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植物免疫とF1壊死の多様性構築の基礎となるR遺伝子への
新規変異導入現象の解析

名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 打田 直行
名古屋大学大学院 生命農学研究科 森田(寺尾)美代

 動物の免疫で働く抗体は抗原認識に無限の多様性を生み出す仕組みを持っています。一方、植物では、感染因子を認識して強い感染応答を誘導する、一見動物の抗体のような働きをするRタンパク質ファミリーが存在します。しかし、各々のRタンパク質はそれぞれに特異的な病原因子由来の物質のみを認識する場合が多く、例えばシロイヌナズナは200ほどのRタンパク質しか持っていないことを考えると、そのままでは有限個の感染因子に対してしか強い抵抗性を発揮できないことになります。しかし、Rタンパク質群をコードするR遺伝子群は、種内においても多様な多型が存在し、変化するスピードが速いと想定され、そのために多様な感染因子に対応する多様性を担保できると考えられています。他の遺伝子に比べて速い変異の仕組み、というのは極めて興味深い事象では有るのですが、このような「進化的なタイムスパンでのみ確認できる変異現象」を実験科学的に解析することは困難です。そのため、この事象を担う分子メカニズムは全く解明されてきませんでした。そのような中、研究代表者は、ユニークな特性をもつuni-1D変異体を利用し、R遺伝子の多様化現象に実験科学的に迫る実験系を構築しました。
 このR遺伝子ですが、近年、植物免疫以外の仕組みでも働いていることが明らかとなってきました。種内外の異系統間でのF1個体で生じることのある壊死現象の原因遺伝子座がR遺伝子である例が報告され始めたのです。F1交雑の適合・不適合は、両親の相性次第でF1個体の生育が決まってしまうという「ゲノム・遺伝子相関」の例の1つと考えられます。R遺伝子の変化がF1交雑の適合・不適合の変化につながることを考えると、R遺伝子の変化の仕組みを解き明かすことは、「ゲノム・遺伝子相関」の1例となる現象が進化とともに変化していく仕組みの解明にもつながることになります。
 以上の経緯を受け、本研究では、感染やF1交雑という異個体との相互作用による「ゲノム・遺伝子相関」の例において、それらの多様性構築に大きく関わり得るR遺伝子の変異メカニズムに焦点を当て、世界で初めて「進化的なタイムスパンでのみ確認されてきた変異現象」を実験科学的に解析して新たな知見を得ることを目的とします。

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