東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

昔の遺伝学実験材料---B. mori----

2008年8月30日 (土)

8/27にSSH指定校の愛媛県立松山南高校で、カイコと使った実験風景に出会いました。昆虫は、幼虫、蛹、成虫へと変態をするという不思議があり、20年近く前の学部学生だった頃の、昆虫学の講義・実験を思い出しました。その当時もあったのだと思いますが、飼育するために必要なえさに、カイコの葉っぱでなく、人工的に合成したものを使っているのは、感動でした。講義で習った頃は、幼齢が低いときには難しいようなことを聞いていたので、なおさらでした。学生の頃の実験では、クワの葉っぱを拾ってきて、幼虫をカイコ蛾にして、産卵させたこともありました。

そんなカイコは、古くは日本の輸出産業を支えたこともあり、また、古くからの遺伝学実験の「モデル生物」の走りなのかもしれません。飼育するために、クワの葉を集めるという制限があったり、一定のスペースがないと、遺伝学実験をやることが難しかったことは、自家不和合性研究の「アブラナ」で、遺伝学実験をすることの大変さと同じなのかもしれません。そんなこともあり、昆虫のモデル生物もより小さなものへ変わったのでしょう。アブラナも「シロイヌナズナ」へ転換する時期なのかもしれません。

ただ、古い材料、実験だからといって、軽んじることはできず、かえって、われわれの気がつかないような詳細な記述や実験が行われていることは、高く評価すべきなのかもしれません。自家不和合性の研究も、1900年代の初めの頃の論文を今一度見てみることは大事なことなのでしょう。

カイコをみて、「温故知新」という言葉の重さと重要性を再認識した、今日この頃でした。

わたなべしるす

≪ Prev  | diary Top | Next ≫

ARCHIVE