東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【出前講義】スーパーサイエンスハイスクール平成23年度生徒研究発表会、分科会座長と講評者(8/11)

2011年8月12日 (金)

 SSHの運営指導委員を数多く仰せつかっていることもあり、初めて「全国大会」である、生徒研究発表会に、分科会座長と講評者ということで、参加し、多くの高校生などと交流しました。今年のSSHの採択校は140校を超えるとか。ダイコンコンソーシアムで多くの高校を存じ上げたり、出前講義で伺ったりしておりますが、未知なる領域、まさにawayという感じでした。

DSCN0913.JPG 午前の最初のセッションでは、大阪大の審良先生の特別講演がありました。お名前は伺っておりましたが、お話を聞いたのは初めて。アブラナ科植物の自家不和合性研究を行っていたときに、動物の免疫に関係するという、Toll受容体のことは、名称だけ覚えています。細胞外がleucine-rich repeat(LRR)だったような。植物の様々な受容体にも細胞外ドメインがLRRのものは多く、植物ホルモン・ブラシノライド、耐病性遺伝子、低分子ペプチド等、様々な現象に関連していたのを思い出しました。自家不和合性のreview articleの中で、細胞外ドメインの比較をしたものがあり、その中に、アブラナ科植物の自家不和合性の雌しべ因子・SRKのS-domainと比較して、Toll受容体が並べられた時期も。こんな場面でお話を伺えるとは。また、この講義で驚いたのは、あの著名な審良先生がとある遺伝子の研究をしていて、これなら「Nature」に掲載されるだろうと、論文を投稿しようとしていたら、競合相手に同じ研究内容を「Science」に掲載され、タッチの差で「Nature」に論文が載らなかった。。。。どこかで聞いたような。。渡辺も1999年の11月の最後の週の月曜日の朝に、自家不和合性の花粉因子のSP11を投稿できる状態にあったのが、前の週の金曜日のScienceにアメリカのグループが同じ遺伝子を見つけて、論文として掲載。。。。その月曜日が研究室中をパニックにしたのを思い出しました。世の中では同じようなことが起きるのだなと。。。できれば、繰り返したくない「悪夢」であったのは、いうまでもないのですが。。。。

 そのあとに昼前までの分科会では座長を仰せつかり、SSH・4校と海外からの招待高1校の座長を。運営側の配慮もあり、渡辺の専門に近い、「植物」の話が多かったのは幸いでしたが、最後の英語の発表、その座長はさすがに。。。プレゼンは時間をしっかり守り、また、質疑にもきちんと対応していたのは感動でした。また、多くの高校生から絶え間ない質問が会場から出たことも分科会が盛り上がった要因だったかと。それから、招待高1校の英語の発表に対して、英語で質問をした高校生も。自分自身が同じ頃、絶対に無理だったと。。。そう思いました。こうした科学を高校生時代にもできる今のこのシステムに感動でした。メモをとっていたわけではないですが、普段、植物の遺伝学をやっているものからすると、同じ実験区の反復実験、その実験材料の意味、実験の生物学的な意義をもう少し深く考えると、よりよい方向になるのではと思いました。発表の中に、研究室の卒業生の方の出身校もあり、その方のことで発表のあとにお話しできたのも、何よりでした。

 午後からは、参加校全体でのポスター発表。理数ですので、物理、化学、生物、地学、数学の様々な発表がありますが、発表内容も多岐に亘っており、また、地方色もあり、時間いっぱいまで議論をしたり、話を伺ったり、。いくつか気になったのは、実験というか、研究というか、それをそれとして純粋に楽しんでいるのは、すばらしいこと。では、それが将来の自分の進路、就職先、社会との関係という点があまり明確でないのは、せっかくのすばらしい研究が少し片手落ちのような気がしました。ぜひ、そうしたことも考えていただければと思います。

 個人的に気に入ったというか、興味深いというか、すごいポスター発表はいくつかありました。子供の頃、この時期は、カブトムシ取りが仕事でした。もちろん、セミ取りも。それをその地域の甲虫に限って採収し、分類して、標本にして、とてもきれいで、楽しめました。アブラナ科植物を使った実験もいくつかあり、お話しができました。発展が楽しみです。それから、震災関連のものがあったのも、衝撃的でした。津波が来る前のあとの写真を載せてあるところ、放射性物質の植物による吸収、いわゆる、phytoremediationの実験。簡単な機材で放射線が走ったあとを検出しているのは衝撃的でした。それよりも何よりも、現地、福島高校の校庭の放射能汚染状況の実態計測。細かいメッシュ観測をしており、グラウンドがわずかに傾斜している関係で、そちらの方に水が流れ、その方向に汚染の傾きが出ている。また、いわゆる、線量計によるマイクロシーベルト/hrという計測でなくて、単位面積、体積あたりの放射性物質の量、ベクレル、で示したdata。セシウム134, 137が確かにそこにあるということを示し、その量が、よく比較対照になる、チェルノブイリ原発事故の避難地域となった量とほぼ同レベル。福島の中通りの線量が高いといわれていますが、そこまでなのかと思うと、身近な場所だけに、どうすればよいのかという衝撃的なdataでした。もちろん、表土などを除去することはされると伺いましたが、それ以外の部分の除染は難しいと思いますし、先日も書きました、中山間地など手をつけることが難しいところも。。。。こんなdataをSSHの生徒さんが出したこともすごいですが、そんな環境にいることは果たしてどうしたものか、終わったあとも、かなり考えさせられました。。。。。。。。。。

DSCN0922.JPG こんな衝撃的なこともありましたが、また、来年度以降も何らかの形で、貢献できればと思った次第でした。来週は、鹿児島・錦江湾高校・SSHのダイコンコンソーシアムの会議です。こんどはより専門に近い話ができるのではと思います。昨年からの発展がどれくらいなのか。楽しみです。


 わたなべしるす

 PS. 先日、大きな地震はなかったと書いたのがよくなかったのか、3/12, 03:22に福島県沖でM6.0の地震とか。。。仙台も揺れたようです。不思議と、毎月、11日前後に揺れるのは、何か地球が生き物のように感じ得ないのは、渡辺だけでしょうか。。なお、研究室の改修敷いて頂いた実験台は、無事でした。ご配慮頂いた、研究科長、事務長をはじめとする多くの方々に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 帰りの電車で、渡辺が座長をしていたのを見かけられた兵庫県内の先生から、声をかけて頂き、出前講義の依頼も頂きました。また、より幅が広がればと思います。よろしくお願いいたします。

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