したのは20時半であった。ホテルのレストランで遅めの夕食をとって解散。




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2015年度海外調査 雲南調査①(2015.06.27)

2015年7月13日 (月)

201562771日 雲南調査記①

627日(土)昆明:晴れ

 東京羽田空港から上海紅橋空港を経て、18時すぎに昆明空港に到着した。空港は3年前に現在の地に移されたのだそうで、広々とした立派な新空港となっていた。昆明は標高が1700mほどあり、外気はかなり涼しく感じられた。ガイドの馬さん・田さんと合流し、1850頃に空港を出て、宿泊先の昆明駅近くの雲南錦華国際酒店へ向かう。渋滞があれば4050分はかかるということであったが、幸い30分程度でホテルに到着した。

夕食はホテル近くの四川料理店で、客はまず冷蔵庫の中の食材をみてから料理を注文する。この注文形式は雲南の旅先で利用した各レストランでも同じであった。

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 夕食のあと、飲料水を買うため、お茶や雑貨を扱う超市に立ち寄った。茶葉卸を本業とする店舗で、雲南名産の各種プーアール茶や漢方薬等も販売されていた。なかでも鳥山先生・佐藤先生が注目されたのが「瑪卡」。蕪を干したようなその形を怪しんでいたところ、聞けば日本でも強壮剤として有名なマカで、アブラナ科の植物であるとのこと。マカは南米が原産で高地栽培されることから、中国では栽培環境の似た雲南で生産が行われているそうである。このほか高血圧に効果のある「天馬」や腎臓に良い「石斛」、止血効果の高い「三七」といった漢方薬が並んでいた。

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 ホテルに戻った21時頃、まだ外は薄明るかった。

                                                     >>> 続く








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