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異種トゲウオ間のゲノム不適合と生殖隔離の分子機構

国立遺伝学研究所 集団遺伝研究系 生態遺伝学研究部門 北野 潤
東北大学 生命科学研究科 牧野 能士

 異種ゲノムが出会った際に生じる雑種異常や異種間交雑を防ぐ生殖隔離の分子機構について、野外動物において解明された例は殆どない。申請者らは、野外動物における種分化研究のモデル系を確立することを目的として、トゲウオ科魚類に着目し、国内外の研究者との必要な共同研究体制を整え、いくつかの成果を挙げてきた。例えば、硬骨魚類イトヨを用いて、野外脊椎動物の生殖隔離機構の遺伝子座マッピングに世界で初めて成功し、雑種不妊と行動隔離に関わる遺伝子が性染色体に集積していることを発見した(北野ら 2009 Nature; 北野ら 未発表)。さらに、トゲウオの近縁種間では性染色体の転座が頻繁に生じていることも明らかにした(Kitano and Peichel 2011 Env Biol Fish)。
 本研究では、野外脊椎動物のトゲウオをモデルにし、異種ゲノム間に存在する生殖隔離の分子機構を解明するとともに、種間での性染色体の構造変化やエピジェネティックス制御の変異が、種分化へ与える効果を解明する。具体的には、以下を目指す。

(1) トゲウオ亜種間で雑種不妊と行動隔離を引き起こす遺伝機構を解明  日本には、繁殖場所を同一にするものの生殖的に隔離された二型のイトヨ(日本海型イトヨと太平洋型イトヨ)が存在する。これら2型間の行動隔離や雑種不妊などの種分化に関わる遺伝子が性染色体に集積していることを発見してきた。本計画では、ゲノム解析技術を駆使して、この種分化の原因変異を特定し、生殖隔離の分子機構を解明したい。

(2) 交雑や性染色体転座が遺伝子配列進化とエピジェネティックス制御に与える効果を解明
性染色体の転座は、動物では稀な現象ではない(Kitano and Peichel 2011 Env Biol Fish)。また、転座ほど大きくなくとも、性染色体と常染色体間で個別の遺伝子の移動は頻繁に生じていることが明らかになってきた。そこで、日本海型イトヨと太平洋型イトヨをモデルとして用いて、ネオ性染色体に生じた「遺伝子機能の多様化」や「エピジェネティックス制御」の変化を最先端のゲノム解析技術を用いて解明する。また、雑種で生じるエピジェネティックス制御の異常を解明する。これは性染色体の進化と表現型の進化の間に存在するつながりを明らかにすると期待される。

(3) 他の分類群における性染色体転座の役割を解明
イトヨ属の近縁のトミヨ属においても、属内多様化がみられる。トミヨ属における生殖隔離機構の進化、性染色体の進化について明らかにする。

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