文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
広報/アウトリーチ
2014年9月25日、山元はドイツのミュンヘンにあるLudwig Maximilian
Universityにて、"Molecular neuroethology of Drosophila courtship: from the gene to
behavior"と題する招待講演を行いました。同日、米国Janelia Farm Research CampusのUlrike Heberlein博士も同大学で"酔っぱらいのハエ"について講演し、ショウジョウバエ行動遺伝学への関心の高まりが実感されました。ミュンヘン市内はおりしもオクトーバーフェストのにぎわいのまっただ中にありました。
科学研究費の申請書にも近年、実施が義務づけられている「国民との科学・技術対話」の推進。鈴木班でも、小中高への出前講義を通したアウトリーチ活動を広く展開し、国民へ科学・技術を還元します。 前々回が3月末まで、前回が6月末までという、昨年度でした。今回は、5月から9月の第2四半期における研究分担者・渡辺のアウトリーチ活動をまとめておきます。詳しい内容は、研究室のHPに記してありますので、興味のある方は、ぜひ、以下のlinkをご覧ください。講義内容は、今回は小学校、高校、一般の方、向けで、内容は植物の生殖などに関わる講義、実験、見学サポートなどです。
福島県立福島高等学校(1, 2, 3)
秋田県立秋田南高等学校(1, 2, 3)
宮城県宮城第一高等学校(1, 2, 3)
岩手県立盛岡第三高等学校(1, 2)
宮城県仙台二華中学校(1)
仙台市立七北田小学校(1, 2)
夏休み大学探検2014(第13回サイエンス・スクール)(1)
飛翔型「科学者の卵養成講座」(1, 2, 3, 4, 5)
石川県立小松高等学校(1)
石川県立金沢泉丘高等学校(1)
平成26年度スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会(1, 2)
日英若手科学者ワークショップ10周年記念(1)
Google サイエンスフェア in 東北 2014年(1)
平成26年みやぎ県民大学(1)
鹿児島県立錦江湾高等学校(1, 2, 3)
仙台白百合学園中学・高等学校(1)
仙台市立木町通小学校(1)
愛媛県立今治南高等学校(1)
愛媛県立今治西高等学校(1)
岡山県立倉敷天城中学校(1)
今後も引き続き、社会貢献ができる領域であるように努力したいと思います。
わたなべしるす
研究成果
ショウジョウバエも種によって求愛の仕方は異なります。たとえば、雄が雌に正面から求愛するDrosophila subobscuraという種もいれば、雄が雌の後に回って求愛するD. melanogaster(キイロショウジョウバエ)もいます。キイロショウジョウバエの雄から嗅覚と視覚のどちらか一方を剥奪しても雌の後に回って求愛することにかわりはありません。嗅覚と視覚の両方を取り除いて初めて"前後の見境なく"雌に求愛するようになりました。雄が雌の頭とお尻を区別する際に使っている嗅覚的・視覚的手がかりは何なのか、興味ある課題です。本論文は、北海道教育大学の木村賢一教授のグループと山元の共同研究の成果です。
出典:Kimura, K-i., Sato, C., Yamamoto, K. and Yamamoto, D. (2014) Journal
of Neurogenetics (in press).
図:求愛のため片翅を震わせるキイロショウジョウバエの雄(佐藤耕世による)
日本遺伝学会第86回大会で、小林が世話人となって、ワークショップ「
DNA の破壊と修復と再編:塩基切り出しの役割をめぐる新展開 Recent excitements in DNA base
excision」を開催しました。小林、木下哲教授(本領域、横浜市立大学)、村松正道教授(金沢大)、中別府雄作教授(九大)が講演しました。
DNA の塩基の切り出しは、DNA
塩基への損傷からの修復という観点から研究される事が多かったのですが、エピジェネティックなメチル化塩基の排除に関与することが、動物植物で明らかにな
りました(木下)。さらに、原核生物では、エピジェネティックな塩基メチル化の有無によって非自己DNA
を破壊する制限修飾系に、塩基切り出しによるものが発見されました(小林)。また、塩基切り出し酵素は、抗ウイルス活性や抗体遺伝子の多様性増幅機構への
関与が示さ
れ(村松)、さらには細胞死による発がん抑制や神経変性をもたらす事も明らかになってきました(中別府)。
DNA
の塩基の切り出しが、遺伝過程、エピジェネティックス過程、個体恒常性維持で果たす予想外に大きな役割とその分子機構について、活発なディスカッション
が、ワークショップと、その前後のナイトセミナー、懇親会でも行われました。これまでエピジェネティックス、DNA複製・修復・組換え、細胞死の
研究として進んできたものが、脱塩基サイトを巡って合流することが感じられました。