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へテロだらけ現象の解析

東京大学 農学生命科学研究科 藤原 徹

研究の背景・目的

 私たちの研究室では植物の栄養輸送や栄養条件に対する応答についての研究進めています。これまで長く対象としてきたのはホウ素の輸送やホウ素に対する応答です。ホウ素は植物の必須元素で、植物はホウ素を根に取り込むためのトランスポーター(NIP5;1)や導管に積み込むためのトランスポーター(BOR1)を持っていて、これらのトランスポーターのシロイヌナズナの相同遺伝子の研究を進めてきています。その中で、BOR1によく似たBOR6のT-DNA挿入変異株の解析を進める過程で、T-DNAについてヘテロ接合体の自殖後代のほとんどがT-DNA挿入に関してヘテロ接合体になる系統が見いだされました。本研究の目的はこのヘテロ接合体が後代で優先的に見られる現象(「ヘテロだらけ(hdk)現象」と呼びます)についてそのしくみの一端を明らかにすることを目的としています。
 このBOR6は花粉や花粉管で特異的に発現するホウ素トランスポーターです。ホウ素欠乏の植物では不稔がよく見られることから、当初はhdk現象はホウ素栄養依存的かと思いましたが、がホウ素依存的ではありませんでした。また、サザンハイブリダイゼーションの結果によると、この植物ではT-DNAはほぼ1コピー挿入されていて、BOR6遺伝子もゲノム内で1コピーでした。つまり、hdk現象が複数のT-DNA挿入や、T-DNA挿入されたBOR6遺伝子のゲノム内での複製によるものでは無いと思われます。さらに、hdk現象は後代に遺伝することを確認しています。もう一点重要な点としては、hdk形質を示す個体からは低頻度であるが、T-DNA挿入をホモに持つ系統や持たない系統が出現します。このことは、hdk現象が何らかの致死的変異によって現れているわけではない、ことを示唆します。これらを総合的に考えると、何らかの方法で雄性配偶子と雌性配偶子が遺伝型を見分けているのではないかと考えています。本研究ではhdk現象の解析を進めて行きます。

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