研究経過

【プレスリリース】茎の節間は最後に生まれてくる-茎の発生学への挑戦-

October 2, 2023 12:39 PM

Category:プレスリリース, 論文発表

main:津田班

節と節間の繰り返し構造からなる茎は種子植物一般に見られる器官です。節間は光獲得や花粉や種子の飛散のため、葉や花を押し上げる役割を持ちます。一方、節は葉や根系を繋いで水・養分の交換をおこないます。茎は作物の背丈を決定する器官であることから、穀物の倒伏を防ぐために矮性変異が利用されてきました。このように、植物学・育種学の両面から重要な茎ですが、その形態形成メカニズムの研究はほとんど進んでいません。

公募研究班の津田勝利博士(国立遺伝学研究所)らの研究グループは、イネにおいて熱処理誘導型クローナル解析系を確立し、葉・茎・腋芽を一単位とするファイトマーの構成細胞が各器官へと運命が決定されるタイミングを解析しました。その結果、「発生に先立つファイトマーの確立」→「節になる細胞の出現とそれに伴う葉と茎の運命分岐」→「腋芽の運命確立」→「最後に節間への運命決定がごく少数の細胞で起こる」という、段階的なステップを経て進むことがわかりました。

本研究は、長らく不明であった茎発生において鍵となるイベントとその時系列を明らかにしました。今後分子レベルでの理解をすすめる基盤となり、将来的には理想的な草型設計に向けた茎形質の改良につながることが期待されます。

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【論文タイトル】

Heat-shock inducible clonal analysis reveals the stepwise establishment of cell fates in the rice stem.

【著者】

Katsutoshi Tsuda*, Akiteru Maeno, and Ken-Ichi Nonomura.

【掲載誌】

The Plant Cell

DOI: https://doi.org/10.1093/plcell/koad241

詳しくは遺伝研プレスリリース資料をご覧ください。

https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2023/09/research-highlights_ja/pr20230928.html

【プレスリリース】生殖システムの研究を加速する 〜ヒメツリガネゴケの生殖器官・胞子体誘導改良法の確立〜(榊原班・越水班)

September 29, 2023 4:46 PM

Category:プレスリリース, 論文発表

main:榊原班, 越水班

榊原班の立教大学 養老瑛美子助教・榊原恵子准教授の研究グループは、越水班の遺伝学研究所 越水静助教、神奈川工科大学 村田隆教授らとの共同研究により、窒素条件がヒメツリガネゴケの成長と発生に与える影響について調べました。
原糸体から茎葉体形成までは窒素含有培地で培養し、生殖器官および胞子体誘導時に窒素欠乏培地で培養することで、無菌的かつ短期間に効率的に胞子体を発生させることが可能になりました。
多くの方に活用していただきたいと思います。
本研究成果は、英国の国際雑誌「Plant Methods」に2023年9月26日付で公開されました。

<発表論文>
Yoro E, Koshimizu S, Murata T, Sakakibara K.
Protocol: an improved method for inducing sporophyte generation in the model moss Physcomitrium patens under nitrogen starvation.
Plant Methods. 19, Article number: 100 2023 Sep 26.
https://link.springer.com/article/10.1186/s13007-023-01077-z

【プレスリリース】画像解析AIを利用して植物の環境応答解析システムを開発(清水班)

September 27, 2023 11:03 AM

Category:プレスリリース, メディア報道, 論文発表

main:清水班

横浜市立大学木原生物学研究所 清水健太郎 客員教授(チューリッヒ大学 教授兼任)らの研究グループは、エルピクセル株式会社、筑波大学、チューリッヒ大学、農業・食品産業技術総合研究機構、株式会社ヒューマノーム研究所、京都大学、東京大学、金沢大学との共同研究により、野外での植物の状態をモニタリングするAIを利用した画像解析システム(PlantServation)を開発し、色素量の変動を指標として植物の環境応答を解析できる手法を確立しました(図1)。

本研究ではNHKのドラマ、連続テレビ小説「らんまん」のモデルにもなった牧野富太郎博士が名付けたことでも知られるタチスズシロソウなどの植物の画像データを400万枚以上収集し、解析しました。その結果、種間交雑に由来する植物が様々な環境に適応する頑健性をどのように示すのかを解明しました。

地球環境の変動による食糧生産への影響が危惧される中、実験室内ではなく野外の変動環境における植物の環境応答の研究は近年重要視されています。本研究で開発したAIを活用した研究手法は様々な作物や野生植物へ適用が可能で、生態学、進化学、農学などへの貢献が期待されます。

本研究成果は、オンライン国際科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。(日本時間2023年9月22日(金)18時)

動画:野外で生育しているシロイヌナズナ
野外で生育しているシロイヌナズナの画像をPlantServationソフトウェアによって解析した結果

 

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図1 本研究で開発した植物画像解析システムPlantServationの概要

 

◆詳しくはこちら→横浜市立大学プレスリリース

 

◆論文情報

タイトル:Seasonal pigment fluctuation in diploid and polyploid Arabidopsis revealed by machine learning-based phenotyping method PlantServation
著者:Reiko Akiyama, Takao Goto, Toshiaki Tameshige, Jiro Sugisaka, Ken Kuroki, Jianqiang Sun, Junichi Akita, Masaomi Hatakeyama, Hiroshi Kudoh, Tanaka Kenta, Aya Tonouchi, Yuki Shimahara, Jun Sese, Natsumaro Kutsuna, Rie Shimizu-Inatsugi, Kentaro K. Shimizu.
掲載雑誌:Nature Communications
DOI: doi.org/10.1038/s41467-023-41260-3

 

◆メディア報道

2023-9-22 日本経済新聞
2023-9-25 農業共同組合新聞
2023-9-26 bp-Affairs

第87回日本植物学会にてスポンサードシンポジウムを開催しました

September 15, 2023 3:31 PM

Category:学会での企画

main:佐藤班, 奥田班, 寺内班, 赤木班

2023年9月8日、札幌で行われた第87回日本植物学会にて、計画研究班の奥田哲弘先生(東京大学)と公募研究班の佐藤良勝先生(名古屋大学)との共同オーガナイズによるシンポジウム「異分野融合技術で挑む植物科学の革新」を、本領域によるスポンサードセッションとして共同開催しました。

当領域からはオーガナイザーの佐藤先生をはじめ公募研究班の寺内良平先生(京都大学)、計画研究(赤木班)の桒田恵理子さん(岡山大学)も登壇し、領域の研究成果について活発な議論が交わされました。

 

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

 

*プログラム詳細はこちらから

http://bsj.or.jp/bsj87/symposium.html

 

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ソバゲノムの解読 ~高精度ゲノム解読がソバの過去と未来を紡ぐ~

August 24, 2023 1:21 PM

Category:プレスリリース, メディア報道, 論文発表

main:白澤班

蕎麦は、寿司、天ぷらと並ぶ代表的な日本食の一つですが、近代的な育種の対象とされずに生産技術の改善が進んでいません。2016年に、近代育種の基礎となる栽培ソバのゲノムの解読が行われましたが、当時の解析技術には精度に限界がありました。

今回、かずさDNA研究所を含む国際共同研究グループはDNAの塩基配列を一度に長く解析できるロングリード技術を駆使し、栽培ソバのゲノムを染色体レベルで高精度に解読しました。

その結果、栽培ソバの起原には、チベット南東部の集団が関与していることを解き明かしました。さらに、このゲノム情報と従来育種法を組み合わせることによって、これまでになかったモチ性ソバの開発に成功しました。モチ性ソバとは、モチモチとした食感を持つ新たなソバです。イネなどの多くの穀類にはモチ性形質が存在しますが、ソバにはこれまで存在しなかったものです。

今後、本研究で使われた解析方法や育種方法が、多様な栽培作物の改良に活かされることが期待されます。

京都大学、理化学研究所、農研機構、千葉大学、京都府立大学、総合研究大学院大学、雲南農業大学、ケンブリッジ大学との共同研究。

詳しくは、かずさDNA研究所のプレスリリースをご覧ください。

論文タイトル: Genome sequencing reveals the genetic architecture of heterostyly and domestication history of common buckwheat.
著者:Fawcett, J.A., Takeshima, R., Kikuchi, S. et al.
掲載誌:Nat. Plants
DOI: 10.1038/s41477-023-01474-1

メディア報道
2023-08-11 日本経済新聞
2023-08-11 時事通信
2023-08-11 朝日新聞
2023-08-18 日経バイオテク

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