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研究室の秋山玲子博士(本新学術第1期のポスドク研究員)、畠山剛臣博士とともに、過去150年にスイスで誕生したタネツケバナ属の新種倍数体や、日本で広い標高分布をもつミヤマハタザオについて、ゲノミクスを用いた新たな挑戦について紹介しました。JSTのサイエンスニュース事業としてヨーロッパで初めての撮影だと聞いています。

JSTサイトまたはYoutube

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自殖の進化は被子植物で最も頻繁に起こった進化と考えられてきました。繰り返しの進化パターンから、適応進化での法則性を抽出し、進化の予測に向かっていこうとしています。たとえば、同じ遺伝子の変異が違う種で繰り返しみられるのか? 劣性の変異は進化でふるい落とされやすいのか(ホールデンの篩)? 新学術での共同研究の内容(2012年の記事:ゲノム重複を経た倍数体種のオス・メス自家不和合性遺伝子についての論文がPLoS Genetics誌に掲載されました;2015年の高山班の記事:雌雄因子ゲノム遺伝子相関に関する研究成果がNature Plantsに掲載されました)から、 多くの自然種で繰り返して、雄特異性因子の変異で自家和合性が進化したことが分かってきました。これは、雄・雌の遺伝的な性的利害の対立の理論を支持します。Annual Review in Ecology, Evolution and Systematicsの執筆は共著の土松とともに相当のエネルギーが必要で、ご一読いただければ幸いです。高山先生や渡辺先生をはじめ新学術の多くの方々に貴重なコメントをいただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

 

Shimizu, K.K., Tsuchimatsu, T. (2015) Evolution of selfing: recurrent patterns in molecular adaptation. Annual Review of Ecology, Evolution and Systematics, 46, 593-622.

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食虫植物の消化器官は、植物の胃ともいわれますが、その機能はまだまだ未知です。ボルネオのランビル・ヒルズ国立公園の熱帯雨林でサンプルを採集し、Roche 454シークエンサーでリボソーム領域を解析したところ、動物の腸内細菌よりむしろ、葉面(phylosphere)のバクテリア相に類似していました。食虫植物の消化器官が葉の発生学的な変形であることに由来すると考えています。

写真:ランビル・ヒルズ国立公園のウツボカズラ

 

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0723202015000909

Takeuchi, Y., Chaffron, S., Salcher, M.M., Shimizu-Inatsugi, R., Kobayashi, M.J., Diway, B., von Mering, C., Pernthaler, J., Shimizu, K.K. (2015) Bacterial diversity and composition in the fluid of pitcher plants of the genus Nepenthes, Systematic and Applied Microbiology, 38, 330-339 (オープンアクセス)

NepenthesLambir.jpg


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総説が出版されました。

下記の総説が出版されました。
ご一読いただけると幸いです。

Peptide signaling in pollen tube guidance
Masahiro M Kanaoka, Tetsuya Higashiyama
Current Opinion in Plant Biology, vol28, 127-136, 2015.
doi:10.1016/j.pbi.2015.10.006
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1369526615001624

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動植物の有性生殖システムは多様性に富んでおり、雌雄同体(多くの被子植物やカタツムリなど)から雌雄異体(ヒトやアスパラガスなど)が何度も進化したと考えられている。その進化の中間段階として、両性個体と雌(雄性不稔)が共存する雌性両全性異株gynodioecyが考えられている(ハマダイコンなど)。一方、その逆に、両性個体と雄(雌性不稔)が共存する雄性両全性異株androdioecyについては、チャールズ・ダーウィンが1877年に調査の限りで存在しないと述べている。ダーウィン以降、動植物それぞれ数例程度(C. elegansなど)が報告されてきていた。雄個体が存在し続けるためには、精子または花粉を通じて2倍以上の子孫を残すという厳しい条件を満たす必要があるというのが、雄性両全性異株が稀であることの理論的背景である。

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我々はシロイヌナズナ近縁種の繁殖システムを研究する中で、スイスなどの川沿いに生育するタネツケバナ属Cardamine amaraが雄性両全性異株を持つことを予想外にも発見した。雄個体では雌しべが未発達で、種子を作れなくなっていた(写真、バックグラウンド:Cardamine amara, 左:両性個体の花、右:雄個体の花)。これまでの理論的・実証的研究では、花ごとの花粉数は雄が2倍以上であることが予想され、また雄の頻度は50%以下であるはずだが、Cardamine amaraどちらも満たしていないように見えた。マイクロサテライトマーカーを用いて個体識別をしたところ、雄個体は種子をつくれないかわりに、無性繁殖によって川の流れに沿って多数のクローンを増やしていることがわかった。つまり、クローンを含めて考えれば雄の花粉数は2倍以上であり、遺伝子頻度で見れば雄は50%以下という条件を満たしていた。シロイヌナズナに近縁であることを活かして、マイクロアレイ解析を行い、雌しべ発生などの遺伝子の発現量が有意に異なることがわかった。今後、雄のゲノム進化のモデル系にしていきたい。


 ナショナルジオグラフィックのインタビューでも紹介されています。 


Tedder, A., Helling, M., Pannell, J.R., Shimizu-Inatsugi, R., Kawagoe, T., van Campen, J., Sese, J., and Shimizu, K.K. (2015) Female sterility is associated with increased clonal propagation in populations of Cardamine amara (Brassicaceae), Annals of Botany, 115: 763-776

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