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染色体活性制御と偽ヘテロクロマチン化の相関

近畿大学農学部 バイオサイエンス学科 佐渡 敬

 エピゲノムの時空間制御は正常な生命機能や細胞機能の確立と維持,さらには生体の恒常性維持にも重要な役割を果たす.その分子実体は発生段階や細胞系譜によって異なるクロマチン修飾で,これが遺伝子発現パターンの違いを生み,最終的に細胞や組織,そして個体の多様性を生み出す. また,mRNA様の構造を持ちながらタンパク質へ翻訳されない長鎖ノンコーディング RNA(lncRNA)の中には,クロマチン修飾の形成に関わるものが見出されており,その作用機序の解明はエピゲノム制御のパラダイムの一つとなっている.ほ乳類において雌雄間のX染色体連鎖遺伝子量の差を補償する機構であるX染色体不活性化は,エピゲノム制御の分子基盤を知るための優れたモデルで,X染色体連鎖lncRNAであるXistが中心的な役割を果たす.
 Xist RNAはメスの胚発生初期に一方のX染色体からのみ転写され,そのX染色体全体を覆う.その後,このXist RNAを足場として,ヘテロクロマチン形成に関わる様々なエピジェネティック制御因子がX染色体に集積し,染色体ワイドの不活性化が引き起こされると考えられている.私たちはその作用機序の詳細を明らかにするため,X染色体を覆うものの,不活性化を正常に引き起こせない変異Xist RNAを用いて解析を行っている.本研究では,この変異Xist RNAが形成する偽ヘテロクロマチンとも呼べるドメインに着目し,ヒストン修飾,染色体サイレンシング,複製プログラミングと偽ヘテロクロマチン形成の相関をエピジェネティクスの見地から考察する.

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