研究経過

マツタケゲノムの完全解読~ 希少化するマツタケの保全に向けて ~

July 6, 2023 9:31 AM

Category:プレスリリース, メディア報道, 論文発表

main:白澤班

白澤班(かずさDNA研究所)と東京大学大学院農学生命科学研究科は、共同でマツタケのゲノムを解読しました。

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秋の高級食材として知られるマツタケは、近年生息地の環境悪化などにより収穫量が減少しています。
マツタケは生きた樹木の根に共生するため、未だ人工栽培に至っておらず、生息域外保全も難しい状況にあります。

本研究では、最新のロングリード配列解析装置を使って、マツタケがもつ13本の染色体の塩基配列(合計1.6億塩基対)と、ミトコンドリアの環状DNA(7.6万塩基対)を端から端までひとつづきで決定することに初めて成功しました。

そして、マツタケが21,887個の遺伝子をもつこと、ゲノムの71.6%は転移因子などのリピート配列が占めることを明らかにしました。

解読されたゲノム情報により、マツタケの生態が解明され保全につながることが期待されます。さらなる遺伝子解析により、マツタケの大量生産や人工栽培への道が拓かれることが望まれます。

研究成果は国際学術雑誌 DNA Researchにおいて、4月25日(火)にオンライン公開されました。

論文タイトル: Telomere-to-telomere genome assembly of matsutake (Tricholoma matsutake)
著者:Hiroyuki Kurokochi, Naoyuki Tajima, Mitsuhiko P. Sato, Kazutoshi Yoshitake, Shuichi Asakawa, Sachiko Isobe, Kenta Shirasawa
掲載誌:DNA Research
DOI: 10.1093/dnares/dsad006

詳しくは、かずさDNA研究所プレスリリースをご覧ください。

メディア報道
2023-05-09 時事通信
2023-05-10 日経新聞
2023-05-10 農業協同組合新聞
2023-05-23 NHK
2023-05-24 テレビ朝日
2023-05-29 TBS
2023-05-30 読売新聞
2023-06-05 客観日本
2023-06-10 産経新聞
2023-06-12 Science Japan
2023-06-23 日経サイエンス

日本を代表するトウガラシ「鷹の爪」の全ゲノムを解読 ~多様なトウガラシを生み出すための基盤に~

July 6, 2023 9:12 AM

Category:プレスリリース, メディア報道, 論文発表

main:白澤班

白澤班(かずさDNA研究所)は、近畿大学、京都大学、国立遺伝学研究所と共同で日本を代表するトウガラシのひとつ「鷹の爪(タカノツメ)」のゲノムを解読しました。

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南米原産のトウガラシは、室町時代後期に日本に伝わり、各地でさまざまな地域品種が誕生しています。「鷹の爪」は江戸時代から栽培されていた在来系統のひとつですが、数あるトウガラシの中でも「鷹の爪」が香辛料として人気を博した理由や、どのような経緯で日本全国に広まったのかはわかっていません。

今回、「鷹の爪」の全ゲノムを解読し、12本の染色体のDNA配列(合計30億塩基対)を高精度に決定しました。そして、「鷹の爪」以外の14系統のトウガラシのゲノム情報と比較して、染色体構造の違いや塩基配列の違いを多数明らかにしました。
これらの情報から、「鷹の爪」が日本で広がった経緯が明らかになるかもしれません。さらに、「鷹の爪」がもつ強い抗ウイルス活性の利用や、多様なトウガラシを生み出すための品種改良が進むと期待されます。

研究成果は国際学術雑誌 DNA Research において、12月25日(日)にオンライン公開されました。

詳しくは、かずさDNA研究所プレスリリースをご覧ください。

論文タイトル:Chromosome-scale genome assembly of a Japanese chili pepper landrace, Capsicum annuum 'Takanotsume'
著者:Kenta Shirasawa, Munetaka Hosokawa, Yasuo Yasui, Atsushi Toyoda, and Sachiko Isobe
掲載誌:DNA Research
DOI: 10.1093/dnares/dsac052

メディア報道
2023-01-11 NEWACAST
2023-01-12 農業協同組合新聞
2023-01-24 日刊工業新聞
2023-03-02 読売新聞

日本のモウソウチクは、種子ではなく、 株か地下茎(栄養体)で、海を越えて伝播してきた! (井澤班)

July 3, 2023 12:46 PM

Category:論文発表

main:井澤班

 計画研究班の井澤教授(東京大学)らの研究グループは東京農業大学との共同研究により、中国15地域由来のモウソウチクと鹿児島に渡来したと伝わる日本のモウソウチクの全ゲノム配列解析により、解析した全サンプルはクローン(単一個体由来の栄養生殖個体)であることを明らかにしました。

 さらにヘテロ接合座位に着目した新規ゲノム解析手法により、文献記録や従来解析手法では不明であった系統関係を明らかにし、中国・福建省の竹が日本に由来したと推定しました。

 本発表はクロ―ナル植物のゲノム多様性に関する重要な新規な知見であり、この新規解析手法は他のクロ―ナル植物のゲノム多様性研究への応用が期待されます。

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 図1 中国、日本の全18サンプルのモウソウチクのヘテロ接合、変異型ホモ接合のサンプル組み合わせ
縦軸のJAPAN~RH27はサンプル名を表す。JAPANは日本に最初に導入されたと考えられているモウソウチクの系統。Kikkoは日本のキッコウチク、EAST、MIDDLE、WEST、SOUTH-A、SOUTH-Bは中国サンプルの地域分類。 「ヘテロ接合のサンプル組み合わせ」、「変異型ホモ接合のサンプル組み合わせ」ともに、上位20の組み合わせのみを図示。

 

◆詳細はこちらをご覧ください>東京大学のHPへ

 

<発表論文>

雑誌 BMC Genomics

題名 High genome heterozygosity revealed vegetative propagation over the sea in Moso bamboo

著者 Norihide Nishiyama, Akihisa Shinozawa, Takashi Matsumoto, Takeshi Izawa*(*責任著者)

URL https://bmcgenomics.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12864-023-09428-9

雄しべの発生に関与するイネのモバイルタンパク質を発見 (小宮班)

July 3, 2023 9:23 AM

Category:論文発表

main:小宮班

公募研究班の小宮怜奈博士の研究グループ (沖縄科学技術大学院大学 サイエンス・テクノロジー アソシエート) は、二種類のアルゴノートタンパク質 (AGO1bとAGO1d) による雄しべのサイレンシング機構を発見しました。

 

アルゴノートタンパク質 (AGO) は、小分子RNAと結合し、標的因子の発現を抑制するRNAサイレンシングの中心因子として機能します。イネには、19種類のAGO遺伝子があります。しかし、その半数に及ぶイネAGO遺伝子群の機能は明らかになっていません。私たちは、AGO1bとAGO1dの機能を明らかにするために、変異イネの解析、及び、雄しべの3Dイメージングを行いました。その結果、AGO1bとAGO1d が、雄しべの発生を介し、最終的に種子の稔り具合をコントロールすることを明らかにしました。さらに、後に花粉となる生殖細胞で機能するアルゴノートタンパク質 (生殖AGO) の細胞内の局在解析を併せ、三種類のアルゴノートタンパク質 (AGO1b, AGO1d, 生殖AGO) による空間的なRNAサイレンシング配置が、イネの雄しべの発生に必要であることを明らかにしました (図A)。

また、AGO1bとAGO1dのタンパク質は、雄しべの表皮を構成する体細胞層から雄しべ内部の生殖細胞に移動し、小分子RNAを運ぶモバイルキャリアとして働くことを世界ではじめて報告しました (図B)。

モバイルAGO1b/AGO1dの研究成果は、将来、種子を利用する作物の安定的な供給に貢献することが期待されます。

図1++.png

こちらの動画から、3Dイメージング技術の開発により明らかにした二種類のモバイルタンパク質の各細胞における局在をご覧いただけます。

https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41467-023-38881-z/MediaObjects/41467_2023_38881_MOESM14_ESM.mp4

 

 

<発表論文>

雑誌:Nature Communications

題名: Spatial distribution of three ARGONAUTEs regulates the anther phasiRNA pathway

著者: Hinako TamotsuKoji KoizumiAlejandro Villar Briones, and Reina Komiya*

(*は責任者)

 

DOI: 10.1126/sciadv.adf4803

深刻な農業被害をもたらす線虫が植物のシグナル伝達をハイジャック!?(澤班)

June 13, 2023 9:29 AM

Category:プレスリリース, メディア報道, 論文発表

main:佐藤班, 澤班

sub:佐藤班

公募研究班の澤進一郎教授(熊本大学生物環境農学国際研究センター)は、公募研究班の佐藤 良勝特任准教授(名古屋大学)や東京大学、名古屋大学、宮崎大学、並びに新潟大学の研究グループとの共同研究により、世界で初めて、植物に感染する線虫の寄生メカニズムの一端が、植物のペプチドホルモンハイジャックであることを発見しました。

 線虫(ネコブセンチュウ)は、根に寄生し、コブを作って植物の栄養を奪い、農作物を枯らします(図)。今回、我々は、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、線虫が根にコブを形成する際に、シロイヌナズナのペプチドホルモンを利用し、光合成によって作られた糖を葉から根に無理やり移動させていることを発見しました。通常は根への糖輸送シグナルは働いていません。根に線虫が感染すると、まず線虫はその輸送シグナルの担い手であるCLEペプチドホルモンを働かせることで、地上部の維管束で糖のトランスポーターを誘導します。すると糖は根に運ばれます。つまり、線虫はコブの形成に必要なエネルギー(糖)を得るために、植物のCLEペプチドホルモン伝達をハイジャックしているのです。今後、線虫がどのようにして、CLE遺伝子を活性化しているかなどメカニズムの詳細を解析する予定です。

図1.png     

図.サツマイモネコブセンチュウとシロイヌナズナを用いた根瘤形成の解析システム。

 

詳細はこちら>熊本大学ウェブサイト

https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/pressrelease/2023-file/release230605.pdf

 

また、本研究成果は2023年6月8日付の日本経済新聞、及び日本農業新聞に掲載されました!

線虫寄生の仕組み解明―栄養分の輸送"ハイジャック"日本農業新聞

熊本大、線虫による農作物被害の原因物質特定 日本経済新聞

 

<発表論文>

雑誌:Science Advances

題名: Root-knot nematode modulates plant CLE3-CLV1 signaling as a long-distance signal for successful infection

著者: Satoru Nakagami, Michitaka Notaguchi, Tatsuhiko Kondo, Satoru Okamoto, Takanori Ida, Yoshikatsu Sato, Tetsuya Higashiyama, Allen Yi-Lun Tsai, Takashi Ishida, and Shinichiro Sawa *(*は責任者)

DOI: 10.1126/sciadv.adf4803

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