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 イネいもち病菌の大規模遺伝子破壊解析により、胞子生産および培養菌糸のメラニン化に必要とされるヘキソーストランスポーター様タンパク質遺伝子MoST1が同定された。MoST112個の推定膜貫通領域を含む547アミノ酸からなるタンパク質をコードしている。MoST1遺伝子破壊株(most1)では培養菌糸のメラニン化が抑制され、most1の胞子生産量が著しく減少した。これらの表現型はMoST1の再導入によって相補された(most1+MoST1)。Magnaporthe griseaデータベース(http://www.broadinstitute.org/annotation/fungi/magnaporthe/)を用いてMoST1アミノ酸配列のBLASTP検索を行った結果、他の66個のヘキソーストランスポーター様タンパク質遺伝子が見出された。その中の3つの遺伝子がコードするタンパク質はMoST1と高い相同性を示した。そこで、MoST1プロモーターの下流にこれら3遺伝子をそれぞれ融合させたベクターでmost1を形質転換した結果、いずれの形質転換体においてもmost1の胞子生産と菌糸のメラニン化の欠損は相補されなかった。以上の結果から、MoST1は、イネいもち病菌のヘキソーストランスポーター群の中で、胞子生産と菌糸のメラニン化に特異的な役割を担うタンパク質であることが明らかとなった。

 

Saitoh, H., Hirabuchi, A., Fujisawa, S., Mitsuoka, C., Terauchi, R. and Takano, Y.

FEMS Microbiology Letters (2014) 352: 104-113

 

論文紹介 (齋藤@岩手生工研)


MoST1_fig.jpg

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日本遺伝学会第85回大会にて本領域との共催WS「異なるゲノム間の軋轢と協調 〜相互作用のゲノミクス〜」が開催されました

2013年9月21日(土)に慶応大学日吉キャンパスで開催された日本遺伝学会第85回大会にて、本領域との共催ワークショップ「異なるゲノム間の軋轢と強調 〜相互作用のゲノミクス〜」を開催し、領域内の寺内、松田、岡がそれぞれの研究対象とするゲノム間の相互作用についての講演を行いました。また、北大の久保友彦先生に、ミトコンドリアと核のコンフリクトのお話をしていただきました。改めて、「病原菌と宿主」、「雌雄」、「亜種間」、「ミトコンドリアと核」など、植物動物の様々なレベルでのゲノム間相互作用を見ていくと興味深い現象が数多く見えてくること、また遺伝子重複やエピジェネティクスを含む転写調節機構の進化など共通性のある要素が存在することが浮き彫りとなりました。学会最終日の午後でしたが、50名を超える来聴者を迎えて有意義なワークショップを行うことができました。また、本大会では本領域の田中、北野による共催シンポジウムも開催され大変盛況でした。

大阪教育大学 鈴木剛
首都大学東京 高橋文

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新学術領域「ゲノム・遺伝子相関」共催ワークショップ「異なるゲノム間の軋轢と協調 ~相互作用のゲノミクス~」--日本遺伝学会85回大会--

 2013年9月19日から21日に東京工業大学で開かれる日本遺伝学会85回大会にて、日本遺伝学会と新学術領域「ゲノム・遺伝子相関」との共催でワークショップ「異なるゲノム間の軋轢と協調 ~相互作用のゲノミクス~」を開催します (http://gsj3.jp/taikai/85taikai/index.html)。

DSCN7306.JPG9月21日(土)13:30~15:15
「異なるゲノム間の軋轢と協調 ~相互作用のゲノミクス~」
世話人:鈴木 剛 (大阪教育大学)、高橋 文 (首都大学東京)

13:30 WS10 はじめに ○鈴木 剛(大阪教育大学)

13:35 WS10-1 花粉形成をめぐって生ずるミトコンドリアとのコンフリクトを、核はどうやって解消するか:テンサイ(サトウダイコン)の事例
○久保 友彦(北海道大学大学院農学研究院)

13:59 WS10-2 マウス亜種間ゲノム多型による転写調節のゆらぎと生殖隔離
○岡 彩子1、城石 俊彦2(1)情報・システム研究機構 新領域融合研究センター、2)情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所)

14:23 WS10-3 植物-病原菌相互作用の集団ゲノム解析
○寺内 良平((公財)岩手生物工学研究センター 生命科学研究部)

14:47 WS10-4 異種ゲノムの不適合性が引き起こす雑種の不妊・発育不全現象の遺伝的制御機構
○松田 洋一(名古屋大学大学院生命農学研究科動物遺伝制御学研究分野)

15:11 WS10 討論 ○高橋 文(首都大学東京)


 一部、講演の順序が変更されるかもしれませんので、ご注意頂ければと思います。

 直前のお知らせとなりましたが、学会に参加される方、会場でお会いできればと思います。


 すずき・たかはし

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 これまでに、当研究グループでは、次世代シーケンサーを用いて、迅速に突然変異体の原因遺伝子を同定する技術としてMutMap (Abe et al. Nature Biotechnol, 2012) を確立しました。しかし、MutMap法を直接適用できない場面があったので、MutMap法を基礎として新たに「MutMap+法」と「MutMap-Gap法」を開発し報告しました。

  MutMap+法は、突然変異体の自殖後代において、野生型と変異体型のバルクシーケンスの結果を比較して変異体の原因遺伝子を同定する手法です。致死や不稔といった形質の解析は、交配を必要とする従来のMutMap法では困難でしたが、MutMap+法により容易になりました。さらに、MutMap+法は人工的な交配が困難な植物種にも適用できます。

 MutMap-Gap法は、MutMap法とde novo assemblyという技術を併用することで、基準ゲノム配列 (イネでは「日本晴」の配列) に存在しないゲノム領域において変異遺伝子の同定を可能にする技術です。MutMap-Gap法を用いることで、北東北の主力イネ品種「ひとめぼれ」からいもち病に対する抵抗性遺伝子Piiを単離することに成功しました。

 現在、様々な生物種において、全ゲノム配列解読が進んでいます。ゲノム解読が完了した生物種において、MutMapシリーズを活用することにより、遺伝解析が容易かつ迅速化することが期待されます。

MutMap_fig.jpg

Fekih R, Takagi H, Tamiru M, Abe A, Natsume S, Yaegashi H, Sharma S, Sharma S, Kanzaki H, Matsumura H, Saitoh H, Mitsuoka C, Utsushi H, Uemura A, Kanzaki E, Kosugi S, Yoshida K, Cano L, Kamoun S, Terauchi R. (2013) MutMap+: Genetic Mapping and Mutant Identification without Crossing in Rice. PLoS ONE 8(7): e68529. doi:10.1371/journal.pone.0068529

 

 

Takagi H, Uemura A, Yaegashi H, Tamiru M, Abe A, Mitsuoka C, Utsushi H, Natsume S, Kanzaki H, Matsumura H, Saitoh H, Yoshida K, Cano LM, Kamoun S, Terauchi R. (2013) MutMap-Gap: whole-genome resequencing of mutant F2 progeny bulk combined with de novo assembly of gap regions identifies the rice blast resistance gene Pii. New Phytol. doi: 10.1111/nph.12369.


論文紹介 (寺内@岩手生工研)

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XV International Society of Molecular Plant-Microbe Interactionsを開催

 植物病理分野で最も権威のある学会の一つであるXV International Society of Molecular Plant-Microbe Interactionsを平成24年 7月29日- 8月2日にかけて京都国際会館で開催しました。「分子レベルで植物と病原体の相互作用を解析する」ことを目的とする総合学会で、生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝学などの関連分野の研究者らが多数参加しました。
 本会では、全世界の42カ国からおよそ1000人が京都に集い、海外から約650名もの参加者が有りました。このことは、本研究分野が世界レベルで重要であることを示しています。これまでの開催はすべて欧米で行われてきましたが、今回、初めて欧米以外の地域で開催されました。
 若手研究者の参加を促すため、学生の参加費の大幅な割引や学生を対象にしたTravel Awardsを設け、若手研究者の参加を促しました。また、若手研究者の育成にも力を入れ大会初日には、若手研究者主催によるワークショップを開催しました。このように、次世代を担う、若手研究者の育成にも貢献しました。


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