ネコブセンチュウは世界中に存在し、宿主特異性が低いことが知られているものの、その非特異的な感染を制御する分子メカニズムはほとんど明らかにされていない。ネコブセンチュウと植物は寄生関係にある一方、植物は共生微生物との共生関係も築いている。この共生機構、特に根粒菌やアーバスキュラー菌根菌との共生については主にミヤコグサを中心としたマメ科植物を用いて研究されており、共生の成立に必要な宿主側の遺伝子も多数単離されている。
　我々は、根粒菌との共生システムが破綻したミヤコグサ変異体においてネコブセンチュウの感染効率が大きく低下するという先行結果を得ている。このことは、この変異体の原因遺伝子がネコブセンチュウの感染においても重要な役割を担うことを示唆しており、同時にこの遺伝子の解析を契機にネコブセンチュウの宿主への感染を制御する分子機構の一端を明らかにできる可能性があると考えている。本研究では、ミヤコグサとトマトを用いて、この遺伝子の詳細な機能解析および相互作用する遺伝的パートナーを同定することにより、植物とセンチュウ間の和合性的相互作用を規定する遺伝的制御メカニズムを明らかにすることを目的にしている。