平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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植物新種誕生原理植物新種誕生原理

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研究経過

集団ゲノミクスに関する総説を出版(土松班)

November 26, 2018 3:23 PM

Category:研究成果

main:土松班

日本発生生物学会の英文誌 Development, Growth & Differentiation 誌の「発生・生態・進化」特集号において,植物の集団ゲノミクスに関する総説を出版しました.集団ゲノミクスは,種内の多数の個体のゲノム情報に基づいて,過去の適応や種分化の歴史を推定したり,ゲノムワイド関連解析(GWAS)等を用いて自然変異の原因遺伝子を特定したりするアプローチです.総説では,最近とくに研究が進んでいるシロイヌナズナやその近縁種,イネやトウモロコシ,タルウマゴヤシの研究例をまとめています.また,Glossary Box や図を用いて研究手法に関する解説も行っており,集団ゲノミクスに馴染みのない方にも分かりやすい総説になるよう心がけました.


<発表論文> Bamba, M., Kawaguchi, Y. W., and Tsuchimatsu, T. Plant adaptation and speciation studied by population genomic approaches. Development, Growth & Differentiation. 25 Nov 2018 https://doi.org/10.1111/dgd.12578


dgd12578-toc-0001-m (1).jpg

<図> 総説の中でおもに紹介している植物.(a) ポプラ (b-d) ミヤコグサ (e) シロイヌナズナ (f) ハクサンハタザオ

RNA-seqによるコムギUゲノム野生種Aegilops umbellulataのゲノム網羅的多型データの取得(宅見班)

November 10, 2018 6:19 PM

Category:研究成果

main:宅見班

宅見班では、コムギ近縁2倍体Aegilops umbellulata (UU genome) 12系統の幼苗のRNA-seqデータから得たゲノム網羅的多型情報についての研究成果をBMC Plant Biologyに報告しました。

Aegilops umbellulataはマカロニコムギ(AABB genome)と交雑することで合成異質6倍体を作出できますが、両者の組み合わせの半分ほどで雑種生育異常が起こることがわかっています。この生殖隔離の原因遺伝子をAe. umbellulataから単離することで、その遺伝的多様性をコムギ育種に利用できる道が開けると考えられます。今回、幼苗葉のRNA-seq解析を行い、12系統間で一塩基多型等のゲノム網羅的な多型情報を得ました。Ae. umbellulataの参照ゲノムはありませんので、これらの多型情報をタルホコムギやオオムギの参照ゲノム配列に位置付けました。これにより、in silicoでAe. umbellulataのゲノム解析が可能となります。これまでの我々のタルホコムギでのRNA-seqデータに基づく多型情報と比較すると、Ae. umbellulataでは種内の明瞭な分化が認められず、系統特異的な一塩基多型が多く認められ、タルホコムギとは異なる種内変異のパターンを示すことがわかりました。

発表論文:M. Okada, K. Yoshida R. Nishijima, A. Michikawa, Y. Motoi, K. Sato and S. Takumi (2018) RNA-seq analysis reveals considerable genetic diversity and provides genetic markers saturating all chromosomes in the diploid wild wheat relative Aegilops umbellulata. BMC Plant Biology 18: 271.

(リンク先:https://bmcplantbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12870-018-1498-8

【プレスリリース】ゲノム倍数化が進化の可能性を高める(瀬々・清水グループ)

October 13, 2018 1:08 AM

Category:新聞発表・メディア報道, 研究成果

main:瀬々班

横浜市立大学 木原生物学研究所の清水健太郎客員教授のグループは、産業技術総合研究所の瀬々潤主任研究員ならびに筑波大学、金沢大学、チューリッヒ大学などとの共同研究で、複数の異なる染色体セット(ゲノム)を持つ異質倍数体種のゲノム変異を同定する新規解析技術の開発に成功しました。この技術を利用した解析により、ゲノム倍数化が進化の可能性を広げるという、故 大野乾博士らによる50年来の理論的な予測を支持する結果を得ました。

 


 

セイヨウアブラナやコムギなどの主要な作物は、似て非なる複数の種由来のゲノムが組み合わさって、遺伝子数が二倍以上に増えた倍数体種ですが、増加した遺伝子同士の配列が非常に類似しているため、それらを区別して個体間の変異を解析することが困難でした。

 

今回の技術開発では、モデル倍数体植物である四倍体のミヤマハタザオ(学名:Arabidopsis kamchatica)を用い、どちらの親由来の配列であるのかを特定し、個体間のゲノム変異を検出できるプログラムの開発に成功しました。

 

この技術を用いてミヤマハタザオの25集団のゲノムを解析し、生育に有利になるアミノ酸置換進化の割合を推定したところ、これまで報告されているほとんどの二倍体植物種を凌ぐことが分かりました。さらに、ミヤマハタザオとその親の二倍体ハクサンハタザオの共通した特徴であるカドミウムや亜鉛など重金属の蓄積と耐性にかかわるHMA4遺伝子座の解析では、倍数化によるゲノム重複によって2つに増えたHMA4遺伝子のそれぞれが大きく異なった自然選択の歴史をたどったことがわかりました。それぞれの親から受け継いだ2つの遺伝子(ホメオログ)が別々の自然選択を受けるということは、進化・育種の素材となる遺伝子数が倍数化によって増加するということを意味します。これらの結果は、倍数化が進化の可能性を広げるという、故大野乾博士らの理論的予測を支持するものとなりました。

 

さらに、この技術を作物に応用することで、育種のターゲットとなる有利な変異をゲノム情報から発見することが可能となり、より迅速で効率的な分子育種につながると期待されます。

 

本研究成果は、国際学術雑誌『Nature Communications』(日本時間 平成30年9月25日18:00付)にオンライン掲載されました。

 

また、「科学新聞(2018年10月5日付)」および「化学工業日報(2018年9月26日付)」にも掲載されました。

 

論文著者ならびにタイトル

Patterns of polymorphism and selection in the subgenomes of the allopolyploid Arabidopsis kamchatica,
Timothy Paape, Roman V. Briskine, Gwyneth Halstead-Nussloch, Heidi E. L. Lischer, Rie Shimizu-Inatsugi, Masaomi Hatakeyama, Kenta Tanaka, Tomoaki Nishiyama, Renat Sabirov, Jun Sese, Kentaro K. Shimizu.
Nature Communications. DOI: 10.1038/s41467-018-06108-1

 

プレスリリース詳細はこちら

https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2018/201809shimizu_nc.html

【プレスリリース】ブラシノステロイドのマスター転写因子に特有な塩基配列認識の鍵と鍵穴の仕組みを解明(宮川班)

October 3, 2018 10:19 AM

Category:研究成果

main:宮川班

東京大学大学院農学生命科学研究科の宮川拓也特任准教授らの共同研究グループは、植物ホルモン「ブラシノステロイド」のマスター転写因子であるBIL1/BZR1と標的DNAの複合体構造を決定し、BIL1/BZR1が特有の塩基配列認識を可能にする構造基盤を明らかにしました。

 

器官成長促進、細胞分裂・伸長・分化の制御、受精促進などの多岐にわたる生理活性をもつブラシノステロイドの作用には、ブラシノステロイド情報伝達のマスター転写因子群を介して引き起こされる特異的かつ多様な遺伝子応答が不可欠です。マスター転写因子BIL1/BZR1は、G-box配列(CACGTG)を認識するbHLHファミリー転写因子と類似の塩基認識残基をもちますが、CAに対する認識をbHLHファミリー転写因子よりも緩めることで、ブラシノステロイド特有の多様な遺伝子応答を可能にしています。BIL1/BZR1及びbHLHファミリー転写因子の立体構造とDNA結合特性を詳細に比較することにより、BIL1/BZR1が塩基認識残基から離れた二量体形成領域の構造を変化させ、塩基認識残基のCAに対する適合度を微調整するという新たな鍵と鍵穴の仕組みを説明しました。

 

本研究で明らかにしたBIL1/BZR1の構造基盤は、非常に多くの高等植物において進化的に保存されており、植物におけるブラシノステロイド応答遺伝子の多様性を生み出す普遍的な仕組みの一つであると推測されます。

 

この研究成果は平成30年10月1日付けでNature Plants誌に掲載されました。

 

◆プレスリリース詳細はこちら

東京大学大学院農学生命科学研究科プレスリリース

http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2018/20181002-1.html

 

<発表論文>

Structural basis for brassinosteroid response by BIL1/BZR1

Nosaki S, Miyakawa T, Xu Y, Nakamura A, Hirabayashi K, Asami T, Nakano T, Tanokura M

Nature Plants 2018 Oct 1. Doi: 10.1038/s41477-018-0255-1

辻班 学部4年生の真弓彩夏さんが国際学会にて Best Poster Awardを受賞しました!

September 7, 2018 11:47 AM

Category:受賞関連, 研究成果

main:辻班

sub:辻班

2018年9月5日-7日に東京で開催された国際シンポジウム "International Symposium on Rice Functional Genomics"において、辻班学部4年生の真弓彩夏さんがBest Poster Awardを受賞しました。初学会発表が初国際学会で準備もたいへんでしたが、とてもよかったです。真弓さんおめでとう!

http://isrfg2018.tokyo

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