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交雑適合性に関わる遺伝子間の調和と軋轢の分子機構

奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 高山 誠司
名古屋大学 大学院理学研究科 東山 哲也

 有性生殖は、ゲノムの混合を介して遺伝的に多様な子孫を残す仕組みである。ここでは、雌雄ゲノム間の様々な相互作用を介して「適切」な交配相手の選別が行われている。植物の自家不和合性は、Sと名付けられた1遺伝子座上のハプロタイプの異同を基に「不適切」な自家受粉(近親交配)を回避する仕組みである。S遺伝子座上には、ハプロタイプ毎に異なる構造を持つ花粉因子と雌ずい因子がコードされており、両因子間の相互作用を介して自他識別が行われている。この様に相互作用する多数の複対立遺伝子が1座位に連鎖しているため、自家不和合性は「ゲノム・遺伝子相関」研究の格好の標的となりうる。我々は、これまでアブラナ科やナス科・バラ科などの植物種の雌雄因子の実体解明と相互作用解析を進めてきた。その過程で、(1) アブラナ科植物の花粉因子の複対立遺伝子間の「優劣性」が、優性側対立遺伝子近傍で生成する低分子RNAによる劣性側対立遺伝子のメチル化修飾を介して制御されている事例を発見した。これは、「優劣性」という古典的な対立遺伝子間相互作用にエピジェネティクスが関与しうることを示した最初の例である。また、(2) アブラナ科植物は、花粉因子と雌ずい因子を1分子ずつ用いる「自己認識」システムを進化させてきたのに対し、ナス科・バラ科植物は、1つの雌ずい因子に対し多数の花粉因子を利用する協調的「非自己認識」システムを進化させてきたことを発見した。いずれも自己花粉の排除という共通の機能を持つが、両システムの進化の経緯は全く異なることが予測された。
 こうした、ゲノム・遺伝子相関の仕組みは、自家不和合性以外の様々な生命現象の中にも潜在し、高次生命機能の調節や進化に寄与しているものと推察される。本研究では、我々が見出した上記2つの「ゲノム・遺伝子相関」についてさらに詳細に解析し、内在する分子機構と進化の経緯を明らかにすること、さらに類似の機構に基づく生命現象を広く探索し、これらの仕組みの普遍性を検証することを目的とする。

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