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異種ゲノムの不適合性が引き起す雑種の不妊・発育不全現象の遺伝的制御機構

名古屋大学大学院 生命農学研究科 松田 洋一
自然科学研究機構 新分野創成センター ブレインサイエンス研究分野 郷 康広

 人類は古くから家畜や家禽を用いて種間・属間交配を行い、得られる雑種強勢 (ヘテロシス) 効果を農業や生活の向上に役立ててきた。しかし、異種ゲノムが出会うことで雑種に不妊や発育不全が生じることも知られている。ホールデンの法則 (1922) は哺乳類と鳥類によく当てはまり、哺乳類の異種間雑種はオス (XY型) に、鳥類ではメス (ZW型) に配偶子形成や発育の異常が顕著に現れる。また哺乳類では、交配に用いる両親の雄雌の組合せによって、F1 胎仔と胎盤の発育やF1 個体の表現型に差が生じることがあり、ゲノムインプリンティングの関与が示唆されている。しかし、これらの現象の遺伝的制御機構とその分子基盤はまだ十分に解明されていない。本研究では、げっ歯類とキジ科鳥類を用いて多様な雑種を作出し、染色体構造の違い、減数分裂時の染色体対合、配偶子形成阻害に関わる遺伝子群の同定とその発現・機能等について研究し、ホールデンの法則の分子基盤の解明を試みる。次に、雑種の発育に及ぼすエピジェネティック効果を明らかにするため、胎仔と胎盤の発育にかかわるインプリント遺伝子の発現制御機構に着目し、雑種における DNA メチル化インプリントの異常が発育不全を引き起こす分子メカニズムを探る。さらに、異種ゲノムの不適合性に起因するゲノムの不安定化現象に着目し、染色体異常や特定ゲノム領域の増幅と欠失、種特異的な遺伝子発現と発現量の違い、レトロエレメントの発現制御などの解析から、生殖隔離と種分化に及ぼすエピジェネティック変異の関与を明らかにする。
 本研究プロジェクトの初年度には、げっ歯類(マウス、ドワーフハムスター)とキジ科鳥類(ニホンウズラ、ニワトリ)の種間・属間雑種を用いて、(1) 雑種不妊と発育不全の分子・細胞学的要因の解明、 (2) 哺乳類の雑種発育不全に関わるエピジェネティック制御の解析、(3) 鳥類の雑種胚致死を引き起こす遺伝子の解析に関する研究を開始する。

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