研究経過

【プレスリリース】ボルネオ熱帯多雨林の一斉開花現象を世界で初めて衛星観測により広範囲にとらえた(清水班)

February 14, 2023 3:23 PM

Category:プレスリリース, 論文発表

main:清水班

 計画研究・清水健太郎教授(チューリッヒ大学・横浜市立大学 客員教授兼任)は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と、米国ハワイ大学マノア校、宮崎大学、マレーシア国サラワク森林局、高知大学との国際共同研究チームで、光学センサーが搭載された高頻度高解像度衛星PlanetScope により観測された分光データを用いて、東南アジア熱帯域特有の開花現象「一斉開花」を広域的にとらえることに世界で初めて成功しました。

 一斉開花現象を含む熱帯域の植物季節は、光合成や蒸発散を介した気候システムや生物多様性の理解を深めるために重要な観測項目のひとつです。しかしながら、既存の衛星観測では、センサーの精度や観測頻度が不十分であったため、これまで一斉開花現象は、観測タワーやクレーンにおける目視観測やタイムラプスカメラを用いた定点撮影により限定的にとらえられてきました。このため、種ごとの開花季節の特徴や種間の同調性についての空間分布の動態を広域的に評価することができませんでした。

 本研究では、現地における長期的な地上観測データを用いた検証に基づいて、PlanetScope衛星により観測された分光データは、ボルネオのランビルヒルズ国立公園内(マレーシア国サラワク州)で2019年に広域的に生じた一斉開花現象の空間分布の特徴をほぼ個体レベルでとらえたことを明らかにしました。この成果は、既存研究において不十分であった熱帯多雨林を対象とした植物季節観測の高精度化、光合成や蒸発散など植生機能の理解の深化、さらには樹種判別の高精度化や開花季節の同調性のメカニズムの理解の深化を促進することが期待されます。

 本成果は「Ecological Research」誌に2月8日付け(日本時間)で掲載されました。

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図 マレーシア国サラワク州に位置するランビルヒルズ国立公園の位置(左図)と公園内の様子(右図)。
樹冠の上部にアクセス可能なクレーン(約90 m)がみられる。クレーンに吊り下げたゴンドラの中から撮影した。撮影者:徳本雄史(2019年5月3日)
(出典:プレスリリース資料)

<発表論文>
Utility of Commercial High Resolution Satellite Imagery for Monitoring General Flowering in Sarawak, Borneo
Tomoaki Miura, Yuji Tokumoto, Shin Nagai, Kentaro K, Shimizu, Runi anak Sylvester Punnga and Tomoaki Ichie
Ecological Research, DOI: 10.1111/1440-1703.12382

 

◆詳細は以下をご覧ください。

横浜市立大学プレスリリース

日本ナス科コンソーシアムシンポジウム(JSOL2022)をオーガナイズしました!

January 9, 2023 10:49 AM

Category:学会での企画

main:赤木班

領域代表の赤木先生がオーガナイザーを務める日本ナス科コンソーシアムシンポジウム(JSOL2022)が、2022年10月8日〜9日に岡山大学にて開催されました。

当領域の海外アドバイザーであるLuca Comai博士も登壇され、最新の研究動向についての議論が交わされました。

 

詳しいプログラムはこちらをご覧ください。

http://obyan2017lin.mind.meiji.ac.jp/jsol2022/doc/JSOL2022_program_v1.2.pdf

 

図1.jpg

【プレスリリース】植物の有性生殖と陸上進出の謎に迫る(榊原班)

December 21, 2022 6:48 AM

Category:論文発表

main:榊原班

日本女子大学 化学生命科学科 関本弘之教授、計画研究・榊原班の金沢大学 西山智明助教らの共同研究チームは、接合藻類ヒメミカヅキモ雌雄にあたる 2種類接合型ゲノムを解読して比較することによりヒメミカヅキモの接合型決定する遺伝子特定ました。  

さらに,本グループが確立したヒメミカヅキモのゲノム編集技術を用いて,この遺伝子が接合型を決定する遺伝子の本体であることを示しました。

この遺伝子は,陸上植物の有性生殖に重要な遺伝子から接合型決定遺伝子に進化したと考えられます。また,ヒメミカヅキモは陸上植物と最も近縁な藻類の一つであり,本研究は,陸上植物が祖先的な藻類からどのように進化して陸上に適応したのか,その謎の解明への貢献が期待されます。

本研究の成果は,英国の科学雑誌「New Phytologist」のオンライン版に掲載されました。

<発表論文>

Hiroyuki Sekimoto, Ayumi Komiya, Natsumi Tsuyuki, Junko Kawai, Naho Kanda, Ryo Ootsuki, Yutaka Suzuki, Atsushi Toyoda, AsaoFujiyama, Masahiro Kasahara, Jun Abe, Yuki Tsuchikane, Tomoaki Nishiyama

A divergent RWP-RK transcription factor determines mating type in heterothallic Closterium

New Phytologist, 2022

https://doi.org/10.1111/nph.18662

詳細は以下をご覧ください。

日本女子大学プレスリリース

【著書執筆】「エッセンシャル植物生理学-農学系のための基礎-」を講談社サイエンティフィクより発刊(清水班)

October 26, 2022 5:26 PM

Category:アウトリーチ活動, 論文発表

main:清水班

 まだ学生の頃、とある先生から「書籍は書いた瞬間から古くなる だから意味がない!!」というようなことをいわれて、距離をおいてきたのですが、年を取ったのか、「自家不和合性」、「受粉反応」、「生殖」、「植物・作物」を振り返ったとき、これまでとは違ったものを残すことができればよいのではと思い、執筆を。2年ほどかかりましたが、班員の方にも写真提供など頂きました。ありがとうございました。著書は、

著書名 エッセンシャル植物生理学 農学系のための基礎
著者   牧野 周/渡辺正夫/村井耕二/榊原 均・著
発行   2022/10/20
ページ数   272 page
出版社 講談社サイエンティフィク
ISBN   978-4-06-529581-6

DSCN4037.JPG 副題に「農学系のための基礎」としたのは、作物の理解という点からのこうした書籍がなかったので、できるだけ「農学、作物」を意識した書籍になっています。それは「植物生理学」とは違うという方もいらっしゃるのかも知れないですが、ある種の出口も意識しつつ、基礎研究を深めるためには大事なことではないかと思っています。そんなこともあり、広く「植物科学」的な捉え方に加え、植物科学発展の歴史、形態学、遺伝学なども1冊の書籍に詰め込みました。書店、アマゾンなどで手に取って頂けるとありがたいです。
 班員に限らず、次の世代を背負うであろう小中高生などへのアウトリーチ活動にも反映できるかと思っています。あわせてご活用下さい。なお、本書籍の簡単な説明記事、2min程度の動画を用いたほぼ全ページをカバー・紹介したへのlink先などを渡辺の研究室のHPにまとめました。あわせて、ご覧下さい。

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わたなべしるす

ケシ科植物の自家不和合性に関する解説記事が掲載されました

September 27, 2022 3:10 PM

Category:論文発表

main:藤井班

計画研究班の藤井(東京大学)が、ケシ科植物の自家不和合性のメカニズムについて解説した記事がCurrent Biology誌に掲載されました。

植物の半数以上は、雌しべにおいて自分と他の個体の花粉を見分けるしくみをもっており、自家不和合性と総称されています。自家不和合性には様々なタイプの分子メカニズムがありますが、ケシ科植物は雌しべからPrsSと呼ばれるペプチドを分泌して、花粉でPrpSと呼ばれる受容体タンパク質で感知するしくみをもっています。このPrsSとPrpSが自己に由来するものであれば、相互作用します。そして花粉が自己拒絶反応を起こし、細胞死するため自家不和合性になると考えられています。

最近、このPrsSとPrpSが相互作用することで引き起こされる自己拒絶反応において、細胞中の急激なATP低下が中心的な役割を果たすことが報告されたため、その研究を解説する記事を書きました。ATPは生命の共通エネルギー通貨と呼ばれる重要な分子ですが、ケシ科の自家不和合性では自己拒絶反応が起きた2分以内に速やかにATPが枯渇することがわかりました。ミトコンドリアや葉緑体でつくられるATPの、エネルギー資源としての機能はよく研究されているものの、シグナル伝達におけるその役割には未知の部分が多く、今後細胞生理においてどのような役割を果たすのかが明らかになっていくことが期待されます。

<発表論文>

Sota Fujii,

Plant physiology: ATP at the center of self-recognition,

Current Biology, Volume 32, R962-R964, 2022

https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.08.004

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