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RNAを介した植物と昆虫の生物界をまたいだ遺伝子発現制御の理解

名古屋大学 大学院生命農学研究科 植物遺伝育種学研究分野 佐藤 豊
中部大学 大学院医学研究院 鈴木 孝征
基礎生物学研究所 進化発生研究部門 新美 輝幸

 生物間の相互作用は、最もダイナミックな「ゲノム・遺伝子相関」が見られる現象の一つと考えられる。実際、宿主とそこに寄生する寄生者や病原菌の間に見られる防御と対宿主戦略の進化は、しばしばarms-race(軍拡競争)に例えられ、両者の相対的関係が維持されているのは、留まる事のない両者の進化の結果であると「赤の女王仮説」では説明している。これまでにも宿主と寄生者など様々な生物間の相互作用とそれを媒介する分子は明らかにされているが、RNAが直接の情報分子となり生物界をまたいで遺伝子発現に影響を与える事例は知られていない。
 私達の研究グループでは、ジャガイモの害虫であるニジュウヤホシテントウの餌に二重鎖RNA (dsRNA)を混ぜておくと、エサから取り込まれたRNAがニジュウヤホシテントウの遺伝子発現を制御する現象を発見した。昆虫が摂食により取り込んだ dsRNAによる昆虫の遺伝子発現制御の生物学的な意味を考えてみると、ニジュウヤホシテントウはジャガイモが持つ内在性dsRNAをエサとして日々食べており、植物が持つ内在性の dsRNA(ほとんどは機能未知)が、実は、昆虫などの遺伝子発現を調節しているのではないかと考えられる。そこで、本研究では植物に内在する小分子 RNAやその前駆体であるdsRNAの、それを摂食する昆虫との間での伝搬と制御の事実と、両者の進化や生態におけるRNAを介した種を超えた遺伝子発現調節の意義を解析し、RNAを介した異種生物間の「ゲノム・遺伝子相関」を明らかにする。

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