東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

2010年12月の記事です。

【学会発表】BMB2010ワークショップ「動植物に共通するアロ認証中核原理を探る」で、「アブラナ科植物の自家不和合性における花粉・雌ずい認識分子メカニズム」を招待講演(12/7)

2010年12月 7日 (火)

 前日は大阪で出前講義でしたが、12/7の午前は神戸で開催されているBMB2010のワークショップでの招待講演でした。動物、植物を問わず、生殖は重要な形質です。動物では異個体間での受精になります。基本は。植物の場合、雄ずい、雌ずいが1つの花の中にある、両性花というのが一般的です。ただ、両性花であるとき、自己花粉で子孫を作ると、自殖弱勢が現れることから、これを回避するために、植物は雌雄異熟、自家不和合性等のシステムで、この自殖を回避しています。

 では、もっとdeepに、「生殖」という場面を見たときには、共通するfactorがあるのではないかということで、今回のワークショップに招待頂きました。前半は、動物(ホヤ、マウス、寄生虫)での生殖に係わる因子の話があり、後半では、植物(アブラナ、イネ科植物、トレニア)での、自家不和合性、受精の演題でした。渡辺の方は、これまでのアブラナ科植物の自家不和合性の概略と今年のトピックである「自家不和合性シロイヌナズナ」、「優劣性を制御するsmall RNA」を話せて頂きました。

DSCN5238.JPG 相互認識に係わる物質の立体構造がわかったり、その構造を認識するモノクローナル抗体、ライブイメージング技術の利用などがあり、われわれの研究にも、これから以降、参考にすべき方向性も見せて頂けたのは、よかったと思います。

 最後になりましたが、招待頂きました、オーガナイザーの先生方に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。


 わたなべしるす

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【出前講義】大阪府大阪農芸高校での出前講義「高等植物における生殖・受粉反応--自家不和合性・受精・品種改良--」(12/6)

2010年12月 6日 (月)

 8月のダイコンコンソーシアムでの、感動的な質問を受けて、再来週のダイコンコンソーシアムに、農場の生産物の販売の関係で、参加できないということもあり、また、この時期ちょうど、分子生物学会で、関西方面に出張ということで、出前講義を行い、圃場の見学、交流会を行いました。大阪には、共同研究があり、ずいぶん来ていますが、堺市に来たのは、はじめてで、来る途中の駅で、前方後円墳のモデルでもある、「仁徳天皇陵」を横から見ました(上からではないので、全体像を見ることはできませんでしたが。。。かなりの大きさがあるなということだけ、実感できました。次回は、ぜひ、高いところから見てみたいと。。

 講義には、ハイテク農芸科の120名の生徒さんが参加してくれ、野菜、果樹などで重要な、自家不和合性、受精、品種改良における実際的な側面を話しました。さすが、ハイテク農芸科の生徒さんと感動したのは、野菜、果物になるものの、花の写真を見せて、クイズをしましたが、そのほとんどに答えを出す人がいたこと。これは、感動でした。よく、毎日観察しているのだと。。

DSCN5231.JPG 受粉、自家不和合性、受精の動画を見てもらいましたが、初めての経験ということもあり、「おーーーー!!!!」という歓声が上がったのも、よかったと思います。実際に品種改良をすることの大変さも、理解してもらえたのではないかと思います。

 講義のあとには、野菜部生徒たちと圃場を見学して、様々なアブラナ科野菜が栽培されているのを見せてもらいました。アブラナ科野菜にはとてもよい時期で、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、ブロッコリー、カリフラワー、ロマネスコ(珊瑚礁ブロッコリー)、等たくさんありました。また、20以上の最新のハボタンも植えてあり、アブラナ科野菜を研究しているものとしては、うれしい限りの観察会でしたし、何より、立派に育っているのが、さすがだと。。。

DSCN5229.JPG 最後に、食事をはさんでの交流会では、生徒さんからの質問を受けたり、先生方と実験について議論を行ったり、来年に向けての実験の方向性を話したり。短い時間でしたが、よい交流会でした。

DSCN5246.JPG 最後になりましたが、今回の講義を設定頂きました有馬先生をはじめとする、関係の先生方にお礼申し上げます。ありがとうございました。また、折を見て、伺いたいと思います。


 わたなべしるす

 PS. 立派に育っている、圃場を見て、とてもうれしく思いました。こうした作物をきちんと育てることができることを大切にして、毎日の作物の変化を観察してください。きっと、作物の真の姿が見えてくると思いますので。



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【出前講義】岩沼市立岩沼西小学校・夢あこがれプロジェクト2010「子どもの将来に向けて、本当の体験をすることの大切さ!

2010年12月 3日 (金)

 9/4に、日本植物細胞分子生物学会・仙台大会・市民公開シンポジウム「植物とともに活きる--有用成分から眺めた植物の魅力とバイオテクノロジー--」において、「植物の花の不思議--植物の花粉と雌しべは、どうやってコミュニケーションしているのだろう--」というテーマで講演をしました。その折りに、なぜ、この様な科学の世界にいるのかという質問を頂いたのが、今回、講義を行った岩沼西小学校の山川校長先生でした。その後、打合せをして、今回の「岩沼市立岩沼西小学校・夢あこがれプロジェクト2010」での、講演会となりました。

DSCN5210.JPG これまでのほとんどが、児童、生徒、学生さん対象でしたが、今回は、参観日と重なり、保護者向けということでした。保護者向けという意味では、今年の夏の七北田小学校以来です。朝からの40mmを超える雨にもかかわらず、200名近い方々にご参加いただけたのは、うれしい限りでした。講義では、子どもの頃に本当の実体験をしておくことの大切さ、それに変えるものはないと言うこと、セイフティーネットが人生を通してはなくて、自己責任でいろいろなことを判断したり、考えたりしなくてはいけないこと。また、これから先、多くの決断があり、その決断で人生が変わると言うこと。そうした生きる力としての経験の大切さを講義しました。もちろん、今も研究している、自家不和合性のすばらしさも。

DSCN5216.JPG 渡辺の講義に続いて、岩沼市名誉市民であり、国産初の電子顕微鏡を1940年に開発された「只野文哉先生」がされていた社会貢献である、電子顕微鏡を使った講義がありました。電子顕微鏡を使うということは、学生実験の時に、暗い部屋で見て以来で、それ以降は、アウトソースして、データをもらったり、共同研究をしたりで。いわゆる、走査型電子顕微鏡でしたが、机の上に乗るサイズで、感動でした。わざわざ、花粉の顕微鏡写真も用意頂き。ありがとうございました。

 講義が終わったあとに、PTAの方とお話をした折に、「大学の教授なので、堅い話かと思っていたが、これからの子どもたちの将来にとって、良いお話であった」と言うことをいっていただけたのは、うれしい限りでした。これからも、大学の教授=堅い話というのをできるだけ、打破できるようにしたいと思いました。

 最後になりましたが、この様な機会を用意頂きました、岩沼西小学校・山川校長先生をはじめとする関係の先生方に、お礼申し上げます。ありがとうございました。また、引き続き、こうした講義、サイエンスの講義ができればと思います。よろしくお願いいたします。

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 わたなべしるす


 PS. 講義のあとに、自家不和合性、細胞質雄性不稔など興味深い単語もあり、ぜひ、子どもたちにサイエンスの講義をしてほしいというリクエストのmailをもらいました。うれしい限りです。ありがとうございました。ぜひ、来年度は、実現したいと。



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植物科学、育種、社会への還元、そして、・・・(12/1)

2010年12月 1日 (水)

 植物科学、Plant Sciencesともいって、広くいえば、渡辺の研究領域、植物生殖遺伝学もこの中の1つの分野であろう。モデル植物を研究対象にしようが、作物を対象にしようが、広くはこの植物科学に入ってくる。植物、作物が、人類の食糧、エネルギーなど、様々なものに貢献している。であれば、世界的に研究分野として、高く評価されているかというと、そうでもない。先々週の国際科学誌「Science」に、アメリカの研究基金の長、動物のトップ研究者が、「植物科学の重要性」を説いている。何ともうれしい限りであり、これを励みにがんばらないといけないと思う。何より、この地球の人類が生きていくためには、大切なのだから、。。。

DSCN4630.JPG こうした植物科学が基礎から応用まで含んでいることを考えたとき、出口である応用は、広く「育種」という言葉で、ひとくくりにされることが多い。元々、農学部の植物育種学研究室を卒業したものとしては、うれしいような、あまりに使われすぎのような気がする。。。ただ、今より、よりよい品種を提供することで、社会に貢献、還元できることは、重要なことであり、研究者としての使命の1つなのであろう。

 社会貢献、社会への還元という点では、12月の5つほどの出前講義で、今年も終わりとなる。ずいぶん、多くの小学校、高校などにお邪魔した。東北大では、「科学者の卵養成講座」も運営した。植物を研究したり、植物のことを普段から考える大切さを理解してもらえたのであれば、うれしい限りである。わからないことがあり、mailなどで質問をもらえるのも、うれしいものであり、そんなことで、お役に立ったのであれば。研究だったり、人生だったり。そんな意味で、また、来年も多くのこうした活動で、社会への還元できればと思う。来年のことをいうと、何とかという。少し早すぎかもしれない。


 わたなべしるす

 PS. ちょうど、大学の推薦入試の発表の時期なのかもしれない。昨日、今日と、「合格しました!!!」というお知らせを頂いた。何ともうれしいものである。そして、これからも、がんばってください。どこかで一緒に研究できる日を。。。。

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