研究経過
【研究成果】ジベレリンと造精器誘導に関して(化学と生物・今日の話題):上口班
January 30, 2017 3:31 PM
Category:研究成果
main:上口班
カニクサなどある種のシダには、先に成長した前葉体から出されるフェロモン様物質によって、まわりの遅れて成長してきた前葉体を造精器だけを持つ個体にしてしまう性質がある。この物質は、アンセリジオーゲンとよばれ、その構造は植物ホルモンであるジベレリンと類似している。我々は、この仕組が、異なる生育ステージにある個体のあいだでジベレリンの生合成経路を分けて所有することにより成立するもので,アンセリジオーゲンはこの2つの個体をつなぐ架け橋として機能することを明らかにしている(化学と生物,2017,1)。
アスパラガスの性決定遺伝子
January 22, 2017 3:17 PM
Category:研究成果
main:高山班
アスパラガスはヒトのようにXYで雌雄が決定されています.この性を決定するMating遺伝子座が古くから知られていましたが、原因遺伝子は明らかにされていませんでした.研究室では次世代シークエンサーを用いたwhole genome解析により、M遺伝子座上で雄花の形成に必要となるMYB型転写因子Male Specific Expression 1 (MSE1)を同定しました.植物における雌雄形成の進化の過程が明らかになることが期待されます.
研究成果がGGS(Genes Genet. Syst.)に掲載されました(12/28)。
December 28, 2016 2:15 PM
Category:研究成果
main:渡辺班
sub:高山班, 上口班
本領域がスタートして、半年くらい過ぎたのですが、あれこれと忙しく、研究成果の報告ができてなかったので、年末年始で、まとめて報告を。
本領域研究でもbig dataを扱う情報生物学とのコラボは、不可欠です。そうした中、大規模発現データ解析を行うことで、植物種、あるいは、同じ科で異なる植物種においても、恒常的に発現している遺伝子を見つけることができれば、植物の生殖形質に関わる遺伝子がどれくらいの発現量で意味があるものになるのかと言うことも、明瞭な解を得ることができるのではと。。。今回は、高山班、上口班とのコラボです。Kudo, T., Sasaki, Y., Terashima, S., Matsuda-Imai, N., Takano, T., Saito, M., Kanno, M., Ozaki, S., Suwabe, K., Suzuki, G., Watanabe, M., Matsuoka, M., Takayama, S., and Yano, K. (2016) Identification of reference genes for quantitative expression analysis using large-scale RNA-seq data of Arabidopsis thaliana and model crop plants. Genes Genet. Syst. (2016) 91: 111-125.
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ggs/91/2/91_15-00065/_article)
Open accessですので、ご一覧頂ければ、幸いです。
わたなべしるす
PS. 渡辺の研究室HPに関連記事があります。あわせてご覧ください。
研究成果がGGS(Genes Genet. Syst.)に掲載されました(12/27)。
December 27, 2016 3:55 PM
Category:研究成果
main:渡辺班
本領域がスタートして、半年くらい過ぎたのですが、あれこれと忙しく、研究成果の報告ができてなかったので、年末年始で、まとめて報告を。
今でこそ、地球温暖化と言われ、東北地方でも「冷害」と言うことをあまり聞かなくなりましたが、それでも沿岸部、中山間地では、問題となる課題です。この耐冷性という問題に対して、「低分子RNA群と標的ゲノム」と言うコンセプトで、解析を行ったものです。穂孕期の耐冷性では、タペート細胞がactiveな1核期の葯での遺伝子発現調節が重要であり、実際、耐冷性の異なる品種間で、15の低分子RNAが異なる発現パターンをしていました。このことから、植物の生殖形質が環境の影響を受け、その減少が「低分子RNA群と標的ゲノム」により、制御されていることを示したものです。Maeda, S., Sakazono, S., Masuko-Suzuki, M., Taguchi, M., Yamamura, K., Nagano, K., Endo, T., Saeki, K., Osaka, M., Nabemoto, M., Ito, K., Kudo, T., Kobayashi, M., Kawagishi, M., Fujita, K., Nanjo, H., Shindo, S., Yano, K., Suzuki, G., Suwabe, K., and Watanabe, M. (2016) Comparative analysis of microRNA profiles of rice anthers between cool-sensitive and cool-tolerant cultivars under cool-temperature stress. Genes Genet. Syst. (2016) 91: 97-109.
(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ggs/91/2/91_15-00056/_article)
Open accessですので、ご一覧頂ければ、幸いです。
わたなべしるす
PS. 渡辺の研究室HPに関連記事があります。あわせてご覧ください。
【プレスリリース】植物の花粉は受精しなくても種子を大きくできることを発見しました。(東山グループ)
December 5, 2016 1:58 PM
Category:研究成果
main:東山班
名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 笠原 竜四郎 研究員、東山哲也 教授らのグループは、雄しべの花粉管の内容物(花粉管内にある液体)が、雌しべの中にある胚珠で放出されると、受精しなくても、種子を大きくする機能を持つことを発見しました。
胚珠の中にある卵細胞のもとへ精細胞を運ぶために、花粉は花粉管という輸送器官を伸ばします。この花粉管の内容物は機能を持たないと考えられていました。笠原研究者らは花粉管内容物に注目し、受精に失敗しても、胚珠の中で花粉管内容物を放出するシロイヌナズナの変異体を用いて交配実験を行いました。その結果、花粉管内容物が放出された胚珠は、受精していなくても細胞分裂し、種子を肥大させることを発見しました。それだけではなく、種皮や胚乳も形成することが分かり、「胚珠は受精しなければ肥大することはない」という植物界の常識を覆しました。
植物の生殖は花粉が雌しべに付着する受粉から始まり、花粉管誘引を経て受精に至ります。本研究は、花粉管誘引と受精の間で、花粉管内容物が作用する段階が存在することを明示する重要な発見となりました。人類が穀物を収穫して食用とするのは、主に種子の胚乳です。イネ、トウモロコシ、コムギの種子の大部分は胚乳でできています。本研究で明らかになった花粉管内容物の機能を解明し、作物に応用する技術が開発されれば、受精せずとも胚乳を形成する穀物を生産できる可能性があります。開花期に台風、高温などの悪天候や異常気象が起きる条件下では受精が高確率で失敗するので、作物の生産に甚大な被害をもたらしますが、受精に頼らないで胚乳を形成できれば、気象に左右されない穀物生産が可能になります。
本研究成果は、米国オンライン科学誌「Science Advances」に掲載されました。
プレスリリースの詳細はこちらをご覧ください。