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【奈良先端大】高山班の記事を表示しています

雌雄因子ゲノム遺伝子相関に関する研究成果がNature Plantsに掲載されました

今回の成果は、ナス科植物ペチュニアの自家不和合性において花粉因子として機能するS-遺伝子座F-boxタンパク質(SLFs)を、次世代シーケンサーを用いた花粉トランスクリプトームの大量解析によって徹底的に探索した結果をまとめたもので、班友・清水博士との共同研究の成果です。
 植物の自家不和合性(SI)システムは、自己/非自己を識別し、自殖を防いでいます。既知のSIシステムは、全て単一の雄性−雌性因子間での自己特異的な結合を介して不和合性反応を誘起し、自殖を抑制するものでした。一方、ナス科植物では、雌しべに発現する単一の雌性因子S-リボヌクレアーゼ(S-RNases)を、花粉に発現する複数の雄性因子SLFsが非自己特異的に解毒することで他殖を促進していることを、これまでの研究において明らかにしてきました。しかしながら、そのような非自己認識システムが、いくつのSLFコンポーネントによって構成されているのか、判っていませんでした。
 今回、網羅的な遺伝子解析から、個々の花粉は16~20種類のSLFsを持つことを明らかにしました。これらのSLFsが分担して協調的に非自己S-RNaseの認識にあたることで、50種類以上ある非自己S-RNaseのほぼ全てが解毒可能であることを、形質転換実験と簡単な数理モデルに基づいて示しました。さらに、1億2千万年以上の長い年月をかけてS-RNaseとSLFsが共進化してきたこと、多数のSLFsの獲得に際し、遺伝子重複と遺伝子交換が重要な役割を果たしてきたことを示唆しました。また、各々のS遺伝子は自己S-RNaseを認識するSLFsを獲得しない方向に進化していること、逆に獲得した場合は自家和合性株に変異することを、新たな証拠に基づき示しました。
 本論文で論じている雌雄因子間の相関は、病原性因子と抵抗性因子の相関関係と酷似しており、相関遺伝子群の共進化過程を探るための優れたモデル系となることが期待されます。本成果は、Nature Plantsの創刊号に掲載され、本研究で扱ったペチュニアの花の写真が表紙に選ばれました。現在オープンアクセス中ですので、ご一覧いただければ幸いです。
Gene duplication and genetic exchange drive the evolution of S-RNase based self-incompatibility. 
Kubo, K., Paape, T., Hatakeyama, M., Entani, T., Takara, A., Kajihara, K., Tsukahara, M., Shimizu-Inatsugi, R., Shimizu, K.K., Takayama, S.
Nat. Plants (2015) 1: 14005. 
http://www.nature.com/articles/nplants20145
高山班201501.jpg

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第37回日本分子生物学会年会で、ワークショップ「動植物における生殖戦略とその分子基盤」を開催しました。

 第37回日本分子生物学会年会で、北野、渡辺がオーガナイザーとなって、ワークショップ「動植物における生殖戦略とその分子基盤」を開催しました。本領域からは、高山教授(奈良先端大)、北野准教授(遺伝研)、東山教授(名古屋大)に講演頂き、また、班員外からも関連分野の方々、4名に話題提供頂きました。

DSCN5267.JPG 「生殖戦略」という観点から様々な現象を見て、その多様性、共通性が見いだされ、みなさんからも概ね好評だったかと。。。お世話になった先生方、ありがとうございました。


 わたなべしるす

DSCN5273.JPG PS. 渡辺のHPにも関連記事を記しておきました。あわせて、ご覧下さい。




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第37回日本分子生物学会年会・ワークショップ「動植物における生殖戦略とその分子基盤(2W14)」11月26日午後開催予定

 2014年11月25日(火)~27日(木)にパシフィコ横浜で開催される第37回日本分子生物学会年会において、ワークショップ「動植物における生殖戦略とその分子基盤(2W14)」を開催します (http://www.aeplan.co.jp/mbsj2014/japanese/program/program_workshop.html#i02)。

DSCN2858.JPG11月26日(水) 13:15-15:45
「動植物における生殖戦略とその分子基盤(2W14)」

場所:会議センター・4階, 第14会場
オーガナイザー:北野潤(国立遺伝学研究所), 渡辺正夫(東北大学)

オーガナイザーで予定している講演者は
高山誠司(奈良先端大):植物の自家不和合性機構の多様性と進化
北野潤(遺伝研):性染色体進化がトゲウオ適応放散に果たす役割
東山哲也(名古屋大):植物受精において繰り広げられるオスとメスのせめぎ合いと分子的実体

 それ以外の発表者は一般からの公募を予定しております。このワークショップにfitしたものがあれば、積極的に応募頂ければ、幸いです。また、学会に参加される方は、ワークショップにjoinして頂ければと思います。では、11月26日午後に横浜でお待ちしております。

DSCN2868.JPG
 北野(遺伝研)・渡辺(東北大)


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研究成果がPlant Journalに掲載されました

ナス科植物は、S遺伝子座にコードされた雌ずい因子S-RNaseと多数の花粉因子群SLFsとの相互作用を介して自家不和合性反応を制御していることが明らかにされてきました。雌ずいのS-RNaseは伸長してきた花粉管のRNAを分解する細胞毒として機能しているのに対し、花粉管内のF-boxタンパク質群のSLFsは侵入してきた非自己のS-RNaseを何らかの方法で無毒化していると推定されてきましたが、その詳細は不明のままでした。本研究では、まず共沈実験により、SLFが花粉内で、SSK1, CUL1-P, RBX1と典型的なSCF複合体を形成していることを明らかにしました。また、花粉より精製したSCFSLFが、E1, E2共存下で、特定の非自己S-RNaseをin vitroでポリユビキチン化することを証明しました。さらにポリユビキチン化された非自己S-RNaseが、花粉抽出液中でプロテアソーム依存的に速やかに分解されることを見出しました。本研究成果は、認識されたS-RNaseがポチユビキチン化されプロテアソーム系で分解されるということを強く示唆すると共に、我々が提唱するSLFsの協調的非自己S-RNase認識モデルをさらに支持するものとなりました。
Ubiquitin-proteasome-mediated degradation of S-RNase in a solanaceous cross-compatibility reaction
Entani, T., Kubo, K., Isogai, S., Fukao, Y., Shirakawa, M., Isogai, A., Takayama, S.
Plant J. (2014) 78, 1014-1021.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24689760

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研究成果がPlant Cellに掲載されました

アブラナ科植物の有性生殖において、花粉と雌ずいの接触に始まる初期受粉過程は、最初の雌雄ゲノム遺伝子相互作用の場として重要です。昆虫等により無作為に運ばれてくる花粉の内、異種の花粉(種間不和合性)や、同種であっても自己の花粉(自家不和合性)は、この段階で発芽・伸長できず排除されます。本研究では、同種の花粉表層物質中に、雌ずい乳頭細胞から花粉に向けてCa2+を含む水の供給を誘導する未知の物質が含まれていること、自己の花粉の場合にはその誘導が阻害されることを明らかにしました。また、和合受粉時の乳頭細胞から花粉へのCa2+供給に自己阻害型Ca2+ポンプの一種ACA13(autoinhibited Ca2+-ATPase 13)が関与することを明らかにしました。初期受粉過程における和合・不和合反応に関わる分子の一端を明らかにすることができました。
A pollen coat-inducible autoinhibited Ca2+-ATPase expressed in stigmatic papilla cells is required for compatible pollination in the Brassicaceae
Iwano, M., Igarashi, M., Tarutani, Y., Kaothien-Nakayama, P., Nakayama, H., Moriyama, H., Yakabe, R., Entani, T., Shimosato-Asano, H., Ueki, M., Tamiya, G., Takayama, S.
Plant Cell (2014) 26, 636-646.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24569769
高山班201402.jpg

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