東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

今治市立今治小学校での出前講義「「花の不思議な世界」--りんごの花からリンゴができるまで??--」(10/6)

2009年10月 7日 (水)

 10/6の午後には、今治小学校・理科室で、45名の児童と先生方、保護者・近所の方々もお見えになり、講義でした。今治小学校は、昨年の「キャベツとブロッコリー」の講義、春先のアブラナ交配実験に続いての3回目です。春先の交配では、実験を行ったとき、ハクサイ、カブの仲間であるBrassica campestrisしか、開花していなかったのですが、その後、岡田先生、渡邊先生の指導の下、キャベツとブロッコリーの雑種種子を得ることに成功しており、岡田先生、渡邊先生の高い指導力と、難しい実験にもかかわらず、一生懸命実験をした児童の皆さんに感心しました。この秋には、ぜひ、両親とこの雑種を植えて、どんな新しい植物ができたのか、報告が楽しみになりました。

 さて、講義の方は「「花の不思議な世界」--りんごの花からリンゴができるまで??--」ということで、リンゴをモデルとして、花が咲き、受粉、受精して、リンゴができる。その過程には、花粉管が伸びる、自家不和合性という、花粉の自他識別があるという、植物のダイナミクスを、話しました。花粉管が伸びたり、自家不和合性反応が、柱頭の表面で起きると、「へーーー!」という歓声がおきました。最初の花とリンゴの対応関係を考えてもらって、花が咲いている状態とリンゴが逆さまになっているのを気がついてもらえたのは、身の回りの不思議の大切さを感じてもらえたのではと思います。

 講義での質問にもたくさん答えてくれました。とてもたくさんの皆さんが手を挙げて応えようとしていたのは、とてもすごいと感心しました。講義の最後に、ことわざのようなものとして「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というのを話したところ、1人の男の子が手を挙げて、このことわざの意味するところを、正確に答えてくれました。これが、最初の感動でした。小学生がこのことわざの意味を知っていたのは、初めての経験でした。この言葉の意味を、大切にして、これからも学習してください。

 講義のあとには、10min近く質問の時間があったのですが、ここで驚くべきことを質問する生徒さんと出会ったのは、衝撃でした。「自家不和合性」の講義をしたときに、めしべの上で、自己と非自己の花粉が識別され、自己花粉だけが発芽、花粉管侵入するところを見せました。そうしたら、「1つの乳頭細胞の上に、自己と非自己の花粉を乗せたら、どうなるのでしょうか????」。われわれも、この実験をしたいと常々思っているわけで、実際には、乳頭細胞上の局所的な認識反応と思っているのと、今までの論文から考えると、自己花粉は侵入できず、非自己は侵入できます。と答えました。そうしたら、もっとたくさんの花粉、自己ではなく、非自己の花粉をたくさん乗せるとどうなるのかと。もちろん、入るわけですが、90minの講義で、どのような発送をして、こんな自家不和合性の先端的な問題に気がついたのか。おどろきでした。

 質問は、一度ここで終わったのですが、校長先生、岡田先生と校長室でお話をしていたら、その生徒さんが訪ねてきて、多くの質問をくれたのですが、その中に、「めしべの上には、例えば、リンゴの花粉だけでなくて、その頃に咲いている他の種の花粉も着くだろう。それは、非自己なのか???」。これこそ、特定領域研究「植物ゲノム障壁」で研究している、「種の障壁」とはなにか。ということを的確に着いてきた質問でした。このことに、回答したあと、ぜひ、一緒に研究をしましょう。大学で待っていますと。それ以上のことを言えないくらいの感動でした。

 自然のあふれる「今治市」。その自然の不思議をたくさん観察して、成長したみんなにまた会えるのが、楽しみになってきました。 講義を用意頂いた先生方には、最後になりますが、感謝したいと思います。また、ぜひ、来年も講義ができればと思いますので。


わたなべしるす

≪ Prev  | diary Top | Next ≫

ARCHIVE