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キックオフミーティングご挨拶|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

 この度、平成23年度に開始する新学術領域研究の一つとして、「ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成」が採択され、研究活動をスタートする運びとなりました。
 本新学術領域研究では、文字通り、ゲノムや遺伝子間の相互作用に焦点を当てた新たな遺伝学分野の創成を目指します。今日の分子遺伝学は、主に均一化されたゲノムを持つ扱い易いモデル生物を対象に、遺伝子と形質との関連解明を軸に発展してきました。しかし、自然界の生物集団は多様なゲノムおよびエピゲノム構成を持ち、それらが複雑に相互作用し合うために、遺伝子と形質との関係は遙かに複雑で難解なものとなります。生物が示す多様性や高次の生命現象を理解するためには、多様なゲノム・エピゲノムがお互いに影響を及ぼし合う「ゲノム・遺伝子相関」の実態をきちんと把握する必要があります。
 あらゆる生命現象に潜在的に関わっている「ゲノム・遺伝子相関」ですが、特に異種のゲノムが出会う有性生殖の場において、調和あるいは軋轢(コンフリクト)という形で表に現れてきます。また、宿主とパラサイトなど異種の生物が出会う際にも、親和性あるいは非親和性という形でその存在がみえてきます。本領域研究は、多様な生物種を対象に、ゲノムの組合せにより個体内あるいは個体間に生じる「ゲノム・遺伝子相関」の実体を分子レベルで解明し、それらの中に含まれる共通機構・原理を明らかにすることを目的とします。さらに、これらが多様で複雑な生物種を生み出してきた進化の過程を検証し、「ゲノム・遺伝子相関」の概念を取り入れた新たな遺伝学分野の創成を目指します。本領域研究の成果が、多様な生物の基礎的理解に資すること、さらには、育種、環境保全など幅広い分野に貢献することを期待しています。
 新たな遺伝学分野の創成には、分子生物学、集団遺伝学、分子進化学、理論科学など多様な視点を持つ研究者が集結し、従来の学問領域を越えた議論を展開することが不可欠です。今後、本HPで紹介する8名の計画研究班員に加えて、公募研究を積極的に募り、研究体制の補完、充実を図る予定です。多方面の研究者の方々の参画と、革新的・挑戦的な提案を期待しています。

平成23年9月

領域代表 奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科 教授

高山 誠司

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