研究経過
本領域のメンバーが2024年度 日本植物学会<奨励賞><若手奨励賞>を受賞しました(元村班・須崎班)
October 3, 2024 2:32 PM
Category:受賞
main:元村班, 須崎班
本領域メンバーが2024年度 日本植物学会<奨励賞><若手奨励賞>を受賞し、2024年9月15日に授賞式が執り行われました。
おめでとうございます!
<奨励賞>
元村 一基(元村班・立命館大学 総合科学技術研究機構)
「核に依存しない花粉管の持続的な伸長制御機構の発見」
<若手奨励賞>
杉 直也(須崎班・横浜市立大学 木原生物学研究所)
「精細胞を覆う生体膜の花粉管破裂と同調した選択的崩壊機構の解析」
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南米アンデス起源のスーパーフード「キヌア」のゲノム配列を解読
August 22, 2024 5:18 PM
Category:論文発表
main:白澤班
かずさDNA研究所は、国際農林水産業研究センター、岡山大学、PROINPA、マヨール・デ・サン・アンドレス大学(UMSA)、京都大学、筑波大学と共同で、北部高地型と南部高地型のキヌアのゲノム配列を解読しました。
キヌアは南米アンデス高地を起源とする穀物で、近年スーパーフードとして注目を集めています。これまでの研究で、キヌアは遺伝子型の解析から北部高地型、南部高地型、低地型の3つに分類されることが分かっています。低地型のキヌアは小さく、アイボリー色の実をつけ、日本や世界中の温帯での栽培に適しています。一方、高地型のキヌアは白く大きな実をつけ、アンデス高地の干ばつなどの厳しい環境下で栽培されており、世界中に輸出されています。キヌアは、農業上重要な形質の多様性が高く、さまざまな環境で栽培できる可能性を秘めています。
かずさDNA研究所は2016年に低地型キヌアのゲノム配列を報告していましたが、北部高地型および南部高地型のゲノム情報は明らかにされていませんでした。本研究では、北部および南部高地型のキヌア2系統のゲノムをロングリード技術を用いて染色体レベルで解読することに成功しました。
この研究により、赤色の色味の異なる高地型および低地型のキヌア系統の間で、赤色色素であるベタレインの生合成に関わる遺伝子が集積しているゲノム領域の配列に違いがあることが明らかになりました。これらの発見は、キヌアの遺伝子機能の解明やゲノム研究に役立つだけでなく、キヌアの栽培やさまざまな環境に適応するために必要な遺伝子の理解にも貢献することが期待されます。
研究成果は国際学術雑誌 Frontiers in Plant Scienceで、8月19日(月)にオンライン公開されました。
本研究は、(公財)かずさDNA研究所、JSPS科研費(JP22K05374、JP22H05172、JP22H05181、JP23KK0113、JP21H02158、JP23K18036)、ムーンショット型農林水産研究開発事業「サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現」(JPJ009237)、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)の連携事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「高栄養価作物キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及」(JPMJSA1907)の研究助成を受けたものです。
タイトル:Chromosome-level genome assemblies for two quinoa inbred lines from northern and southern highlands of Altiplano where quinoa originated
著者:Yasufumi Kobayashi, Hideki Hirakawa, Kenta Shirasawa, Kazusa Nishimura, Kenichiro Fujii, Rolando Oros, Giovanna R. Almanza, Yukari Nagatoshi, Yasuo Yasui, Yasunari Fujita
掲載誌:Frontiers in Plant Science
DOI: 10.3389/fpls.2024.1434388
詳しくは、かずさDNA研究所のニュースをご覧ください。
【プレスリリース】なぜこれだけ多くの仕組みが必要なのか? 〜ゲノム刷り込みの多層的な制御機構の解明〜(木下班・川勝班)
August 1, 2024 9:26 AM
Category:プレスリリース, 論文発表
main:川勝班, 木下班
横浜市立大学木原生物学研究所の殿崎薫助教と木下哲教授、農研機構の川勝泰二上級研究員、国立遺伝学研究所、理化学研究所、アメリカ・カリフォルニア大学デイビス校、岩手大学との国際共同研究グループは、イネの胚乳発生段階や細胞の種類によって異なるゲノム刷り込み(ゲノムインプリンティング)の仕組みが存在することを明らかにしました。
本研究では、イネの胚乳における時系列マルチオミクス解析から、発生の進行過程で多数の刷り込み遺伝子(インプリント遺伝子)を同定し、全てのステージに持続的なインプリント遺伝子と、発生ステージ特異的なインプリント遺伝子が存在することを突き止めました(図1)。さらにシングルセル解析から、細胞の種類によってもインプリント遺伝子の制御が異なることを示唆する結果を得ることに成功しました。極めて複雑に制御されるゲノムインプリンティングの制御メカニズムの全容解明や、植物の種子形成過程におけるインプリント遺伝子の機能解明に関する研究への進展が期待されます。
本研究成果は、「Nature Plants」誌に掲載されました(英国夏時間2024年7月30日10時)。
図1.胚乳発生過程で異なる発現様式を示すインプリント遺伝子とその制御機構。
持続的インプリント遺伝子とステージ特異的インプリント遺伝子ではエピゲノム状態が異なる。
著者: Kaoru Tonosaki, Daichi Susaki, Hatsune Morinaka, Akemi Ono, Hiroki Nagata, Hiroyasu Furuumi, Ken-Ichi Nonomura, Yutaka Sato, Keiko Sugimoto, Luca Comai, Katsunori Hatakeyama, Taiji Kawakatsu, Tetsu Kinoshita
掲載雑誌: Nature Plants
DOI:10.1038/s41477-024-01754-4
小さなトマト「マイクロトム」の変化の軌跡 ~遺伝子型の比較と高精度全ゲノム解読から品種改良へ~
July 19, 2024 2:30 PM
Category:プレスリリース, 論文発表
main:白澤班
かずさDNA研究所、筑波大学、大阪公立大学、国際農林水産業研究センターは共同で、小さなトマト「マイクロトム」の全ゲノムを高精度に解読しました。
マイクロトムは、アメリカで観賞用として開発されたトマトで、非常に小さく、種を播いてから3~4ヵ月で次の世代の種子を取ることができることから、研究用のモデル品種として使われています。これまでの研究から、マイクロトムには遺伝的に異なるいくつかの系統があることが分かっていましたが、世界に広がった経路や、表現型や遺伝子型の違いについての研究報告はありませんでした。そこでまず、アメリカ、フランス、ブラジルと日本の3つの研究機関から6系統のマイクロトム【写真】を集めて、かずさDNA研究所が維持してきたマイクロトムの全ゲノムを解読するとともに、6系統の遺伝的な違いや、植物体の形や果実の大きさなどの違いを明らかにしました。【論文(1)】。
さらに、筑波大学が維持してきたマイクロトムの全ゲノムを新たに解読しました。特に、このゲノム解析には、最新のDNA分析技術を利用したため、従来の技術では読み取ることが難しかったゲノム領域の塩基配列を、ほぼ完全に読み取ることができました【論文(2)】。
今回明らかになった高精度なゲノム情報を利用することで、トマトをはじめとする野菜類の新たな品種の育成や遺伝学の研究がより速く進むことが期待されます。筑波大学などが開発し、世界初のゲノム編集食品として販売されている高GABA含有トマト「シシリアンルージュ・ハイギャバ」も、マイクロトムの研究成果から生み出されたトマトです。
研究成果は国際学術雑誌 DNA ResearchとPlant Biotechnologyで、それぞれ6月4日(火)と7月19日(金)にオンライン公開されました。本研究は、(公財)かずさDNA研究所、イノベーション創出強化研究推進事業JPJ007097、JSPS科研費(22H02321、22H05172、22H05181) の研究助成を受けたものです。
論文(1)
タイトル:Genomic variation across distribution of Micro-Tom, a model cultivar of tomato (Solanum lycopersicum)
著者:Hideki Nagasaki, Kenta Shirasawa, Ken Hoshikawa, Sachiko Isobe, Hiroshi Ezura, Koh Aoki, Hideki Hirakawa
掲載誌:DNA Research
論文(2)
タイトル:Near-complete genome assembly of tomato (Solanum lycopersicum) cultivar Micro-Tom
著者:Kenta Shirasawa, Tohru Ariizumi
掲載誌:Plant Biotechnology
詳細はかずさDNA研究所のリリース資料をご覧ください。
本領域メンバーが第8回「バイオインダストリー奨励賞」を受賞しました!(藤井班)
July 16, 2024 10:02 AM
Category:受賞
main:藤井班
計画研究班の藤井壮太准教授(東京大学)が第8回「バイオインダストリー奨励賞」を受賞しました。
おめでとうございます!
【受賞研究課題】
「植物の交雑資源拡大に向けた受精前障壁メカニズムの研究」
※「バイオインダストリー奨励賞」は、2017年、(一財)バイオインダストリー協会が30周年を迎えるのを機に、次の30年を見据えて"最先端の研究が世界を創る-バイオテクノロジーの新時代-"をスローガンに、バイオインダストリー大賞と共にスタートしました。「奨励賞」は、バイオサイエンス、バイオテクノロジーに関連する応用を指向した研究に携わる有望な若手研究者とその業績を表彰するものです。
■詳しくはこちらをご覧ください。
なお、表彰式・受賞記念講演会は10月9日(水)、国際的なバイオイベント"BioJapan 2024"の会場(パシフィコ横浜)にて行われます。