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生物の生き残り戦略にみられる表現型可塑性を生み出すゲノム遺伝子相関の解明

名古屋大学 大学院理学研究科 金岡 雅浩

 雌雄ゲノムの適切な出会いによって起こる受精は、子孫に遺伝的多様性をもたせる。雌しべ内部を伸長する花粉管(♂n)を卵細胞(♀n)のある雌性配偶体へと導く機構である「花粉管誘引」は、その過程において、同種の(和合性のある)雄ゲノムのみを選択し、異種の(不和合の)雄ゲノムを排除する。この過程は、花粉管と、減数性雌細胞(♀n)と非減数性雌細胞(♀2n)との複雑なゲノム間相互作用である。雌性配偶体への短距離誘引については誘引因子としてLUREペプチドが発見され、近縁種間でもその配列が異なっていることが明らかになるなど、その理解が深まってきている(Okuda et al., Nature 2009; Kanaoka et al., Ann Bot 2011)。我々はさらに、胚珠(♀2n)による長距離誘引という、新規の雌雄ゲノム間相互作用現象を発見した。本研究では、この現象を担う雌雄ゲノム間相互作用シグナル因子を同定する。この因子を手がかりとして、雌しべがゲノム構成が異なる近縁種花粉管を拒絶する因子の探索を行う。
 異種ゲノムの出会いで生じた多様なゲノムをもつ個体からは、両親種とはことなる新たな環境に適応できる個体が出現することがある。湿潤環境・乾燥環境がもたらした異なるゲノム構成を持つ両親種の交雑により生まれたアブラナ科植物Cardamine flexuosaは、変動する水環境に適応して生育する。また、シロイヌナズナ属の異質倍数体ミヤマハタザオ・タチスズシロソウと、これを再現した人工倍数体は幅広い水環境に生育する。チューリッヒ大学・清水健太郎博士との共同研究として、この適応を支える発生学的特徴・遺伝子変化に関わる両親種のゲノム相関を明らかにし、こうした可塑性と頑強性の分子基盤を考察する。

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