東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【出前講義】石川県立小松高等学校・SSH特別講義「SSH課題研究を始めるに当たって---高校でのSSH, 課題研究が大学、大学院での研究につながる。。。---」(1/27)

2014年1月27日 (月)

 午前の橋立中学校での出前講義に続いて、午後からは小松高等学校・SSH特別講義。課題研究はSSH活動の中でも重要なポイント。例年であれば、テーマの決定は2年生の4月になってからと言うのが通例だったそうですが。。。今年から1年生のこの時期からテーマを決めると言うことで、4/17に1, 2年生合同で、「SSH課題研究を始めるに当たって」と言うことで講義をしましたが、1年生は入学して間もない頃。現実感がない頃だったかもしれないと言うこと、また、今年度から「課題を発見する力」の養成と言うことで、従来の教員側からの「研究テーマ」から生徒さんからも「テーマを提案する」と言うことも可能にしたとか。ただ、実際にそれを実現しようとすると難しと言うこともあって。

DSCN1446.JPG では、大学教員から見たときにSSHの課題研究はなぜ行うのか。と言うことから、話し始め。。。課題研究はなぜ行うのか、と言うことを生徒さんに伺う と、それぞれしっかりした考えを持っていたのは、さすがでした。では、渡辺自身はなぜ、そんなことを今するようになったのかと言うことについて、渡辺の高 校時代と比較して。。。一番大きな違いは、数学の問題集ではないかと。昔 は数研出版の湘南カラーの緑とオレンジの問題とそれを出題した大学、年次、それと大事なことは、答えが数字だけしかないという問題集。つまり、問題から答 えに至る過程は、自分で好きな参考書を使って、あるいは、授業で習った先生の解き方の好きなパターンを使って、最低限のことのみ覚えて、のこりは自分で必 要に応じて、公式は作る。そうでないと、記憶力は他の科目でも必要になる訳で。。。メモリはすぐにパンクします。そんな数学で考えると言うことが それなりにあったような。ところが、今は、参考書と言うより、解答例も公開されているとか。。。それでは、自分のコンセプトというか、自分の考えに合うよ うなものを探すというのは、考える力を養うという意味では、とても大事だったのでは。では、もちろん、数学の問題をそうすればよいのかもしれないですが、 「ゆとり教育」の反動が始まったところというか、ゆとりでなくしたことに意味があったと言うことが言われるようになった現状では、この課題研究というの は、大事なポイントではないかと。。。

DSCN1452.JPG 次に、課題発見能力とは。。。どこに問題があって、どこに違いがあってと言うのを見つけること。これは実際に大学で実験、研究をしていても、難しい問題。で、こちらが用意したのは、プリムラの花。プリムラは、異形花型自家不和合性で この時期に花が手に入りやすいもの。そこで、pinという雌しべの高さが高いもの、thrumというおしべの高さが高いものを用意。色もそろえたかったの ですが、そうしたものがなかったことで。ピンクと赤という色違い。そのはち植えを見てもらい、なにが違うのか。もちろん、花の色、葉っぱの形、開花数な ど、ぱっと見違うものは最初の生徒さんで気がつきました。ところが、花の中心部まで気にかける生徒さんは、半分を過ぎないと気がつかず。ただ、気がついた 生とさんがいたのは感動でした。思わず、拍手で。。で、せっかくなので、雄花、雌花という訳ではないことを実際の花をさばいて。。。さすがにびっくりのよ うでした。こうしたちょっとした違いに気がつくことが、問題を見つける力。自分が学部生で実験を始めた頃は、提案された卒論のテーマを達成するだけで精一 杯。教授の提案を越えることを始めたのは、実験を始めて数年-10年上たってから。。。もちろん、今の時期に問題を発見できる、不思議に思う生徒さんもいるでしょう が。。。そうしたことを踏まえて、テーマを与えられても、その中で、どの様に実験するかという細かなことで、結果は微妙に違うもの。もちろん、生物系でそ うしたことは多いのかもしれないですが。。。それを踏まえて、課題を解決する能力を養うだけでも十分だと。。。

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DSCN1460.JPG そのあとは、4月に話したような内容。 きちんと記録をつけるとか、グループで実験をするので、課題研究の時間の最後には、まとめの時間をとるとか。実験の方法と結果などは、毎回まとめることが できると言うこと。それから、最初のテーマ、目的に引きずられることなく、最後にまとめをすること。つまり、出てきたdataを解釈して、結論を導き、そ れにあうタイトル、イントロを書くと言うことなどなど。まだ、課題研究としてなにをするかということを始めようとしたばかり。ぜひ、今回の講義を、あるい は、4月の講義を思い出して、課題研究の時間を有意義に過ごしてもらえればと。。。

DSCN1466.JPG 講義の設定、運営などはSSH担当の寺岸先生にお世話になりました。ありがとうございました。よりよい課題研究が進んでいくのではと思っております。


 わたなべ拝

 PS. 講義のあとに、生物部の方々と議論をしたり、実験を拝見したりと言うことがありましたが、そのことについては、また、改めて、明日にでも。。。

 PS.のPS. この講義と明日の小学校への出前講義に石川県立大学生物資源工学研究所の中谷内先生が見学にいらしてくれました。以前にもSSHの発表会などでお会いしていたのですが、こうした形で意見交換などができたのは、何よりでした。今後ともよろしくお願いいたします。


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