HOME > 班員名簿 > 体色の多様化が生む脳遺伝子の発現変化と性行動不適合性の解析

班員名簿|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

体色の多様化が生む脳遺伝子の発現変化と
性行動不適合性の解析

首都大学東京 理工学研究科 生命科学専攻進化遺伝学研究室 高橋 文
北海道大学 情報科学研究科 長田 直樹

 異種ゲノム間の軋轢により生じる生殖隔離には、環境適応による種内ゲノムの多様化が引き金となって起こるケースがある。しかし、種内ゲノムの多様化のどのような性質が、ゲノム間の軋轢を生むのかという点については、これまでに十分明らかとなってこなかった。
我々はこれまで、種内ゲノムの多様化現象の一つである環境適応による昆虫の体色変異に着目し、ショウジョウバエ種内で体を黒くする遺伝子が、性行動に深く関わるドーパミン生合成経路にある脳発現遺伝子であることを明らかにしてきた。その中で、環境適応形質である体色の多様化が遺伝子の発現相関を通して性行動の不適合性というゲノム間の軋轢を生むのではないかという発想に至った。つまり、体色に関係する表皮組織及び性行動を制御する神経組織という異なる組織間で多面的に発現する遺伝子の発現量に相関があることによって体色変化に伴う性行動の変化が生まれるというシナリオである。
 本研究では、このように体色と行動の両方に関与するドーパミン生合成系の遺伝子群をモデルケースとして、性行動の不適合性により新規生殖隔離が生じる分子機構を解明することが目的である。特に上述のような複数組織で多面的に発現する遺伝子に関して、種内ゲノムの多様性を利用した組織間での発現相関を解析し、発現調節の進化過程がゲノム間の相性に与える影響について、集団遺伝学的な観点からバイオインフォマティックスを用いた解析を展開する。また、より広範な視点から次世代シークエンサーによるゲノムワイドなトランスクリプトーム解析を行い、発現調節の進化過程についてゲノムレベルでの定量的な議論を行う。更にこのような解析から得られる成果をもとに、他の様々なゲノム・遺伝子間の軋轢と調和による生命現象の統合的理解を深め、遺伝子発現相関に関するゲノム・遺伝子相関学をより多くの生物現象へと展開するための基盤構築をめざす。

班員名簿に戻る

ページトップへ|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関