研究経過

本領域のメンバーが令和5年度文部科学大臣表彰<科学技術賞>を受賞しました!

May 23, 2023 4:50 PM

Category:受賞

main:伊藤班

この度、令和5年度文部科学大臣表彰にて、計画研究の伊藤寿朗教授(奈良先端科学技術大学院大学)が<科学技術賞>を受賞されました。

おめでとうございます!

 

伊藤先生のコメントもぜひご覧ください(奈良先端大のページへ

賞の詳細・報道発表はこちら(文部科学省のページへ

 

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植物の花づくり開始時期を人工的に操作する方法を発見 幹細胞の機能が自己複製から分化へと変わる原因を解明(伊藤班)

May 17, 2023 12:39 PM

Category:論文発表

main:伊藤班

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域の伊藤 寿朗教授らの研究グループは、中部大学およびプラハ・カレル大学、九州大学との国際共同研究グループはにより、花をつくる幹細胞が自己複製の状態から細胞の分化に切り替える仕組みを数理的なシミュレーションで予測し、その時期を人為的に改変する操作に初めて成功しました。この成果により、植物の幹細胞のすごい能力を人為的に調節できるようになれば、種や果実の大きさや数を操作することで、食糧の安定な供給が期待できます。


 伊藤教授らの国際共同研究グループは、モデル植物であるシロイヌナズナの花の幹細胞を使って実験を重ねた結果、細胞の核の中で DNA を巻き取って収納しているヒストンというタンパク質について、3 つのメチル基を付与(トリメチル化)されたアミノ酸が特定の位置に連結したヒストンの数と、分化を引き起こす遺伝子が誘導される時期との間に高い相関があることに気付きました。この相関に注目して、トリメチル化されたヒストンの数と分化遺伝子の誘導時期の関係を方程式により、数学的に明らかにしました。さらに、このタイプのヒストンの数を人為的に増やすと、方程式で計算される時期に分化遺伝子が誘導されることを突き止めました。植物の幹細胞が自己複製から分化へと切り替わるときの普遍的な仕組みを知るだけでなく、その仕組みを有効に使って農業や園芸の分野で利用していくうえでも非常に重要な成果です。

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図2.H3K27me3をもつヒストンを増やした実証実験
(a) KNU遺伝子の発現のタイミング
(b) H3K27me3をもつヒストンを3つ増やした発現解析
(c) H3K27me3をもつヒストンを6つ増やした発現解析

 


 この研究成果は、米国時間の 2023 年 5 月 5 日(金)付で、米国の科学雑誌「The Plant Cell」オンラインアドバンス版に掲載されました。(DOI:10.1093/plcell/koad123

 

◆詳しくはこちらをご覧ください(奈良先端科学技術大学院大学ホームページ

 

<発表論文>

タイトル:AGAMOUS regulates various target genes via cell cycle-coupled H3K27me3 dilution in
floral meristems and stamens
著者:Margaret Anne Pelayo1, Fumi Morishita1, Haruka Sawada1, Kasumi Matsushita1, Hideaki Iimura1,
Zemiao He2, Zemiao He1,2, Liang Sheng Looi1, Naoya Katagiri1, Asumi Nagamori1, Takamasa Suzuki3,
Marek Širl4, Aleš Soukup4 Akiko Satake5, Toshiro Ito1, Nobutoshi Yamaguchi1
所属:1. 奈良先端科学技術大学院大学 2. シンガポール国立大学 3. 中部大学 応用生物学部 4. プラ
ハ・カレル大学 5. 九州大学 理学研究院
掲載誌:The Plant Cell
DOI: 10.1093/plcell/koad123

【原著論文】少数派の利益に関わる変異を探すためのGWAS(清水班)

April 6, 2023 2:18 PM

Category:論文発表

main:清水班

計画研究・清水健太郎教授グループ(チューリッヒ大学・横浜市立大学)の佐藤安弘上級助手らが千葉大学との共同研究で行った頻度依存選択のゲノムワイド関連解析(GWAS)が米国進化生物学会誌Evolutionに発表されました。

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頻度依存選択とは特殊な自然選択圧の1つで、少数派の対立遺伝子が有利になる負の頻度依存選択と、多数派の対立遺伝子が有利になる正の頻度依存選択の2つがあります。特に負の頻度依存選択は、少数派の変異が集団から排除されるのを防ぐので、遺伝的多様性を安定的に維持する大事な要因です。例えば、病原抵抗性の進化では、新たに生じた少数派の変異が病気から逃れるために有利になることがあります。植物の生殖に関わる形質でも、送粉者を介した負の頻度依存選択によって異なる花の色のランが共存できることが知られています。

これまでに我々は、統計力学のイジングモデルを用いて、個体間相互作用を取り入れたGWAS手法NeighborGWASを開発してきました(Sato et al. Heredity 126:597-614, 2021, https://www.nature.com/articles/s41437-020-00401-w) 。今回さらに、 1遺伝子座-2対立遺伝子座からなる頻度依存選択のモデルに拡張しました。そして、野外栽培したシロイヌナズナの花茎の数を解析しました。その結果、花茎数と相関が強かったSNPには正よりも負の頻度依存選択に関わるものが多く見られました。さらに、これらのSNPの近くには病原菌抵抗性に関わる遺伝子が見られたことから、負の頻度依存選択に関わる既知の機能と比べても妥当な結果が得られたと考えられます。

ここまで読んで、植物の生殖に詳しい方々は「自家不和合性システムに対する負の頻度依存選択にも使えないのか」と問われるかもしれませんが、現状では2対立遺伝子までしか対応できていません。3型以上の場合にもSNPマーカーを基にしたGWASで検出できるかは今後の課題です。

 

<発表論文>

Yasuhiro Sato, Yuma Takahashi, Chongmeng Xu, Kentaro K. Shimizu,

Detecting frequency-dependent selection through the effects of genotype similarity on fitness components. 

Evolution, Volume 77, 1145-1157, 2023

https://doi.org/10.1093/evolut/qpad028

第64回日本植物生理学会にてスポンサードシンポジウムを開催しました

April 3, 2023 10:29 AM

Category:学会での企画

main:奥田班, 榊原班, 藤井班, 赤木班

2023年3月15日、仙台で行われた第64回日本植物生理学会にて、計画研究班の榊原恵子准教授(立教大学)と藤井壮太准教授(東京大学)との共同オーガナイズによるシンポジウム「植物の挑戦的な生殖メカニズムと繁殖適応」が、本領域によるスポンサードセッションとして共同開催されました。

 当領域からは領域代表の赤木先生(岡山大学)、奥田先生(東京大学)、養老先生(立教大学・榊原班)、藤井先生も登壇し、領域の研究成果について活発な議論が交わされました。

 

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

 

*プログラム詳細はこちらから

https://jspp.org/annualmeeting/64/pdf/symposium_ja.pdf

 

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【レポート】The Plant & Animal Genome Congress (PAG) 30参加と、国際トウモロコシ・コムギ研究所(CIMMYT)訪問

March 23, 2023 2:15 PM

Category:レポート

main:清水班

場所:Town and Country Hotel, San Diego, USA / International Maize and Wheat Improvement Center (CIMMYT), Mexico

日時:2023113日〜118/ 2023122日〜124

 

1月13日から18日まで、San Diegoにて開催されたPlant & Animal Genome Congress (PAG) 30に参加しました。次いで、メキシコにある国際トウモロコシ・コムギ研究所(CIMMYT)122日から24日まで訪問しました。本渡航は、学術変革領域「挑戦的両性花原理」の国際会議参加支援を受けました。まずは本支援に深く感謝を申し上げます。

 

PAGではポスター発表を行いました。また、生物種を問わず「ゲノミクス」の最先端で研究をされている数多くの研究者の方々のご講演や、ポスター発表を通じて、研究の成果や進捗を議論でき、研究を進展させるための新しい知見や刺激をたくさん得ることができました。

 

PAGに続いてメキシコのCIMMYTを訪問し、コムギ品質研究の専門家であるDr. Maria Itria Ibbaや、コムギ分子育種の専門家であるDr. Susanne Dreisigackerら共同研究者と議論を行いました。コムギ育種の現場をよく知る研究者と話せたことは、新たな共同研究テーマの始動だけでなく、必要とされているコムギ研究の方向性を考える良い機会となりました。また、CIMMYTが管理しているCGIARシードバンクの見学では、その規模の大きさや種子を正確に維持するための徹底した管理方法などを見ることができ、遺伝資源保存の重要性を再認識できました。

 

今回の学会参加、CIMMYT訪問の経験を今後の自身の研究発展に活かしていきたいです。

 

岡田萌子

横浜市立大学・木原生物学研究所(清水班)

 

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