研究経過

作物の栽培化と倍数体化の関係についての総説を発表しました(赤木班、清水班)

September 20, 2022 10:40 AM

Category:論文発表

main:清水班, 赤木班

赤木領域代表(岡山大学)と計画研究 清水教授(横浜市立大学・チューリッヒ大学)の共同執筆による総説が、Current Opinion in Plant Biologyに掲載されました。

古くから植物の倍数化と栽培化の間には密接な関係があり、現存する作物の多くは倍数体であることが示唆されてきました。一方、それらの因果関係や、栽培化における倍数化の意義などは十分に定義されておらず、多くの議論が繰り広げられていました。本総説では、倍数体である作物群の詳細な倍数性進化と栽培化の過程・順序を定義し、その寄与を最新の分子生物学的知見も交えて考察しています。とくに有性生殖の観点から見ると、倍数体作物には自殖性が多いことが知られていましたが、その分子基盤の解明が進んでいます。カキ属では二倍体野生種が雌雄異株であるのに対し、六倍体栽培種ではエピジェネティック制御を介して雄花、雌花が同一個体に作られて自殖が可能になりました。さらに、重複遺伝子の新機能獲得により、両性花をつくる系統も進化しました。また、アブラナ科ではセイヨウアブラナなど異質倍数体種が自家不和合性を失う傾向があり、S-遺伝子座のsmall RNAによるサブゲノム間の抑制的相互作用が重要だと考えられます。近年のゲノム解析技術とバイオインフォマティクス手法の進展により、倍数体作物の研究が急速に進むことが期待されます。

 

図:カキ属とアブラナ科における倍数体特異的な自殖性への転換を支える分子機構

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<発表論文>

Takashi Akagi, Katharina Jung, Kanae Masuda, Kentaro K. Shimizu,

Polyploidy before and after domestication of crop species,

Current Opinion in Plant Biology, Volume 69, 102225, 2022

https://doi.org/10.1016/j.pbi.2022.102255

【プレスリリース】植物の精子形成に関わる新規因子を発見(榊原班)

September 16, 2022 11:27 AM

Category:プレスリリース, 論文発表

main:榊原班

計画研究・榊原班の立教大学 養老瑛美子助教・榊原恵子准教授、ならびに金沢大学 西山智明助教らの研究グループは、明治大学 越水静助教・矢野健太郎教授、基礎生物学研究所 南野尚紀特任助教・海老根一生助教・上田貴志教授、理化学研究所 佐藤繭子技師・若崎眞由美テクニカルスタッフ・豊岡公徳上級技師らとの共同研究により、オミクス解析によるスクリーニングから、ゼニゴケにおいて精子形成に関与する新規因子BLD10を発見しました。さらに、BLD10遺伝子の精子形成における機能は、BLD10遺伝子が分子進化した結果、祖先機能に加えて新たに獲得した機能である可能性を示しました。  

本研究では、オミクスデータを活用し、それらを統合解析することで、効果的に目的遺伝子をスクリーニングしました。機能解析については、遺伝子導入系が確立されており、精子を形成するゼニゴケとヒメツリガネゴケを使用すること、および高い観察技術によって可能となりました。特に連続切片自動撮像システムを搭載した電子顕微鏡を用いて連続切片観察を行うことで、基底小体周辺の構造の詳細な解析に成功しました。

 
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図:ゼニゴケ精子の表現型解析
A, ゼニゴケ精子の模式図。 B, 野生株(左)およびbld 10変異体(中央、右)の精子。
青:核(Hoechst33342); スケールバー:10 μm。
  
本研究成果は、英国の国際雑誌「New Phytologist」2022年8月3日付(日本時間8月4日付)に掲載されました(オンライン版は2022年7月16日に先行公開されました)。
 
詳細は、こちらを御覧ください。
 
 
<発表論文>
Koshimizu S, Minamino N, Nishiyama T, Yoro E, Sato M, Wakazaki M, Toyooka K, Ebine K, Sakakibara K, Ueda T, Yano K.
Phylogenetic distribution and expression pattern analyses identified a divergent basal body assembly protein involved in land plant spermatogenesis.
New Phytol. 2022 Jul 16. https://doi.org/10.1111/nph.18385

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