研究経過
植物受精卵の発生は体細胞が融合するとどうなるか?〜"Zygote-soma hybrid cell"を構成する配偶子と体細胞の比率が細胞運命を左右することが明らかに〜(井澤班)
August 25, 2026 2:20 PM
Category:論文発表
main:井澤班
東京大学農学生命科学研究科の戸田絵梨香特任研究員と井澤毅教授、東京都立大学理学部の亀川拓夢学部生(研究当時)と理学研究科の岡本龍史教授らの研究グループは、イネ受精卵発生における体細胞融合の影響について明らかにしました。
本研究では、イネ花から単離した雌雄配偶子を融合して受精卵を作出するin vitro受精系を用いて、受精卵(卵細胞×精細胞)にさらに葉由来のプロトプラストを融合することで、受精卵-体細胞融合細胞(Zygote-soma hybrid cell)を作出し、それらの発生プロファイルを解析しました。その結果、Zygote-soma hybrid cellが、それらを構成する配偶子と体細胞の比率によって、異なる発生プロファイルを示すことを明らかにしました(図)。本研究成果により、植物受精卵の発生可塑性を支える細胞動態および分子機構の解明に向けた研究の進展が期待されます。
本研究成果は、「Plant and Cell Physiology」誌に2026年7月31日付で掲載されました。

図.イネ受精卵-体細胞融合細胞の作出(一例)およびその発生プロファイル
<発表論文>
雑誌:Plant and Cell Physiology
題名:Effects of somatic cell fusion on zygotic development in rice
著者:Erika Toda*, Takumu Kamekawa, Takeshi Izawa, Takashi Okamoto
DOI:10.1093/pcp/pcag110
Fuhrmann Aoyagi Martina Bianca博士研究員がNature PlantsのNews & Viewsを執筆(木下班)
August 20, 2026 3:14 PM
Category:論文発表
main:木下班
木下班のFuhrmann Aoyagi Martina Bianca博士研究員がNature Plants に掲載された論文に関して、同雑誌のNews&Viewsにおいて解説しました。シロイヌナズナのポリコーム複合体構成因子は中央細胞において受精が成立するまで胚乳発生を抑制しています。その協働因子が長らく不明でしたが、TIE1という転写抑制因子が見つかり、しかもその遺伝子がポリコーム複合体構成因子のMEDEA同様にゲノム刷り込みを受けていることを解説記事では紹介しています。
◆解説記事の日本語での紹介はこちらをご覧ください>横浜市立大学のHPへ
News & Views
Martina Bianca Fuhrmann-Aoyagi & Tetsu Kinoshita
TIEing down the central cell proliferation
Nature Plants 12(8):1426-1427
DOI:10.1038/s41477-026-02351-3
【プレスリリース】ダイズ種子発生のエピジェネティクス --ダイズの種子発生を支える クロマチン制御機構の一端が明らかに--(殿崎班・川勝班)
June 12, 2026 10:07 AM
Category:プレスリリース, 論文発表
main:川勝班, 殿崎班
植物を含む真核生物の核ゲノムは、遺伝子を多く含み比較的活発に働く「ユークロマチン」と、トランスポゾン(動くDNA配列)などの反復配列を多く含む「ヘテロクロマチン」と呼ばれる領域に大別されます。植物では、ヘテロクロマチンはDNAメチル化などによりエピジェネティックスに抑制されており、この抑制にはクロマチンリモデリング因子のDecreased in DNA methylation 1 (DDM1) が中心的な役割を果たしています。
横浜市立大学木原生物学研究所の殿崎薫准教授、新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程のAhsen Gersさん、同大学農学部の深井英吾准教授、農研機構の加賀秋人グループ長、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授、理化学研究所バイオリソース研究センターの川勝泰二室長らの研究グループは、ダイズではDDM1がユークロマチンの遺伝子の発現制御にも関与していることを明らかにしました。
本研究成果は、2026年5月21日、英国科学誌「The Plant Journal」の電子版に掲載されました。
◆詳細はこちらをご覧ください>横浜市立大学のHPへ
<論文情報>
【論文タイトル】Differential regulation of heterochromatin and euchromatin by GmDDM1 during seed development ensures seedling viability in soybean.
【著者】Ahsen Gers, Kana Shiraishi, Kaoru Tonosaki, Satoru Okamoto, Akito Kaga, Ryota Kuroda, Jun-Ichi Matsuoka, Atsushi Toyoda, Taiji Kawakatsu, Chiho Maruko, Kazuki Takahashi, Keiichi Okazaki, Moeko Okada and Eigo Fukai
【doi】10.1111/tpj.70921
本領域メンバーが令和8年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞しました(殿崎班)
April 9, 2026 11:53 AM
Category:受賞
main:殿崎班
公募研究班・横浜市立大学木原生物学研究所の殿崎薫准教授が、令和8年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞しました。
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めています。
そのなかで若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者個人に贈られるものです。
なお、表彰式は、令和8年4月15日に文部科学省で執り行われました。
受賞者
横浜市立大学 木原生物学研究所
(植物エピゲノム科学部門)
殿崎 薫 准教授
研究業績課題名
種の障壁を規定するゲノムインプリンティングに関する研究
詳しくは、下記をご確認ください。
【プレスリリース】コムギの収量を下げる有害変異の除去を目指して 〜日本品種農林61号など世界10品種ゲノムDNA解析〜(清水班)
February 3, 2026 9:26 AM
Category:プレスリリース, 論文発表
main:清水班
横浜市立大学木原生物学研究所 清水健太郎客員教授(チューリッヒ大学 進化生物・環境学研究所・所長・教授兼任)、新潟大学農学部 岡田萌子助教(前横浜市立大学特任助教)らの研究グループは、国際10+コムギゲノムプロジェクトとの共同研究で、日本を代表する品種である農林61号を含む、世界の普通系コムギ10品種(図1)のゲノムDNA変異と遺伝子発現の大規模解析を行い、有害突然変異にはたらく純化選択(淘汰)を網羅的に検出しました。その結果、根で発現しコムギの生育環境の拡大に関連する遺伝子群に、強い純化選択が検出されました。これらの有害突然変異や純化選択についての情報は、今後の世界のコムギ安定生産に向けた育種戦略に有用な情報基盤として、ゲノム育種を推進すると期待されます。
本研究成果は、国際科学誌「Cell Reports」に掲載されました(2026年1月27日午前1時公開)。

図1 解析に用いた世界のコムギ10品種。国際10+コムギゲノムプロジェクトなどにより高精度のゲノムDNA配列情報と遺伝子発現情報が得られた。
◆詳細はこちらをご覧ください>横浜市立大学のHPへ
<論文情報>
タイトル:Purifying selection on deleterious variants affected by the combination of subgenomes and gene expression in bread wheat
著者:Gwyneth Halstead-Nussloch*, Moeko Okada*, Georg Haberer, Thomas Lux, ASM Faridul Islam, Masaomi Hatakeyama, Roman Briskine, Benjamen White, Anthony Hall, Curtis Pozniak, 10+ Wheat Genome Project, Manuel Spannagl, Timothy Paape$, and Kentaro K. Shimizu$
(*:共同筆頭著者、$:共同責任著者)
掲載雑誌:Cell Reports
DOI:10.1016/j.celrep.2025.116785