研究経過

【書籍】Rice: Methods and Protocolsが出版されました(川勝班、津田班)

November 18, 2024 1:03 PM

main:川勝班, 津田班

公募研究・川勝泰二上級研究員(農研機構)が編集した"Rice: Methods and Protocols"Methods in Molecular Biologyシリーズ)が出版されました。

 

本書はSpringer Nature社のMethods in Molecular Biologyシリーズとして刊行され、タイトルに関連した実験における各ステップの手順が詳細に記述されたプロトコール論文集として構成されています。各ステップのコツがまとめられていることも本書の特徴です。本領域からは、公募研究・川勝らが「磁気ビーズを用いたRNA抽出法」、「CUT&RUNに用いるpAG-MNaseの簡易調製法」、「試験管内で転写因子が結合する領域を同定するDAP-seqライブラリー調製法」について、公募研究・津田勝利助教(遺伝研)が「クロマチン免疫沈降法」について執筆しています。イネを材料としたプロトコールとして記述されていますが、ほとんどのプロトコールは様々な植物種に適用できるため、イネ研究者だけでなく、多くの植物研究者の方に利用していただけると幸いです。

 

<書誌情報>

Taiji Kawakatsu (Eds)

Rice: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology, volume 2869)

Humana Press

eBook ISBN: 978-1-0716-4204-7

DOI: https://doi.org/10.1007/978-1-0716-4204-7

 

<本領域参画者が執筆したプロトコール論文>

Yoshino K and Kawakatsu T (2025) Total RNA extraction from rice vegetative tissues using magnetic beads. Methods in Molecular Biology 2869:7-13

Kawakatsu T (2025) Expression and purification of pAG-MNase for CUT&RUN. Methods in Molecular Biology 2869:147-155

Tsuda K (2025) Chromatin immunoprecipitation from shoot apices and young panicles of rice. Molecular Biology 2869:157-168

Kawakatsu T (2025) In vitro genome-wide identification of transcription factor binding sites. Molecular Biology 2869:169-182

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【プレスリリース】生物多様性の力で虫害を防ぐ 〜混ぜて植えるべき植物の遺伝子型ペアをゲノム情報から予測〜(清水班)

October 16, 2024 1:19 PM

Category:プレスリリース, 論文発表

main:清水班

横浜市立大学木原生物学研究所 清水健太郎客員教授(チューリッヒ大学 研究所長・教授兼任)および北海道大学大学院地球環境科学研究院 佐藤安弘助教、龍谷大学農学部 永野惇教授(慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任教授)らの研究グループは、磁石の相互作用の物理理論をDNA配列解析に適用する新手法Neighbor GWASを開発し、それを用いて異なる遺伝子型の植物を混ぜて植えることによって、昆虫による虫害を減らすことに成功しました(図1)。本研究を農業に応用することで、環境保全や生物多様性保全などのSDGsや、農林水産省「みどりの食糧システム戦略」の推進に貢献していくことが期待されます。
 本研究で扱った虫害に対する連合抵抗性は、おそらく植物間のコミュニケーションの氷山の一角です。生殖や資源をめぐる競争などの観点からも、植物個体間の相互作用の重要性が今後ますます明らかにされていくと期待されます。

本研究成果は、国際科学誌「Nature Communications」に掲載されました(日本時間2024年10月7日18時)。

 

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 図1:本研究で確立した方法。ランダムに配置された多くの遺伝子型から隣同士の相互作用をゲノム情報と機械学習で予測して(左)、混ぜて植えるペアを効率良く選ぶ(右)。

 

◆詳細はこちらをご覧ください>横浜市立大学HPへ

 

<論文情報>

タイトル: Reducing herbivory in mixed planting by genomic prediction of neighbor effects in the field
著者: Yasuhiro Sato, Rie Shimizu-Inatsugi, Kazuya Takeda, Bernhard Schmid, Atsushi J. Nagano, Kentaro K. Shimizu
掲載雑誌: Nature Communications
DOI: 10.1038/s41467-024-52374-7

本領域のメンバーが2024年度 日本植物学会<奨励賞><若手奨励賞>を受賞しました(元村班・須崎班)

October 3, 2024 2:32 PM

Category:受賞

main:元村班, 須崎班

本領域メンバーが2024年度 日本植物学会<奨励賞><若手奨励賞>を受賞し、2024年9月15日に授賞式が執り行われました。

おめでとうございます!

 

<奨励賞>

元村 一基(元村班・立命館大学 総合科学技術研究機構

「核に依存しない花粉管の持続的な伸長制御機構の発見」

 

<若手奨励賞>

杉 直也(須崎班・横浜市立大学 木原生物学研究所)

「精細胞を覆う生体膜の花粉管破裂と同調した選択的崩壊機構の解析」

 

■ 詳しくはこちらをご覧ください。

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南米アンデス起源のスーパーフード「キヌア」のゲノム配列を解読

August 22, 2024 5:18 PM

Category:論文発表

main:白澤班

かずさDNA研究所は、国際農林水産業研究センター、岡山大学、PROINPA、マヨール・デ・サン・アンドレス大学(UMSA)、京都大学、筑波大学と共同で、北部高地型と南部高地型のキヌアのゲノム配列を解読しました。

キヌアは南米アンデス高地を起源とする穀物で、近年スーパーフードとして注目を集めています。これまでの研究で、キヌアは遺伝子型の解析から北部高地型、南部高地型、低地型の3つに分類されることが分かっています。低地型のキヌアは小さく、アイボリー色の実をつけ、日本や世界中の温帯での栽培に適しています。一方、高地型のキヌアは白く大きな実をつけ、アンデス高地の干ばつなどの厳しい環境下で栽培されており、世界中に輸出されています。キヌアは、農業上重要な形質の多様性が高く、さまざまな環境で栽培できる可能性を秘めています。

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かずさDNA研究所は2016年に低地型キヌアのゲノム配列を報告していましたが、北部高地型および南部高地型のゲノム情報は明らかにされていませんでした。本研究では、北部および南部高地型のキヌア2系統のゲノムをロングリード技術を用いて染色体レベルで解読することに成功しました。

この研究により、赤色の色味の異なる高地型および低地型のキヌア系統の間で、赤色色素であるベタレインの生合成に関わる遺伝子が集積しているゲノム領域の配列に違いがあることが明らかになりました。これらの発見は、キヌアの遺伝子機能の解明やゲノム研究に役立つだけでなく、キヌアの栽培やさまざまな環境に適応するために必要な遺伝子の理解にも貢献することが期待されます。

研究成果は国際学術雑誌 Frontiers in Plant Scienceで、8月19日(月)にオンライン公開されました。

本研究は、(公財)かずさDNA研究所、JSPS科研費(JP22K05374、JP22H05172、JP22H05181、JP23KK0113、JP21H02158、JP23K18036)、ムーンショット型農林水産研究開発事業「サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現」(JPJ009237)、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)の連携事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「高栄養価作物キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及」(JPMJSA1907)の研究助成を受けたものです。

タイトル:Chromosome-level genome assemblies for two quinoa inbred lines from northern and southern highlands of Altiplano where quinoa originated
著者:Yasufumi Kobayashi, Hideki Hirakawa, Kenta Shirasawa, Kazusa Nishimura, Kenichiro Fujii, Rolando Oros, Giovanna R. Almanza, Yukari Nagatoshi, Yasuo Yasui, Yasunari Fujita
掲載誌:Frontiers in Plant Science
DOI: 10.3389/fpls.2024.1434388

詳しくは、かずさDNA研究所のニュースをご覧ください。

【プレスリリース】なぜこれだけ多くの仕組みが必要なのか? 〜ゲノム刷り込みの多層的な制御機構の解明〜(木下班・川勝班)

August 1, 2024 9:26 AM

Category:プレスリリース, 論文発表

main:川勝班, 木下班

横浜市立大学木原生物学研究所の殿崎薫助教と木下哲教授、農研機構の川勝泰二上級研究員、国立遺伝学研究所、理化学研究所、アメリカ・カリフォルニア大学デイビス校、岩手大学との国際共同研究グループは、イネの胚乳発生段階や細胞の種類によって異なるゲノム刷り込み(ゲノムインプリンティング)の仕組みが存在することを明らかにしました。

本研究では、イネの胚乳における時系列マルチオミクス解析から、発生の進行過程で多数の刷り込み遺伝子(インプリント遺伝子)を同定し、全てのステージに持続的なインプリント遺伝子と、発生ステージ特異的なインプリント遺伝子が存在することを突き止めました(図1)。さらにシングルセル解析から、細胞の種類によってもインプリント遺伝子の制御が異なることを示唆する結果を得ることに成功しました。極めて複雑に制御されるゲノムインプリンティングの制御メカニズムの全容解明や、植物の種子形成過程におけるインプリント遺伝子の機能解明に関する研究への進展が期待されます。

本研究成果は、「Nature Plants」誌に掲載されました(英国夏時間2024年7月30日10時)。

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図1.胚乳発生過程で異なる発現様式を示すインプリント遺伝子とその制御機構。
持続的インプリント遺伝子とステージ特異的インプリント遺伝子ではエピゲノム状態が異なる。

 

 
◆詳細はこちらをご覧ください>横浜市立大学のHPへ
 
<論文情報>
タイトル: Multi-layered epigenetic control of persistent and stage-specific imprinted genes in rice endosperm
著者: Kaoru Tonosaki, Daichi Susaki, Hatsune Morinaka, Akemi Ono, Hiroki Nagata, Hiroyasu Furuumi, Ken-Ichi Nonomura, Yutaka Sato, Keiko Sugimoto, Luca Comai, Katsunori Hatakeyama, Taiji Kawakatsu, Tetsu Kinoshita
掲載雑誌: Nature Plants
DOI:10.1038/s41477-024-01754-4

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