東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【最終報告】数値化と挑戦と継続(教:三浦 佳織)

2025年1月20日 (月)

こんにちは!

いよいよ最終報告です。今日で、カブとミックスの播種をしてから107日になります。この最終報告を書くにあたって過去のカブの写真を見返していると、あんなに弱々しくて風になぎ倒されていたのが今ではカブの完成に近づきつつあるのだなと思い、何だかしみじみした気持ちになりました。

では、本題へ行きましょう~


〈目次〉

  1. 植物・作物の栽培を行って大変だったこと、うまくいったこと

  2. この講義で養成された観察眼は、どの様なところに波及効果があったか

  3. 毎日の植物の観察を通してどのようなことが身についたか

  4. 文章を書くという点における、受講前後の変化

  5. 自然科学的なものの見方を習得できたと思う点、さらに研鑽を積むことが必要である点

  6. コメントにどの程度followできたか、意味があったか

  7. 中間発表で目指した点がどれだけ達成できたか

  8. この講義で学んだことを、日々の活動でどのように活かすことが出来るか+今後の植物の管理

(1)植物・作物の栽培を行って大変だったこと、うまくいったこと

※この項目で使われている写真、本来はこれまでの記事で使われていない写真を使うべきですが、書きたい内容の都合上それを守るのが無理でした。申し訳ございません。

大変だったこと

大変だったことは、どの株を間引くのかを見極めることです。

特に大変さや難しさを感じたのは、第3回間引きです。葉の重なりを解消することを目標に間引きを行いました。

           ↓間引き前 11株IMG_4822.jpg          ↓間引き後(フラッシュありの写真)7株
IMG_4825.jpg

葉の重なりは大体解消できたかなと思い、どの株も元気に育っていてこれ以上間引くのがもったいなく感じてしまい、一旦ここで間引きを終えました。しかし、オガタさんに「本当ならもう一段、減らしてもよかったかもしれません」とアドバイスを頂き、もう一度間引きを行って最終的に3株にしました。IMG_5282.jpg

この過程を通して感じたことは、最終的に3~4株にするイメージはあっても、それをいつのタイミングで行うのかを自分で判断することは難しいという事です。オガタさんのコメントが無ければ、私が最終的に3~4株にするのはもっと遅くなり、葉の重なりが生じて日照不足が起きていたかもしれません。

また、7株→3株に減らすときには、葉の重なり・成長度合い・カブ同士の距離・鉢縁との距離などの考慮しなければならないことが多く、各々のバランスを取りながらどの株を間引くのか決めるのに苦労しました。農家は何を基準に間引きしているのかと疑問に思いました。

うまくいったこと

うまくいったことは、カブの胚軸の肥大が思ったよりも進んでいることです。

【播種から106日】1/19(日)現在、IMG_7392.jpg

カブの胚軸肥大部の直径は①で4.5㎝、②で4.4cm、③で3.8㎝になっています。

昨年度の受講生である田中さんの、【播種から104日】での外鉢のカブの直径が3.8㎝でした。

また、カブの胚軸の肥大が進行する12月~1月にかけての平均気温は、

〈昨年度〉2023年12月:5.7℃ 2024年1月:4.2℃

〈今年度〉2024年12月:4.3℃ 2025年1月:2.6℃(1/19時点) でした。

(参考:気象庁 過去の気象データ検索)

(ベランダの日照の条件は違うとしても)昨年度より今年度のほうが12月~1月にかけての平均気温は低くなっている状況で、温室の効果なのか(?)播種からの日数が同じくらい(104日~106日)の段階では、①と②は田中さんのカブよりも0.6~0.7㎝ほど大きく成長しています。私は田中さんが5.8cmのカブを収穫したのと同じくらい大きなカブを収穫したいので、胚軸の肥大がうまく進んでいるのが嬉しいです。

(2)この講義で養成された観察眼は、どの様なところに波及効果があったか

この講義での植物栽培では、植物がうまく生育するために、植物が弱っていないか・土が乾いていないか・気温や日照が適切かなどに日々注意する必要がありました。これらの観察の中で、例えば植物の茎が細くて倒れやすくなっているという問題を見つけたら土寄せをするというように、植物に見られる問題点に何らかの方法で対処することが植物の生育において重要でした。このように、この講義では「事象の変化に気がつき、それに対応すること」を意識せずとも繰り返していたのではないかと思います。

この「事象の変化に気が付き、それに対応する」という力を本講義で培ったことは、課外講義である「人工知能技術のためのプログラミング入門」に波及効果があったのではないかと考えています。この課外講義では、毎週与えられる課題に自力で取り組みコードを書くことが求められていました。自分が書いたコードでは思い通りの結果を出力できない時、エラーメッセージから何が問題なのかを予測し、対処方法を調べてコードを書き換えることで、正しい出力が出来るようにしていました。この課外講義を受講していた当時は意識していなかったのですが、今思い返してみると、植物を注意深く観察して見つかった問題点に対処するというこの講義での経験と、コードの中からエラーの原因を探り正しいコードに訂正するという「人工知能技術のためのプログラミング入門」での経験の相乗効果で、「事象の変化に気が付き、それに対応する」という力がより身についたのではないかと思います。スクリーンショット 2025-01-19 043519.png

         ↑エラーメッセージ(青の〇内)を読んで、問題を把握→それを解決

(3)毎日の植物の観察を通してどのようなことが身についたか

私は、日々の植物の観察を通して「写真を撮るときに何をクローズアップするか」を考えることが身についたと考えています。第1回の記事で、オガタさんから『「鉢受けにわずかに水が出る」という記述があればそれに対応する写真を載せる』というコメントを頂いたことで、日々の観察の中で何を写真として残すのかを考慮しながら撮影するようになりました。例えばカブの写真を撮るときには、

           ↓葉の重なり具合が分かる写真
IMG_7259.jpg

          ↓胚軸の肥大具合が分かる写真IMG_7261.jpg

          ↓定規での計測の様子が分かる写真IMG_7263.jpg

の3パターンを撮影するようにして、様々な方向から植物の栽培の様子を伝えたい時のため、それに対応する写真を残せるよう日々意識していました。ちなみに、この講義に関連して撮りためた写真は現在1195枚になっています。(私が撮るのを失敗した写真を消していないのも一因ですが...)IMG_7381.jpg

(4)文章を書くという点における、受講前後の変化

私は、この講義を通して自分が伝えたいことを相手にも分かりやすく伝えるにはどうすればいいか相手が読みやすい文章とはどんなものかをよく考えるようになったと思います。

「自分が伝えたいことを相手にも分かりやすく伝えるにはどうすればいいか」については、(文章を書くことというよりは写真での伝え方の話になってしまいますが)中間発表でも挙げた「文章とリンク」や、写真に〇を書き添えるという工夫を意識して行うようになりました。「文章とリンク」の具体例としては、例えば「カイワレダイコンが真っすぐに成長したことをより分かりやすく伝えるためにカップから取り出した状態の写真を撮影した」ということが挙げられます。

また、「相手が読みやすい文章とはどんなものか」については、オガタさんに「情報が多いと読み手が混同してしまう」とご指摘いただいてからカブ・ミックス・カイワレダイコンの記事をそれぞれ分けるという工夫をするようになりました。他にも、「1.カブ(たにぷん)の成長」というような大きい見出しの中でさらに「胚軸肥大部の成長のグラフ化」というような小さい見出しで記事を分け、文章をつらつらと書き並べずに段落分けすることを意識していました。自分が次に何を書こうとしているのかを端的に伝えてから文章を書こうという気持ちを常に持つようになったと感じています。 

(5)自然科学的なものの見方を習得できたと思う点、さらに研鑽を積むことが必要である点

自然科学的なものの見方を習得できたと思う点

私は、この講義を通して「数値化によって客観的に伝える」という考え方を習得できたと思います。例えばカブの胚軸肥大部の体積を求めたり胚軸肥大部を上から見た時の円の面積を求めることでその成長過程を追ったりするという取り組みを行いました。植物が成長していることは見た目からだけでも分かる場合がありますが、その成長を長さや面積・体積といった数値で表すことによって、実際に私が育てている植物を見ていない人でも成長度合いをイメージしやすくなるのだという事に気が付きました。

また、(自然科学的というテーマとは若干ずれてしまうかもしれませんが)自分がしたいことを実現するために先行研究を根気強く探す力も身についたと思います。私は温室作成に取り掛かる前、「過去の先輩の取り組みをそのまま真似するのはつまらないのではないか」と考え、自分で1から設計した方がいいのではないかと思っていたことがありました。しかし、思索が生きることはいくらでもありますから、先行研究を見過ぎるくらいでちょうどいいのです。」というオガタさんのコメントを見つけて先行研究にあたる重要性を認識し、自分の考えを改めました。それからは、例えば温室を作成しようと考えた時には、①材料が手軽である ②効果が見込まれる という2つの条件を重視して過去記事を遡って読み、主に2017年度の岡田さんを参考にして作るというように、自分がやろうとしていることの先行研究を探すことが習慣になりました。この「先行研究にあたる」という事の大切さを本格的な研究が始まる前の1年生の間に学べたのは良かったことだと思っています。

研鑽を積むことが必要だと感じた点

一方でさらに研鑽を積むことが必要だと感じた点は、自分が知りたいことを確かめるための実験方法が適切なものであるかを考えるのが不足していた点です。私は「カブの胚軸肥大部の成長を数値化して表現したい」と思い、胚軸肥大部を上から見ると円に見えることを利用して、円の面積でその成長を表そうと考えました。しかし、オガタさんに「まあ、その面積が何を意味するかですが......解釈が難しいですね。」とコメントを頂いたり、成長していると感じられても面積としてはそれほど変化が無かったりして、この測定方法では胚軸肥大部の成長をあまり示せていないのではないかと気づきました。胚軸肥大部の成長を知りたいのであれば直径を測るだけでも「成長している」という事は言えるのであり、数値化や他の人との差別化を意識しすぎて「その数値化により何が言えるのか」という本質を見失っていたと感じます。今後はオガタさんのコメントにあった『あくまで実験は「何かを言うため」』という事を意識していきたいと思います。

(6)コメントにどの程度followできたか、意味があったか

コメントにどの程度followできたか

私は、教授やスタッフの方々のコメントにfollowできたと考えています。以下に、その具体例の一部を示します。

まず、渡辺教授のコメント多くの受講生が数値化という取組に挑戦してくれることを切望します。」にfollowすることが出来ました。例えば、ミックスを収穫した時にカブの胚軸肥大部の体積を求めるという取り組みを行いました。

また、オガタさんのコメント「それよりアルミホイルの集光が、もしやれたら面白いと思います。」にfollowすることが出来ました。私の家は日照が悪くはないと思うのですが、午後の3時間程度で集中的に日光の効果を得る必要があるのでアルミホイル集光を実践することにしました。

このように、自分や受講生全体に向けたコメントには積極的にfollowできたと思います。一方で、他の受講生に向けたコメントは流し読みにしてしまうことが多かったことは反省点として挙げられます。自分に直接向けられたコメントではないためfollowできる機会は少なかったかもしれませんが、それでもコメントをしっかり読むことによって栽培で参考になるポイントをたくさん得られたはずです。

コメントの意味

コメントの存在によって、これまで植物を大きな病気無く育てたり、記事の中で様々な取り組みをしたりすることが出来たのだと感じています。

オガタさんのコメントでは、追肥の仕方やタイミング、帰省時の対応など管理面で様々なアドバイスを頂きました。私は植物栽培の知識がほとんどない状態でこの講義を取っており、日々の栽培ではオガタさんのコメントや過去の記事を専ら参考にしています。その結果か、現在まで植物を枯らしたり腐らせたりすることなく栽培を続けてこられました。

また、渡辺先生の「計測」することにチャレンジというコメントからヒントを得て、葉を楕円と見立ててその面積を求めたりカブの胚軸肥大部の体積を求めたりしました。このコメントが無かったら、私の記事は葉や胚軸肥大部の長さを定規で測って報告するにとどまっていたと思います。

このように、教授やスタッフのコメントがこの講義を進めるうえで道しるべになっていたのは言うまでもありません。

(7)中間発表で目指した点がどれだけ達成できたか

私が中間発表で立てた目標は、①過去の記事に目を通すことを増やして良い点を取り入れる ②毎日の観察を継続する でした。

①過去の記事に目を通すことを増やして良い点を取り入れるについて

達成することが出来たと考えています。例えばカイワレダイコンのスタートアップでは、どの土台が最もカイワレダイコン栽培に適しているかを実験している記事を参考にして、最もカイワレダイコンの成長が良かったコットンを土台として採用しました。また温室作成においても、材料が手軽・効果があるという観点から過去の先輩方の記事(これこれ)をピックアップし、風・雨への耐性や底冷えを考慮した温室を作成しました。このように、過去の記事から得られる知見を使うことで野菜栽培における知識不足を補っていくことが出来たと思います。

②毎日の観察を継続するについて

達成することが出来ませんでした。写真を撮ったり定規を当てたりするのが2日おき、もしくはそれ以上になることがありました。また、10月の栽培開始当初はノートに数値や形態の変化を記録していたのですが、今では写真を撮ること、定規を当てることのみになっていました。

②の目標を達成できなかった要因は、「1日くらいならあまり変化がないだろうし観察しなくてもいいかな」という考えがあったからだと思います。朝に観察するのを習慣化する余裕を持つ生活が出来なかった、夜に眠かったり寒かったりしてベランダに出るのが億劫になる自分に勝てなかったということに、自分のこの講義に対する取り組みの甘さが現れていると感じています。「やると決めたことをやり抜く」という事が課題として残ったので、今後の生活で改善していきます。

(8)この講義で学んだことを、日々の活動でどのように活かすことが出来るか+今後の植物の管理

私は、この講義で特に「数値化して示す」ということと「正解がない中で何をするか選択する」ということを経験できたと感じています。

「数値化して示す」に関して

私は2年次から、教育学部 教育心理学コースに所属する予定です。(コース分けが希望通りに行けばですが...)3年次には「教育心理学実験」という講義があり、自分たちでデータを集めて統計的に分析することも行うそうなので、その時にこの講義で行った「数値化」「グラフ化」という経験が活かせるのではないかと考えています。

「正解がない中で何をするか選択する」に関して

この講義の初回で、渡辺先生から「何を育てるかも記事に何を書くかも全部自由で、好きなように取り組んで良い」と伝えられ、最初は少し戸惑いました。自分で全てを決めていかなければならないのが大変で難しそうに感じたからだと思います。しかし、先生方のコメントをヒントにしながら数値化に挑戦するうちに、自分がふと思いついたことを実践できる楽しさや達成感を感じるようになりました。(それを特に感じたのはカブの胚軸肥大部の体積を求めた時です)

このように、この講義では何でも自由に取り組むことの楽しさを感じることができ、正解がない中で何をするか選択する経験が出来ました。今後も「自由に取り組む」ということを楽しんで、大学生活の中で興味を持ったことに挑戦する姿勢を忘れずにいたいと考えています。


最後に、まだ収穫していないカブの管理についてです。

まだ胚軸の肥大が進みそうだと感じるので、直径5㎝~6cmくらいになるまで粘りたいなと考えています。ただ、カブに元気がなくなってきたらその時は早めに収穫しようと思います。


以上で最終報告を終わります。もう一度温室の効果を示してみたいのと、収穫の記事を書きたいと思っているので、今後もよろしくお願いします!(5,872文字)

コメント

教育学部 三浦さん

 最初の写真は川内キャンパスですか。右に傾いているので、別の場所かと思いました。〆切に余裕を持っての最終報告、評価できますね。また、これまでほぼ7日おきの投稿になっていることも、タイトルにある「継続力」が養成されたということの表れだと思います。この継続力を他の講義、その先の社会人など多様なとことで活かして下さい。この講義の大変さに「間引き」を取り上げた受講生は初めてです。確かにあの植木ばちに11株は多すぎですから、もう少し前に間引きをすればよかったのでしょうが、あの大きさになると、間引きは忍ばれますね。どのタイミングで絞込をするかと言うことも、これからの研究、社会での活動で大事になってきます。そうでないとやるべきことがパンクしますので。その当たりは要注意でしょうか。ちなみに農家は三浦さんよりも早い段階で、植物体の間、あるいは一定面積などで個体数を制御しているかと思います。
 
 事象の変化に気がついて、対応できるようになったのが、プログラミング入門とつながるのもおもしろいですが、気がついてないところで、対応力は身についているのではないでしょうか。写真の枚数が1,000枚を超えているというのもすごいですね。たくさんの写真から選んだということ、スマホという手軽なツールの存在はあるにせよ、積極的な取組の反映と思います。文章を段落分けするのはよいことです。見やすくなりますね。また、段落の最初の文字を1文字下げるということをするだけで、そこが段落の切れ目と分かります。そんなちょっとした工夫も心がけてみてください。文章力は身についていると思いますので。
 
 ラボスタッフオガタ君のコメントは確かに。何を目的に測定をするのか。その測定結果が植物の何を反映しているのか、何を意味しているのか、それを考えられるようになれば、立派な研究者です。難しいことかもしれないですが、これからの大学生活でさらに研鑽を積んでください。こうしたコメントがあるというのがこの講義の特徴であり、変わったところです。教育学の言葉に「そっ啄の機」というのがあります。Googleすると分かりますが、卵の殻を親鳥と生まれてくる鳥でつついて、生まれてくる。物事、タイミングが大事で、師匠が弟子を教育するときも同じようにタイミングが大事。そんなことができるようにという思いもあり、この仕組みを作りました。是非、そんなことを学べるようなゼミを選んでさらに成長して下さい。
 
 ノートを書くことは実は大事です。写真を撮って終わった気分になりますが、実際に書いてみると、ここはこんな形になっているとか、気がつかないことに気がつきます。是非、ノートに書いてみること、そんな記録を残すことを心がけてください。「自由」にできることは、実はとても不自由で面倒なことがたくさんあります。でも、書かれてあるように、これはということを見つけて、掘り下げることができるようになると、自由にできることを満喫できるようになります。自由の神髄を理解できたこともすばらしいことと評価できますね。是非、答えのないこと、誰もやったことないことにチャレンジしてください。そうすることで、さらにもう一段高いところに上がれますから。
 
 最後になりますが、収穫の記事など、まだ、書くことを計画しているのは頼もしいです。手塩にかけたカブの食レポを楽しみにしています。また、この講義が4月からの他の講義にプラスの影響があることを期待しています。
 
 
 わたなべしるす